2018 Fiscal Year Annual Research Report
Models and Simulations of Large-Scale Economic Networks and Their Instabilities
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17H02041
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
藤原 義久 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 教授 (50358892)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青山 秀明 京都大学, 理学研究科, 教授 (40202501)
荒田 禎之 独立行政法人経済産業研究所, 研究グループ, 研究員 (40756764)
相馬 亘 日本大学, 理工学部, 准教授 (50395117)
井上 寛康 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 准教授 (60418499)
池田 裕一 京都大学, 総合生存学館, 教授 (90610858)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 社会システム / 複雑系ネットワーク / 経済ネットワーク / financial crisis / complex network |
Outline of Annual Research Achievements |
実体経済の要となる金融機関・企業間の信用ネットワークと企業間の生産ネットワークを対象として、ネットワーク科学の手法と京コンピュータを含む大規模な計算機資源を活用し、巨大な経済ネットワークの実データの構造とそのダイナミクス、リスクやストレスの連鎖現象、経済ネットワーク自身の時間的な発展などを明らかにすることを目的とする。前年度までの研究成果として、物価・実体経済ネットワーク・脆弱性にかかるシミュレーションのモデル化を行った。今年度はそれらモデル化を実装、拡張しながら、以下の応用展開を行った。 1. 【連鎖倒産やサプライチェーン上でのストレス伝播モデルとシミュレーション】システムの一部に生じた経済ストレスや破綻が経済ネットワーク上でどのように波及するか、そのモデル化を点過程(point process)を用いて行った。また、大きな自然災害で典型的にみられるような生産ネットワークにおける供給停止が及ぼす影響のシミュレーションを理化学研究所の京コンピュータを含むスパコン上に実装して、そのモンテカルロシミュレーションを多数のシナリオについて行った。 2. 【経済ネットワークの構造・ダイナミクスのモデル化とシミュレーション】経済ネットワークの構造やそのダイナミクスを記述するための確率モデルとして、Exponential Random Graph Model (ERGM), SAOM (stochastic actor-oriented model)などのモデル構築を行って、マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)などの手法でパラメータを推定する手法を開発した。 3. 【可視化ツールの開発】東日本大震災による生産活動の停止が及ぼす国内約百万社への影響を可視化するツールを開発してその公開の準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は経済システムにおける脆弱性を明らかにし、その緩和策の提言に向けた基盤を構築することが目的である。実体経済の要となる生産ネットワーク全体、経済ネットワークそれ自体のモデル化などがその対象である。目的を達成するにあたって、以下のサブゴールを設定しており、本年度としては順調に研究が進展している。 1. 前年度から、国内の企業・金融機関をカバーする数百万の経済主体の属性(健全性を表す財務状態、産業などの情報)とそれらの関係性(生産や金融など)のネットワークを用いながら明らかにし、地震などの自然災害によって生産が停止した場合に、その影響がどのように伝播するのか、またGDPへの影響の大きさがどの程度になるか、そのモデルを構築してきた。本年度は、パラメータ探索や多数のシナリオのシミュレーションのためには、多数の計算コアを有するスパコンの活用が重要であることから、理化学研究所における京コンピュータおよび同研究所の研究者と連携し、より使いやすいシミュレーション環境を整備して、大規模なシミュレーションを実行して、その評価を行った。 2. 連鎖倒産やサプライチェーン上でのストレス伝播モデルとシミュレーションについては、点過程によるモデル構築やExponential Random Graph Model (ERGM), SAOM (stochastic actor-oriented model)のモデル化、ならびにそのパラメータ推定を行うフレームワークを構築することができた。 3. アウトリーチ活動として、複雑ネットワーク科学の教科書であるバラバシ著「ネットワーク科学:ひと・もの・ことの関係性をデータから解き明かす新しいアプローチ」を翻訳して出版した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究を推進する方策を以下のように策定する。 1. 生産ネットワークは実体経済のエンジンともいえる重要なものであるが、一方でそれを支える金融ネットワークも重要なもう一つの側面であるといえる。本研究でこれまで対象としていなかった、銀行・企業間の金融ネットワークと生産ネットワークとのつながり、経済ストレスの伝播のモデル化とシミュレーションなどを行う。 2. 経済ネットワークの構造と時間変化を表現するため、グラフ埋め込み(graph embedding)などの機械学習を用いた新しい手法を応用することを試みる。機械学習の応用については、自然言語処理を用いた経済ニュースの解析も行う。さらに、点過程(point process)やその他、上で述べた確率モデルの連鎖倒産の応用展開を行う。 3. 次年度が最終年度になることから、研究成果を広く公開するため、開発したツールやプログラム、シミュレーション結果の可視化ツールの公開などを行う。
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Research Products
(56 results)