2017 Fiscal Year Annual Research Report
運動による慢性炎症性疾患予防の分子機構:マクロファージ・インスリン受容体の役割
Project/Area Number |
17H02160
|
Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
木崎 節子 杏林大学, 医学部, 教授 (00322446)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 運動 / マクロファージ / 炎症 / Toll様受容体 / インフラマソーム / インスリン受容体 / シグナル伝達 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、4週齢雄性C57BL/6Jマウスを自発性走運動(VE)群と対照(SC)群に分けて8週間飼育した後、腹腔滲出性マクロファージ(PEMΦ)のToll様受容体(TLR)シグナル伝達、インフラマソーム活性およびインスリン感受性を二群間で比較検討し、以下の知見を得た。1)リポ多糖刺激によるPEMФのIL-1βとIL-18のmRNAレベル増加は二群間で差がなかったが、これらの分泌量はVE群の方がSC群に比べて有意に高かった。2)このとき、TLRシグナル伝達を担うIKKβのリン酸化とIκBαの分解の亢進はいずれも二群間で差がなかった。3)さらに、TNF-αとIL-6のmRNAレベルと分泌量の増加も二群間で差がなかった。4)一方、未成熟型のIL-1βとIL-18の切断と分泌を調節するカスパーゼ-1のプロ型タンパク質レベルは、VE群の方がSC群に比べて有意に高かった。5)プロ型カスパーゼ-1の切断と活性化を調節するインフラマソームを構成するNLRP3とASCのmRNAおよびタンパク質レベルはいずれも二群間で差がなかった。6)インスリン刺激後のAktのリン酸化亢進は、VE群の方がSC群に比べて有意に低かった。以上の結果から、習慣的運動は、細菌由来因子に対する単球由来マクロファージのTLRシグナル伝達には影響を与えない一方、インフラマソームを介した炎症性応答能を高めて、生体感染防御能を促進する働きがあることが示唆された。今後、この運動によるマクロファージインフラマソーム活性の亢進におけるインスリン感受性低下の役割を解析する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、マクロファージのTLRシグナル伝達とインフラマソームのクロストークに対する習慣的運動の効果を明らかにすることができた。そのため、本研究は、現時点において「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、習慣的運動によるマクロファージインフラマソーム活性亢進の分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。特に、インスリン感受性の低下の役割を中心に解析を進める。具体的には、1)マウス初代培養マクロファージのインフラマソーム活性に対するインスリン刺激の影響とインスリン受容体シグナル伝達阻害剤の効果、2)マウスマクロファージ細胞株を用いたインスリン受容体発現株の樹立とそのインフラマソーム活性の解析を行う予定である。
|