2018 Fiscal Year Annual Research Report
海外文化財輸送技術との比較による日本の文化財輸送技術の発展に関する研究
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17H02022
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Research Institution | Gangoji Institute for Research of Cultural Property |
Principal Investigator |
雨森 久晃 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (70250347)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚本 敏夫 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, センター長 (30241269)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 文化財輸送技術 / 防振システム / 梱包材料 / 海外美術館 / 海外博物館 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はワンボックス商用車用防振システムの開発を主に行ってきた。昨年度に計測を行ったトヨタ自動車社製ハイエースの走行データと今年度行った研究所所有車日産自動車社製キャラバンの走行実験結果を基に防振システムの開発を行いプロトタイプの作製を行った。防振システムは、どちらの担当者も研究協力者である株式会社守谷商会及び株式会社エーエスに製作を依頼した。ワンボックス商用車用防振システムでは、以前製作した4tトラック用防振パレットでは条件として最大積載質量60kgとしたが、ワンボックス商用車では最大積載量が1000kgであるため、防振システムの最大積載量を30kgに設定し開発を行った。 走行条件としてハイエースでは、市街地及び一部自動車専用道路を走行してデータを収集した。キャラバンは市街地のみの走行となり、データとしては一部不均一な部分はあるが路面の凹凸や道路状況の悪い部分の計測を行った。併せて、ハイエースでは土製素焼きの植木鉢を出土土器製品に見立て、キャラバンではレプリカの金属製品を輸送対象遺物に見立てて美術梱包を施し、走行実験を行った。梱包材料は、従来より使用されているウレタンフォームを用い、対象資料をサンドイッチ状に挟み込むことと形状に切り抜き資料を埋め込むことにより上下左右の動きが無いように梱包したもの。また、防振ゲルを用いてその上に対象資料を安置することによる梱包の2種類の梱包材料を用いて実験を行った。その結果従来型のウレタンフォームによる梱包よりもゲルを用いた梱包の方が振動を吸収することが判明した。しかしながら、防振ゲルでは、ゲルを包み込むパックの中で対流が起こり、それによる対象資料の移動が微量ながら発生する傾向が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新たな素材による梱包材料を選択しその評価を行い、より良い梱包材を創出する研究においては、既存の梱包材料ウレタンフォーム・生綿を用いた綿布団・防振ゲルについてのデータは検討できたが、新たな素材のリサーチ及び選択が捗らず、新たな梱包素材を用いた走行実験が出来なかったため研究の遅れが生じた。 海外文化財輸送技術についての調査で研究協力者との検討の中で、調査先の選定が良好とはならず調査が出来なかった。また、海外美術館とのコンタクトの中でフランスルーブル美術館への調査打診を美術館担当者へ行ったが、これも今年度は実現出来なかったため研究計画の遅れが生じた。 しかし、来年度予定していたワンボックス商用車用防振システムはプロトタイプを今年度作製することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31(令和1)年度については以下のように研究を進めていく。 研究所所用車が、現行型の日産自動車株式会社製キャラバンになったため、改めて走行データを収集しなおし、平成30年度に開発・作製したプロトタイプ防振パレットとのマッチングを行い、より精度の高い防振効果を得られるように改良を行う。また、ワンボックスタイプ商用バンの二大車種であるトヨタ自動車株式会社製のハイエースでも走行実験を行い、プロトタイプ防振パレットの汎用性についても検討を加える。 30年度では、梱包材による振動等外部入力負荷のデータを基に、現在使用されている軟質ウレタンや防震ゲルを組み合わせた新たな梱包材のためのデータ収集を行った。防震ゲルは衝撃の吸収度合いを三軸加速度計を用いて、数値化することを目的として行った。これらについても今後梱包材の種類を増やし、実験を行っていく。また、新たな梱包素材の調査・検討を行い、走行実験を行うことで梱包・輸送時の振動とのデータを収集し梱包材としての評価を行う。 海外博物館の文化財輸送に関する調査は、調査内容については研究協力者と相談・検討を行っており、より良い調査を行う条件を検討決定した。今後はヨーロッパ特にオランダに所在するブロンベーグ博物館担当者と輸送に関しての調査について打ち合わせを行っている。本年度前半で調査を行う予定である。
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