2019 Fiscal Year Annual Research Report
Schistosoma mansoni transmission dynamics and environmental monitoring around the shores of Lake Victoria
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17H01684
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
濱野 真二郎 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (70294915)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千種 雄一 獨協医科大学, 医学部, 特任教授 (20171936)
二見 恭子 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (30432983)
菊池 三穂子 長崎大学, 熱帯医学研究所, 講師 (40336186)
中村 梨沙 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (50645801)
平山 謙二 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (60189868)
板山 朋聡 長崎大学, 工学研究科, 教授 (80353530)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 住血吸虫 / 中間宿主 / 淡水産巻貝 / 環境モニタリング / リモートセンシング / 感染伝播ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
1)中間宿主のモニタリング:前年度に引き続き、貝の採集、形態の写真撮影、DNA抽出を行った。5地点で採集された貝のサイズの時空間変動を解析したところ、ビタ側で大きく年2回のピークを有する貝のサイズの季節変動が確認された。貝の感染率はサイズや雨量に影響される一方、湖の水位変動による影響が最も大きいことが判明した。 2)環境DNAを用いた湖水の感染リスクの評価:前年度までに手法を確立したGF/Dフィルターを用いた住血吸虫の環境DNA検出法によって現地調査を行った。ヴィクトリア湖岸の11箇所で採水し、住血吸虫の環境DNA検出を行った。住血吸虫の検出データ、周囲のヒトの感染率、水質データなどを用いた統計モデリングによって、採水を3回繰り返し、各採水サンプルについて3回のPCRを実施することで十分な検出感度が得られること、周囲のヒトの感染率が高いところでは住血吸虫のDNA検出率が高まることなどが明らかになった。 3)物理環境:湖水の電気伝導度は10mS/mであった。一方、宿主貝や環境DNAの採取サイト(水深10~30cm)では、サイト毎に電気伝導度が大きく異なる(10~60mS/m)ことより、独立性の高い局所水環境の形成が示唆された。多くの地点では植物死骸などが堆積しており、有機物の分解も多く、溶存酸素濃度が1mg/L以下の貧酸素ないしは嫌気状態(DO<0.04~3.10 mg/L)であった。 4)住血吸虫症の伝播状況のモニタリング:無作為に抽出された子供を対象として、糞便内虫卵検査を行い、感染率、感染強度の時空間分布に関する基盤データを得た。循環糖鎖抗原を検出する迅速診断テストを併用することで、2歳未満の子供も著しく高い感染率を示すことが判明した。また血液や尿を用いた住血吸虫症の伝搬状況のモニタリングにも著しい進捗が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和元年7月、住血吸虫由来の循環陰極糖鎖抗原CCAの陰転化の確認を行う過程で、当初の想定に反し、プラジカンテル単回治療では効果がないことが判明したため、繰返し治療を実施する必要が生じた。そのため倫理審査の修正申請を行い、その承認後に、陽性児童のプラジカンテルでの繰返し治療、尿中CCA抗原の陰転化の確認を行ったうえで、血中・尿中の抗体検査を行うことが不可欠となった。以上の理由により6か月の遅れが生じた。
そのなかにあって、中間宿主のモニタリングは比較的順調に進んでいる。貝サイズの解析手法を確立したことから、感染率の変異がどのような環境要因に左右されているかが、単年度のデータではあるが明確になった。今後は、数年分の貝サイズと感染率のデータを解析することで、水位、地形、降水量の感染率への影響について結果を補強する。
環境DNAを用いた湖水の感染リスクの評価:環境DNA分析によって住血吸虫のDNAを確実に検出するためのプロトコル(各地点3回の採水、GF/Dフィルターでの濾過、各サンプル3回のPCR)を確定することが出来た。このことは、今後環境DNA調査を行う際の費用対効果を最大化することに資する。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度(令和2年3月)以降、新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響により、ケニアへの入国が制限され、また海外渡航も制限されることとなった。新型コロナウイルス感染症パンデミック、テロや紛争への対応においては、研究者の安全確保に最大限の配慮を行う。万が一、研究代表者・分担者の渡航が制限される場合でも、長崎大学・熱帯医学研究所ケニア拠点とKEMRIによる労務管理の下で、現地雇用のコンサルタントや委託先 CBO がケニアの法令や政令を遵守しつつ調査を継続する体制の構築に努める。
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