2019 Fiscal Year Annual Research Report
唾液中8-ヒドロキシグアニンの酸化ストレスバイオマーカーとしての有用性評価
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17H01908
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
河井 一明 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (60161262)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 云善 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 講師 (90449950)
川崎 祐也 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助教 (30721716)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 8-ヒドロキシグアニン / 8-ヒドロキシデオキシグアノシン / 酸化ストレス / バイオマーカー / 唾液 / 尿 / 生活習慣 |
Outline of Annual Research Achievements |
唾液中8-ヒドロキシグアニン(8-OHGua)のヒトを対象とした酸化ストレスバイオマーカーとしての有用性の検証を目的として、研究協力者が産業医として勤務する企業において、平成30年度に同意が得られた704名を対象にサンプリングした唾液中の8-OHGuaおよび尿中の8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)の測定をHPLC-ECD法により行った。また検体採取時に実施した生活習慣アンケート結果の集計を行って、酸化ストレスバイオマーカーとの関連を調査し、次の結果を得た。唾液中8-OHGuaに関する基礎的な検討から、唾液の採取時によく使われる吸収材を用いた場合、直接採取した場合と比べて8-OHGuaの測定値が32 % - 271 %の範囲で変動した。唾液採取用の吸収材は、8-OHGuaを吸着するなどして測定値に影響を与えると考えられる。また、唾液中8-OHGua値は起床時に高く、日中の値は安定していることが明らかとなった。原因について今後検討したい。労働者に対する調査結果では、唾液中8-OHGua値は、加齢、喫煙、肥満、高血圧、アルコール摂取により高くなり、身体活動、緑茶またはコーヒー摂取により低い値となった。唾液中8-OHGuaがメタボリックシンドロームを含め、生活習慣病前段階の生体内変化を反映している可能性がある。これらの成果について、学会発表、論文発表を行った。また、尿中8-OHdG値については現在解析を進めているところであるが、今回の尿中8-OHdG測定値全てを用いた解析結果は、昨年度報告した約半分の測定結果を基にした場合と同様の傾向を示している。喫煙習慣が正の相関、BMIが負の相関を示す結果となった。尿中8-OHdGに関する研究成果について、学会・論文発表の準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で示したとおり、令和元年度に計画した研究内容は、概ね計画通り行うことができた。予定していた唾液中8-OHGuaの分析は、対象のサンプル全て(血液の混入等により対象外としたサンプルを除いた541サンプル)の分析を終了した。本研究テーマの中心である人を対象とした唾液中の8-OHGuaの酸化ストレスバイオマーカーとしての有用性評価として、唾液中の8-OHGua値と生活習慣アンケート調査結果を解析し、生活習慣と生体内酸化ストレスの関係を示した。さらに、唾液中8-OHGua測定のための唾液収集法や日内変動など、測定値の評価に影響する要因について検討し、有益な知見が得られた。これらの成果については、関連学会(IUTOX 15th International Congress of Toxicology, Honolulu, 2019年7月;9th Meeting of SFRR(A+J), Sydney, 2019年12月)に於いて発表を行うと共に論文(Genes & Environment, 2019, 41(5); J Clin Biochem Nutr, 2020, 66(1), 57-61)での報告を行った。尿中8-OHdGについては、全てのサンプルの分析を終え、生活習慣調査結果と合わせた解析を行っている。これまでのところ、喫煙と正の相関、BMIと負の相関をする結果が得られており、従来の報告と一致している。尿中8-OHdGの結果についても、今後、学会・論文で発表を行う準備を進めている。本研究では、酸化ストレスバイオマーカーと生活習慣との関わりについて、同一集団に対して2度調査を行う計画であり、2回目の調査が令和2年度に予定されている。現在、2回目の調査に向けて、生活習慣アンケートの見直しや、サンプル採取計画などの準備を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)研究協力者が産業医として勤務する企業において平成30年度に採取した唾液ならびに尿について、昨年度、酸化ストレスマーカーである尿中8-OHdGならびに唾液中8-OHGuaのHPLC-ECDによる分析を終了した。これまでに、唾液中8-OHGua値と生活習慣調査を目的としたアンケート調査の集計結果から、生活習慣と酸化ストレスマーカーの関係についての解析結果を得た。令和2年度は、引き続いて尿中8-OHdGの測定結果の解析を行って、学会発表や論文発表を行う。 2)本研究では、生活習慣や体調の変化、経年変化などによる酸化ストレスへの影響を明らかにすることを目的としており、令和2年度は、平成30年度の調査と同一の集団(約700名)において、再度、唾液と尿の採取を行って、生活習慣・労働状況に関するアンケート調査を実施する。得られたサンプルの酸化ストレスバイオマーカーの測定およびアンケート調査の集計を行う。 3)解析結果を希望した被験者に通知し、2年前の結果と比較しながら生活習慣の見直しと改善を提案する。同時に、労働環境との関連についても調査を行い、1回目の調査を基に、研究協力者の産業医が取り組んできた職場環境改善との関係について検証する。 4)1回目の調査で、喫煙習慣が酸化ストレスに及ぼす影響が認められたことから、喫煙の曝露マーカーを測定し、受動喫煙の影響も含めて喫煙量との関連を調査する。
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Research Products
(6 results)