2019 Fiscal Year Annual Research Report
Structure and function of glycolipozyme MPIase involved in protein translocation across and insertion into membranes
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17H02209
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
西山 賢一 岩手大学, 農学部, 教授 (80291334)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | タンパク質膜挿入 / タンパク質膜透過 / 糖脂質 / MPIase |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、タンパク質膜挿入・膜透過に関与する糖脂質MPIaseの構造と機能に関して以下の研究成果を挙げた。 1.MPIase機能に関する遺伝学的解析。MPIaseの構造からMPIase生合成経路を予測し、MPIaseの最初の生合成酵素として、リン脂質生合成に関わるCDP-DAG生合成酵素CdsAとそのパラログYnbBを発見した。酵母ミトコンドリアのCDP-DAG生合成酵素Tam41によりリン脂質生合成を相補し、MPIaseのみが枯渇する株を構築し、MPIaseがin vivoでもタンパク質膜挿入・膜透過に関与することを証明し、菌の生育にも必須であることを示した。 2.MPIaseの発現制御に関する解析。MPIaseは低温下で発現量が大幅に増加することを見出し、この増加がタンパク質膜透過の低温感受性を抑制していることを明らかにした。さらに、低温下でのMPIaseの増加はCdsAの発現量増加により制御されていることを見出した。CdsAの低温下の増加は、異なる2種のプロモーターが時間差で作動することにより制御されていることを明らかにした。 3.再構成系を用いたMPIaseの機能解析。再構成系を用いて、MPIaseはすべての膜挿入反応に関与することを示した。まずMPIaseが作用し、続いてYidCが作用することを示した。 4.MPIaseの部分化学合成標品を用いた構造―機能相関関係の解析。MPIase糖鎖の繰り返しユニットを化学合成したところ、弱いながらも膜挿入活性があることを明らかにした。MPIaseのピロリン酸は、膜表面の構造を大幅に変化させることも見出した。 5.MPIaseはTAT膜透過反応にも関与することを発見した。これまでTAT膜透過の再構成が報告されていない理由がMPIaseが不足しているためであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画通りの研究が進展したのに加え、MPIaseがTAT膜透過にも関与することを見出した。これは、TAT膜透過反応発見以来20年以上経つにもかかわらずTAT膜透過の再構成が成功したという報告がない理由がMPIaseの不足によるものである可能性が強く、MPIaseを加えてTAT膜透過の完全再構成が現実的になってきたため、「(1)当初の計画以上に進展している。」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
タンパク質膜挿入・膜透過に関与する糖脂質MPIaseの構造と機能に関して、以下の研究を続行する。 1.MPIase生合成に関してCdsAやYnbBに続く生合成酵素の探索を行う。すでに可能性のある因子としてYncLを同定しており、YncLをコードする遺伝子の破壊株、YncL過剰生産株を構築し、YncL枯渇の影響を調べる。糖鎖繰り返しユニットを一つだけもつ化学合成標品mini-MPIaseは、MPIaseが糖鎖伸長する際、糖鎖ユニットの供与体にも受容体にもなり得ると考えられる。mini-MPIaseに大腸菌膜画分や細胞質画分を作用させ、糖鎖伸長が起きるかどうか調べる。糖鎖伸長が確認できた場合は、伸長酵素を精製し、アミノ酸配列を決定する。さらに、その酵素をコードする遺伝子破壊株を構築し、MPIase糖鎖伸長阻害が菌の生育やタンパク質膜挿入反応に及ぼす影響を調べる。 2.令和元年度までにMPIaseがTAT膜透過反応に関与することを新たに見出した。TAT膜透過はTatABC複合体が膜透過チャネルを形成し、プロトン駆動力により既に構造を形成したTAT基質を膜透過させると考えられている。TatABCを精製し、F0F1-ATPaseによりプロトン駆動力を形成しながらMPIaseを共に再構成することによりTAT膜透過活性が検出できるかどうか調べ、TAT完全再構成系の確立を目指す。本研究により、TAT発見以来20数年成功していないTAT膜透過が初めて成功する可能性が高い。
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Remarks |
https://www.iwate-u.ac.jp/upload/images/0204pressrelease.pdf
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Research Products
(44 results)