2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H02121
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三谷 章 京都大学, 医学研究科, 教授 (50200043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松林 潤 京都大学, 医学研究科, 助教 (00452269)
中井 隆介 中部大学, 生命健康科学部, 助教 (10576234)
塚越 千尋 藍野大学, 公私立大学の部局等, 助教 (20782478)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 社会性 / 神経機構 / 内側前頭前皮質 / ニューロン活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.社会性低下にともなう神経活動変化の解析 社会性低下を示すモデル動物を作製し、自閉症スペクトラム障害や統合失調症患者などで活動低下が報告されている内側前頭前皮質内の前辺縁皮質(PL)および下辺縁皮質(IL)の機能変化について検討した。社会性低下モデル動物としては発達期に(生後21日目から6週間;ヒトではおおよそ3-18歳に相当)隔離飼育したラットを用いた。あらかじめ隔離飼育ラットのPLあるいはILにニューロン活動記録用電極(電極先端周囲の2-3個のニューロンが発生する活動電位を記録できる)を埋め込み、2頭のラットを同じ実験箱に入れ、その社会的行動中のPL及びILそれぞれのニューロン活動が社会性低下動物ではどのように変化するかを観察した。その結果、相手ラットとの接触行動時間が減少するなどの行動変化が生じた隔離飼育ラットのPLは、正常ラットの社会的行動と同様に接近行動中に活動亢進を示したが、一方ILは、正常ラットの社会的行動では接触行動から相手が離去するときに観察される活動亢進が生じていないことが分かった。このことから、社会性の低下には、ILの活動低下が関連している可能性が示唆された。 2.ヒト社会性と関連脳領域の解析 社会性形成の基盤となる自己と他者の認識について、自己の身体イメージの形成に関わる脳領域について磁気共鳴機能画像(fMRI)を用いて検索した。その結果、身体イメージの形成時には空間認知に関わる脳領域として知られている頭頂連合野や上述の内側前頭前皮質に活動亢進が観察された。 これらの結果から、内側前頭前皮質が社会性低下の神経機構に重要な役割を担っている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で記述したように、社会性低下モデル動物を用いたニューロン活動の観察実験およびヒト脳機能イメージングを用いた社会性関連脳領域の検索実験により、社会性を解析するために内側前頭前皮質の機能を検索するという研究方向性が妥当であると判断できた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.社会性低下にともなう神経活動変化の解析 内側前頭前皮質は、怒りや不安などの情動発現に強く関与している扁桃体と密接な線維連絡をしており、内側前頭前皮質と扁桃体は行動発現において一つのシステムとして働いていると考えられる。この内側前頭前皮質-扁桃体系において、社会性低下モデル動物において観察された内側前頭前皮質の活動変化が扁桃体にどのような影響を及ぼすかを、内側前頭前皮質-扁桃体系の神経回路レベルで解析する。 2.ヒト社会性と関連脳領域の解析 社会性評価テストを用いて、ヒト被験者を社会性の高い群と低い群に分ける。そして、fMRIを用いて、両群間において身体イメージ形成時に活性化する脳領域のどのような活動差があるかを検索する。 また、社会性を向上させるためにsocial cognitive trainingを実施し、その効果を検証する。
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Research Products
(1 results)