2018 Fiscal Year Annual Research Report
ユーザー行動支援のための供給系ライフライン機能被害・復旧予測モデルの開発
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17H02068
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
能島 暢呂 岐阜大学, 工学部, 教授 (20222200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久世 益充 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 准教授 (30397319)
杉戸 真太 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 特任教授 (60115863)
小山 真紀 (田原真紀) 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 准教授 (70462942)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地震防災 / ライフライン / 被害予測 / 復旧予測 / 自助・共助 |
Outline of Annual Research Achievements |
(全体の項目③)ライフライン機能被害・復旧予測インベントリの構築:既往地震と想定地震による地震動評価を行い,それらの特徴を把握したうえで,供給系ライフラインの機能被害・復旧予測モデルに入力して被害・復旧予測を行い,予測インベントリを構築した. 既往地震に関しては,2016年熊本地震,2018年大阪府北部の地震,2018年北海道胆振東部地震を対象として被害・復旧データを収集し,ライフライン機能被害・復旧評価システムによる予測値との比較検証を通じてモデル改良を行った.想定地震に関しては,わが国の全地震活動モデルを用いて地震動予測式(GMPE)による地震動分布評価を網羅的に行い,予測モデルに入力して予測インベントリを構築し,多様なライフライン被害の可能性を提示するとともに地震リスク評価を行った.また,地震動の振幅・周期・経時特性の多様性の影響を考慮するための基礎的取り組みとして,混合正規分布,カーネル密度推定,KL変換,離散コサイン変換,特異値分解によるモード分解・合成法などの手法による地震動の特徴抽出に関する研究を進めた. (全体の項目④)ライフライン機能被害・復旧予測の逐次更新モデルの構築:地震発生後,被災状況が徐々に明らかになる過程において,実被害情報の統合処理による推定結果の逐次更新を可能とするモデルの構築に着手した. 推定更新方法として(a)決定論的更新と(b)ベイズ更新理論に基づく確率論的更新の2種類,入手情報として(1)拠点・基幹施設被害に関する情報,(2)供給停止エリアに関する情報,(3)ネットワーク被害・復旧状況に関する情報の3種類を想定している,本年度は(b)に関する検討を行った.事業者の供給停止判断と利用者からの被害通報に関するデータを収集整理し,それらを活用した被害推定更新のあり方に関して検討したうえで,逐次先行予測実現のための理論的枠組みを構築した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では,3年間の研究計画において,供給系ライフラインの地震時機能被害・復旧予測モデルの開発・運用を目指して,①テキストマイニングによるライフライン情報ニーズの把握,②機械学習によるライフライン機能被害・復旧予測モデルの構築,③ライフライン機能被害・復旧予測インベントリの構築,④ライフライン機能被害・復旧予測の逐次更新モデルの構築,⑤地震発生前後のライフライン情報提供のケーススタディ,の5項目を実施予定である.項目①はモデル要件の検討,項目②④は理論検討とモデル開発(予測モデル・逐次更新モデル),項目③⑤はモデル運用およびケーススタディの実施という枠組みである. 項目③については,期中に2018年大阪府北部の地震と2018年北海道胆振東部地震が発生したことから,被害・復旧データの収集と予測モデルの検証を追加で実施し,結果的にはモデル改良を通じて予測精度向上を実現できた.想定地震に関しては,わが国の全地震活動モデルを用いて地震動予測式(GMPE)による地震動評価を網羅的に行い,予測モデルに入力して予測インベントリを予定通り構築できた.また,振幅・周期・経時特性に関する地震動分布に関しては,さらにバリエーションを豊富にする余地があるため,地震動分布の特徴抽出に関する研究を進めて最終年度につなげることができた. 項目④については,更新手法の一つである(b)ベイズ更新理論に基づく確率論的更新に焦点を絞った.これは(a)決定論的更新については,その性質上,最終年度のシミュレーションによるケーススタディにおける実施が適切であるためであり,当初の計画に変更はない.事業者側の判断と利用者側からの被害情報を組み合わせた逐次予測更新の枠組みを予測モデルに実装する準備が整いつつある. 以上により,平成30年度の所期の目的は達成されており,本研究はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の③ライフライン機能被害・復旧予測インベントリの構築および④ライフライン機能被害・復旧予測の逐次更新モデルの構築を引き続き実施するとともに,⑤ 地震発生前後のライフライン情報提供のケーススタディを行う. 既往地震に関しては予測値と観測値との比較検証をさらに進め,最新の予測モデルに更新する.想定地震による地震動評価については,地震動分布のバリエーションを増やして実施する.それらをライフライン機能被害・復旧予測モデルに入力して予測インベントリを構築し,多様なライフライン地震災害の可能性を提示する.次に,地震後に被災状況が明らかになる過程で,実被害情報の統合処理による推定結果の逐次更新を行うためのモデルを構築する.推定更新のための方法としては,平成30年度に検討したベイズ更新理論に基づく確率論的更新(逐次先行予測)に加えて,シミュレーションで実施する予定の決定論的更新(事実への置き換え)についても,さらに具体的な検討を進めてモデル化を行う. 以上の成果を総合化し,一連の処理をシミュレートするケーススタディを実施する.既往地震および想定地震について,地震動分布の取得,即時被害・復旧予測を行った後,実被害情報に関する状況付与(想定地震については仮想的な状況,既往地震については実際の状況)を行い,被害・復旧過程の多様性を示す.その推定結果と実被害・復旧データと比較検証を行い,モデル改良と推定精度の向上を図る.最後に,ライフライン機能被害・復旧予測に関連してニーズの高い情報発信に関する提言を行う.またWeb等を通じて成果を広く公開する.
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