2018 Fiscal Year Annual Research Report
Modeling high-relief mountain erosion
Project/Area Number |
17H02029
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松岡 憲知 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10209512)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西井 稜子 新潟大学, 研究推進機構, 助教 (00596116)
池田 敦 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (60431657)
苅谷 愛彦 専修大学, 文学部, 教授 (70323433)
今泉 文寿 静岡大学, 農学部, 准教授 (80378918)
松四 雄騎 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90596438)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 山地侵食 / 地形観測 / マスムーブメント / 年輪解析 / GIS / 宇宙線核種年代法 / 大規模崩壊 / 周氷河作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
気候環境の異なるスイスと日本の高起伏山地を対象に,多角的な研究手法に基づく侵食過程の調査・観測・分析を実施した。2年目は,国際共同調査として,7~8月にスイス・マッターバレー,9月に日本の上高地,焼岳,妙高山において調査・観測の継続ならびに新設の調査地域でのデータ取得を重点的に行った。活動内容と成果は以下の通りである。 (1)短期的スケールの地形変化研究 日本の山地では,南アルプスの山頂部および大井川・安倍川流域において,落石と土砂移動のモニタリングを行い,短期的スケールにおける地形変化や土砂移動についてのデータ蓄積を継続するとともに,大井川流域の大規模崩壊地において,過去12年間の継続的な土砂生産量を定量的に評価した。スイスの山地では,マッタ―バレーにおいて,岩盤温度と岩盤亀裂の進展に関する観測を継続するとともに,ドローンを用いた定期観測により落石や土石流の発生に伴う地形変化を明らかにした。両山域の比較に関して,斜面の地形的特性の解析と斜面変動履歴の復元を行った。 (2)長期的スケールの地形変化研究 日本の山地では,日本アルプスの氷食谷の形状解析,上高地の岩盤重力変形域での掘削による完新世の泥炭質土層やテフラ層の記載・同定,南アルプス他で地すべり現象の第四紀学的検討を行った。スイスの山地では,宇宙線生成核種により得られた斜面の変形崖や崩壊堆積物の露出年代は全て完新世の値を示し,退氷や降水量の増大が斜面変動のトリガーとなっていることが実証された。両山域の比較に関して,GISを用いた定量解析により,氷河あるいは河川による侵食のいずれが卓越するかによって,斜面の形状が統計的に異なることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
短期の地形変化や土砂移動についての観測データが蓄積され,成果公表も飛躍的に進んだ。大規模崩壊地での落石や土砂生産,森林伐採が凍結融解侵食に及ぼす影響,衛星データに基づく数年スケールの地形変動に関する解析結果,斜面の構造土形成に関する実験結果,永久凍土の破壊に関する長期観測結果を計6編の国際誌論文として公表した。長期の斜面変動に関しても,岩盤斜面の重力変形,大規模崩壊・地すべりの発生史に関する各地での最新結果を論文化した。以上を含め,これまでの地すべり・崩壊を含む寒冷地域の地形プロセスの全般をレビューした。また,気候環境史の異なる山岳域で,大規模崩壊や斜面変形の発生年代を得たことは従来にない成果である。新規の取組みとして,スイスの岩石氷河と日本の氷食谷の形状解析を進めるとともに,最近の雪崩の発生頻度および長期の岩盤変形・崩壊・土石流の発生史を検討するための調査地の選定も進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の斜面変動に関しては,観測と解析をさらに進めて,地形変動のモデル化をめざす。近過去の斜面変動に関しては,樹木の年輪解析を用いて,過去約50年の土石流発生頻度,大規模出水頻度,雪崩発生頻度を復元する。以上のデータに基づいて短期的な山地侵食過程の定量的解明を進めて,成果を公表する。 千年~万年スケールの斜面変動に関しては,地形・地質記載,試料採取と分析を継続するとともに,とくに以下の項目を推進し,成果を公表する。(1)スイスアルプスや日本の山岳地を対象に斜面変動の発生年代値の取得と地形分析を行い,地形の発達過程について定量的な検討を行う。(2)日本アルプスの岩石氷河と,スイスアルプスの氷食谷について,比較検討できるよう解析を進める,(3)気候因子の変化から斜面変動発生に至るまでのラグタイムについて,斜面の内部地質構造や変形・崩壊の様式,不安定化の機構などの観点から整理する。
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Research Products
(27 results)