2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17H01794
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
津田 一郎 中部大学, 創発学術院, 教授 (10207384)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 裕 福岡工業大学, 情報工学部, 助教 (80507236)
奈良 重俊 岡山大学, 自然科学研究科, 特命教授 (60231495)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 複合型視覚性幻覚 / レビー小体型認知症 / 脳神経科学 / カオス力学系 / ニューラルネットワーク / 自己再組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
レビー小体型認知症患者が特異的にかつ典型的に経験する複合型視覚性幻覚の神経機構を解明するために、次のような数理モデルによる研究を行った。 1.拘束条件付き自己組織化理論に基づいて、入力と出力の間の相互情報量と消費エネルギーの重み付差を最大にする変分原理を適用した。消費エネルギーは発火しているニューロン数によって表現した。すなわち、負の自由エネルギーに相当するF~=I-λEを最大化することで、ネットワークの学習が起こると仮定した。ここで、λは逆温度に対応するパラメーターである。高温では消費エネルギー項は無視でき、相互情報量を最大化することになり、低温では消費エネルギー項の効果が無視できなくなる。注目すべき結果が2点得られた。(1)この変分をみたす学習則として反ヘブ則が一般的に導かれたことが分かった。(2)いったん学習したネットワークの結合の一つをある値に固定した後に再学習を行うと固定した値に臨界値がありネットワークの再組織化が可能か不可能かが決まることを発見した。 2.視覚野、前頭葉、側頭葉を模したそれぞれ数百ニューロン規模のモジュールを構成し、それぞれが結合したニューラルネットを構成した。複数の人の顔パタンをモデル視覚野から入力しモデル側頭葉で学習させ、かつモデル側頭葉にさらに複数の顔パタンに対応してそれぞれ一つのアイコン的なパタンを学習させ、アイコンをモデル前頭葉に入力した。学習は結合パタンに埋め込む形で行った。この連合学習後に、3つのモジュールのそれぞれ内部結合、モジュール間結合をランダムに一定の割合で切断し、カオスダイナミクスを発生させた。その結果、アイコンに対応しない顔パタンが複数現れる結合切断が存在することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.負の自由エネルギー最大化原理からニューラルネットワークの反ヘブ則が一般的に導かれることを発見した。 2.学習後の一部結合切断によってネットワークの再組織化が可能かどうかの臨界点が存在することが分かった。 3.三つのモジュールからなるニューラルネットワークモデルにおいて、結合切断の場所に依存して幻覚的なパタンが生成される結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.変分原理を規模の大きなニューラルネットの学習に適用し、切断後の再組織化に臨界点が存在するかどうかを調べる。 2.三モジュールからなるニューラルネットワークモデルにおいて、文脈に対応する情報を導入し、また発生するカオスの役目を明らかにすることで幻覚の神経機構の解明を目指す。
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