2017 Fiscal Year Annual Research Report
The mechanism of population dynamics in small-scale communities of present Laos
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17H01633
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
横山 智 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (30363518)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森木 美恵 国際基督教大学, 教養学部, 上級准教授 (00552340)
佐藤 廉也 大阪大学, 文学研究科, 教授 (20293938)
中澤 港 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (40251227)
白川 千尋 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60319994)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ラオス / 人口動態 / 再生産 / 生業 / 小規模社会集団 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、2017年6月、8-9月、2018年2-3月にかけて、ラオスでの現地調査を行った。また、スタートアップの国内会議を2017年7月、そして1年目の調査結果の報告および今後の研究に関する方針について話し合う会議を2018年1月に実施した。総括班は、2017年6月に本研究で重点的に調査を実施するための予備調査を実施し、ラオス・ルアンパバーン県ゴイ郡ムアンゴイ地区のナーガン村およびフエイボー村でメンバー全員の調査を実施することを決めた。それに伴い、カウンターパート機関の農林省と保健省と打ち合わせを実施し、共同研究の協力体制を確立した。また、調査の遂行には倫理審査が必要となるため、保健省に倫理審査のための研究計画書類一式を提出した。 人口移動班に関しては、2つの調査村落で家系図調査を実施し、対象地域住民の基礎データを作成した。また、移入と移出が現在まで続き住民構成が絶えず入れ替わっていることが確認できた。また、ナーガン村に関しては、収入に関するデータを得た。 生業班に関しては、2つの調査村落で水田の所有者の確定、および水田履歴を過去に遡って取得して、開田と売買の記録に関して初期的データを獲得した。 食料獲得班は、サワナケート県において、対象集落成人住民の日常身体活動の空間分布、エネルギー消費及び栄養摂取、健康/栄養状態、生産基盤の現地調査を実施した。 家族計画班は、2つの村落の住民の生活と健康について把握するための,基本的な健診のパイロット調査を行った。その内容は、生活用水の塩化物イオン測定、母子保健に関する情報とタブー、母乳栄養、疾病、周産期情報などである。3月の調査では、村長を通して参加者をリクルートしてもらい、乳幼児保育や家族関係の概念についてフォーカスグループディスカッションを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研で調査対象とした新たな2つの村では、出生・死亡・移動年、親子きょうだい関係、教育歴、結婚歴、職業、出生地、現住地、死亡地の情報を得た。この調査の結果、どちらの村も住民の大部分がラオス内戦終息後の1970年代以降に新しく移住してきた人びととその子どもたちであり、それ以前の住民はほとんど移出してしまっていることがわかった。また、パイロットサーベイによる環境調査では、生活用水へのし尿の混入がないこと、また、母子保健に関しては、自宅分娩から施設分娩への移行期であることが明らかとなった。 そして、生業と人口に関しては、最新の衛星データをベースマップとした、水田の所有者に関する詳細なデータを得ることができ、今後、GIS分析を実施する準備を整えることができた。 さらに、ラオス南部の食料獲得班では、これまで得たデータを踏まえて、対象集落住民の栄養収支バランスの評価を行った結果、集落住民の平均身体活動強度は中上レベルで、栄養収支バランスから検討すると、集落住民の生業は自らの生活を維持できることを明らかにした。 ただし、ラオス保健省に申請した倫理審査に関して、書類の準備が遅れてしまったため、1年目で審査を通すことが出来なかった。したがって、倫理審査の完了を待って実施する調査項目(とくに住民に対する健康や再生産に関する内容)は、H30年度に持ち越しになっている。それに関しては、今年度実施することは出来なかったが、倫理審査を終えた後に、実施できる準備が整っているため、大きな遅れとは考えていない。 全体として、初年度に予定していた調査は実施できており、順調にデータを得ていると判断出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
全体を統括する総括班は、倫理審査を無事通すこと、またカウンターパートとの有効な共同研究体制を維持するための調整業務を中心に、調査のための後方支援を進めていく。 人口移動班は、前年度に取得出来なかった世帯データおよび移動データの収集を行い、さらに村外への出稼ぎ移動者を調査する準備を実施する。この準備が早く進めば、同年度中に移動先地で出稼ぎ移動者にヒアリング調査を開始する。また、土地所有の履歴解明の一助とするため、戦争を挟んだ住民構成の大規模な入れ替えを詳しく調査する。具体的には、旧住民の多くが現在居住している、近隣の町ムアンゴイカオで昨年度と同様の家系図調査を実施する。さらに、対象地域の疾病死亡構造の変化を明らかにするため、過去にさかのぼって死因と死亡前の治療について調査する。衛生環境や栄養状態の改善にかかわる健康転換を明らかにすることで、食料生産や人口再生産の変化に対する理解を一層深めることが期待できる。 生業班は、前年度に得た世帯の経済収入に関するデータをベースに、いかに自給自足的な経済が成り立っているのかに関して、インタビュー調査と水田水稲作以外の食料獲得手段(焼畑や狩猟採集など)についての調査に着手する。 食料獲得班は、引き続き、個人間栄養収支差異の有無、およびこれらと各自生産基盤の空間分布の関係について、食事日記のデータなどを参照し、個人の身体活動と生産基盤活動に関する空間解析方法を確立し、個人身体活動、生産基盤の空間分布に影響する要素を分析する。 家族計画班は、調査対象村2村の全世帯を対象として、成人世帯構成員(とくに女性)の家族計画使用状況に関する聞き取り調査を行う。また、パイロット調査により実施が可能と判断できたので、対象2村落の成人全員を対象とした健診を実施する。さらに、カウンターパート機関のスタッフを対象とした調査のトレーニングも実施したい。
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Research Products
(33 results)