2020 Fiscal Year Annual Research Report
唾液中8-ヒドロキシグアニンの酸化ストレスバイオマーカーとしての有用性評価
Project/Area Number |
17H01908
|
Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
河井 一明 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (60161262)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 云善 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 准教授 (90449950)
川崎 祐也 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助教 (30721716)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 8-ヒドロキシグアニン / 8-ヒドロキシデオキシグアノシン / 酸化ストレス / バイオマーカー / 唾液 / 尿 / 生活習慣 / 喫煙 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究協力企業において、平成30年度に704名を対象にサンプリングした尿中の8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)の測定結果、生活習慣アンケート結果ならびに健康診断結果の解析を行って次の結果を得た。尿中8-OHdGレベルは喫煙者、高LDL-コレステロール、低ヘモグロビン血症で高く、BMI値とは逆相関を示した。喫煙による影響が大きかったことから、さらに喫煙者と非喫煙者に分けて解析した結果、喫煙者においてBMIが低値、高血糖、運動習慣が無い人で8-OHdG値が高かった。また、非喫煙者において、有機溶剤または強酸の取扱い者、交替制勤務者で高い8-OHdGレベルを示した。喫煙が尿中8-OHdGレベルを増加させることが示されたことから、さらに受動喫煙ならびに加熱式タバコの影響を明らかにする目的で、尿中のタバコ曝露マーカーの測定を行った結果、タバコ煙特異的発がん性ニトロソアミンNNALならびに8-OHdGが、受動喫煙や加熱式タバコによって増加傾向を示した。 また、研究協力企業において、令和2年6月から8月にかけて実施された職場健診に合わせて、平成30年度に続いて2回目の尿のサンプリングならびにアンケート用紙を用いた生活習慣調査を実施した。合計676名から本研究への参加同意が得られ、採取した尿、アンケート調査結果を、ID番号を付して整理し、産業医科大学職業性腫瘍学研究室に送付して、今後の解析に向けて保管した。HPLC-ECD(電気化学検出器)法による尿中8-OHdGの測定を行い、得られたサンプルの約半数について測定を終了した。また、生活習慣アンケート結果の集計を行った。今回収集したサンプルの全ての測定・解析を令和3年度中に行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、予定していた唾液の採取を感染予防の観点から実施できなかった。しかし、調査対象企業の協力により、尿サンプルの採取と生活習慣アンケートについては、ほぼ予定通り実施することができた。本計画の申請時に、「研究が当初計画どおりに進まない時の対応について」の項目に示した通り、これまでの研究実績が十分にある尿中8-OHdG値を、同一集団を対象として複数年にわたって調査して得られる結果は、非常に価値が高いものになると考えられ、酸化ストレスと環境・生活要因との関連に於いて十分有益な情報が得られると考えられる。尿中8-OHdGの解析に関しては、研究実績の概要で示したとおり、令和2年度に計画した研究内容は、概ね計画通り行うことができた。唾液の採取はできなかったが、昨年度までに得られた結果から喫煙と酸化ストレスの関連を詳細に検討する必要性を考え、タバコ煙の曝露マーカーを測定する事で、近年問題となっている受動喫煙や加熱式タバコの生体有害影響に関する知見を得ることができた。さらに、尿中8-OHdGの測定、評価に有用な日内変動および日間変動を解析し、有益な知見が得られた。これらの成果については、第93回日本産業衛生学会(2020年5月)、第73回日本酸化ストレス学会(2020年10月)、日本環境変異原学会第49回大会(2020年11月)で学会発表を行うと共に、Genes & Environment、J Clin Biochem Nutr、J Occup Health に論文発表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)研究協力企業において令和2年度に採取した尿について、酸化ストレスマーカーである尿中8-OHdGならびに7-メチルグアニンのHPLC-ECDによる分析を完了する。生活習慣調査を目的としたアンケート調査の集計結果および健診結果から、生活習慣と酸化ストレスマーカーの関係についての解析を行って、学会発表や論文発表を行う。 2)本研究では、生活習慣や体調の変化、経年変化などによる酸化ストレスへの影響を明らかにすることを目的としており、令和2年度と平成30年度の調査を比較解析する。新型コロナウイルス感染防止の観点から、令和2年度に予定していた2回目の唾液採取を実施できなかったため、尿中8-OHdGの測定結果を基に解析を行う。 3)労働環境と本研究結果の関連について調査を行い、研究協力企業が取り組んできた職場環境改善との関係について検証する。 4)これまでの研究結果を総括し、本研究全体のまとめを行うと共に、将来に向けた課題を考察する。
|
Research Products
(8 results)