2019 Fiscal Year Annual Research Report
海外文化財輸送技術との比較による日本の文化財輸送技術の発展に関する研究
Project/Area Number |
17H02022
|
Research Institution | Gangoji Institute for Research of Cultural Property |
Principal Investigator |
雨森 久晃 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (70250347)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚本 敏夫 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, センター長 (30241269)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 海外美術館 / 海外博物館 / 防振パレット / ワンボックス / 商用車 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、研究所所用車が新しく現行型の日産自動車株式会社製NV350キャラバンとなったため、ワンボックス商用車用防振パレットのプロトタイプを実際に搭載し、走行実験を行った。ワンボックス商用車用防振パレットはプロトタイプであり汎用性を持たせたため、車への固定はラチェット式荷締めバンドを用いて固定を行ない実走実験を行った。 実走実験では、市街地と高速道路を走行し、全行程は約25km、その内9kmほどが高速道路である。積載条件は、無積載・ウエイト30kg・60kgの3パターンで計測を行った。また、計測は鉛直方向・左右方向・前後方向の3軸で行った。その結果、積載質量0kgの場合左右・前後方向では防振の効果が確認されたものの鉛直方向では防振効果が見られない状態となった入力を確認した。積載質量30kgの場合は、鉛直・左右方向では防振効果が確認されたものの、前後方向で防振効果が見られない状態となった入力を確認した。積載質量60kgでは、概ね3軸とも防振効果を得られたが、鉛直方向の一部に0.1(m/s2)と微妙に上回る部分があった。 海外の美術館・博物館での文化財輸送調査については、オランダを中心に行い、スイスでも調査を行った。オランダでは、ブロンベーク博物館館長Verhoeven氏、バン・ゴッホ美術館作品保存修復管理部責任者Meiracker氏、熱帯博物館Ruijter氏、NICAS(NETHERLANDS INSTITUTE FOR CONSERVATION+ART+SCIENCE+)Rous氏、アムステルダム国立美術館Sauvage氏、ライデン国立民族学博物館Zalm氏、国立遺産研究所Wei氏と面会し、オランダにおける文化財輸送の現状及び梱包技術について調査を行った。またスイスでは、チューリッヒリートベルク美術館Khanh氏と面会し、美術館での文化財輸送に関する調査を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海外博物館・美術館における文化財輸送に関する調査に於いて、ヨーロッパおよびアメリカ合衆国をターゲットとして選択したが、思うようにコンタクトが取れず、ヨーロッパに於いてはオランダ国およびスイス国での調査のみとなった。また、アメリカ合衆国での調査ができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度海外博物館・美術館における文化財輸送に関する調査に於いて、オランダ国での調査でブロンベーク博物館館長Verhoeven氏、NICAS(NETHERLANDS INSTITUTE FOR CONSERVATION+ART+SCIENCE+)Rous氏、アムステルダム国立美術館Sauvage氏とのコンタクトに成功し、ヨーロッパにおける文化財輸送に関する研究の実態を把握することができた。ヨーロッパにおける文化財輸送に関する研究は、数年前から問題提起され、近年研究が進んできたことが判明した。これらのことからオランダ国のオランダ芸術科学保存協会(オランダ科学研究機構、アムステルダム国立美術館、アムステルダム大学、オランダ文化遺産局、デルフト工科大学の共同研究センター)であるNICAS(NETHERLANDS INSTITUTE FOR CONSERVATION+ART+SCIENCE+)との研究を進めていけるよう再度アプローチを行い、共同研究までの道筋を確立する。 また、海外調査で必要との声が挙げられた、防振機能を持つ手押し台車(作品・資料を美術館・博物館内で移動する時に使用する)を日本の防振キャスターの技術を活用し、何種類かの防振キャスターを装着した手押し台車を作製し、走行実験を行う。このことによりヨーロッパにおいて実走実験の結果等を発表し、この手押し台車を紹介することにより、安全な文化財の移動について研究や技術を共有することを目標とする。
|