2017 Fiscal Year Annual Research Report
Paradox of Anti-Corruption Drives in Asian Countries
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17H02234
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
玉田 芳史 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (90197567)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶原 克彦 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (10378515)
相沢 伸広 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (10432080)
上田 知亮 東洋大学, 法学部, 准教授 (20402943)
河原 祐馬 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (50234109)
鈴木 絢女 同志社大学, 法学部, 准教授 (60610227)
横山 豪志 筑紫女学園大学, 文学部, 准教授 (80320381)
滝田 豪 京都産業大学, 法学部, 教授 (80368406)
日下 渉 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (80536590)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 民主化 / 汚職撲滅 / アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
民主化と汚職撲滅に関する基礎的な研究を実施した。軸足はアジアにおいて、タイとフィリピンを中心とした。各国について比較のために、次の基礎作業を行った。(1)各国の民主化の現状を確認した。所得再配分政策について、有無、導入者、導入時期、規模などを調べた。(2)汚職の定義や汚職対策を確認した。汚職の定義は国ごとに異なっていることが分かっているので、各国の異同を比較検討した。(3)汚職撲滅キャンペーンを確認した。政権担当者、NGO、マス・メディアなど国ごとに違いがあることが分かった。 中間層と政治の関係について調べた。選挙民主主義が実践されている国については、多数決民主主義に対する中間層の態度や評価を各国ごとに比較検討した。具体的には、タイ、フィリピン、インドネシア、インド、マレーシアの実情について調べた。 主たる対象は民主化途上国である。比較対象事例として、民主化途上にはない諸国についても調べる。第一に、民主主義が定着している西欧諸国については、アジアとの対比を念頭において、所得再配分政策の導入過程、反汚職キャンペーンの担い手と支持者について調べた。第二に、権威主義体制下において政敵の追い落としに汚職撲滅運動が利用されている中国とロシアの事例を分析した。権威主義体制の維持にどのように寄与しているのかを調べることで、民主化と汚職撲滅の関係を逆照射した。 代表者と分担者が役割を明確に決めて、それぞれに研究を進めた。平成29年7月16日に岡山大学で、平成29年11月12日に京都大学で、平成30年1月20日に九州大学で、研究会を開催した。研究会では、各自の研究の進捗状況を確認し、調整を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の平成29年度には、研究対象国について、民主化の現状、汚職の対策の実情、反汚職キャンペーンの現状の把握に努めた。 アジアには、政治体制を問わず、経済成長率が高い国が多く、そこでは中間層の規模が拡大している。古典的な民主化論では、それに伴い、政治の民主化が進むと想定されている。しかしながら、東南アジアでは中間層の割合が多いシンガポールやマレーシアの事例が示すように、中間層が増えても民主化要求が高まるわけではない。中国でも中間層による民主化要求は顕著になっていない。これは各国の社会において中間層が占める相対的な地位に左右されている可能性がある。タイでは、中間層は都市部と農村部では所得・学歴・職業・政治的態度などに明瞭な違いがある。そうした点に留意して、各国における中間層の動態を調べた。 反腐敗運動や汚職取締への興味・関心は、国ごとに実態や動機に違いがあることが分かってきた。汚職取締に熱意を傾ける理由は一様ではないということである。2年目以後は、この点についても掘り下げてみたいと考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
汚職の取締は、必ずしも脱民主化と結びついているわけではないものの、政治的な動機と関連する事例が多いことが分かってきた。汚職取締の政治性に一段と注意をはらうことにしたい。 平成30年度には、第一に、民主化途上国については、1)中間層と反汚職キャンペーンの関係、2)国際機関と各国の汚職および汚職撲滅の関係を調べる。第二に、民主化途上にはない国についても、民主化と汚職撲滅の関係について調べる。 民主化途上の国としては、タイ、フィリピン、インドネシア、マレーシアを取り上げる。近代化論で民主化の担い手と想定されることが多い中間層は、民主化や汚職撲滅にどのような態度を示しているのか。 国際機関は各国の汚職撲滅運動にどのような影響を与えてきたのか。主として取り上げたいのは、世界銀行、IMF、アジア開発銀行である。民主化が始まると、選挙での集票を意識して、政権担当者が所得再配分政策に力を入れるようになることが多い。経済分野の国際機関は、政治や国家を経済成長の阻害要因とみなして冷ややかな姿勢をとることが多く、所得再配分政策を汚職の温床と見なしてきた。次に、汚職撲滅を目指す国際機関からの支援が、民主化途上国のNGOの活動や選好に与えた影響について調べてみたい。このことが、中間層に影響を与えたのではないかと想定している。 他方、民主化途上にない国としては、すでに民主化が終わっている西欧諸国やインドと、権威主義体制が安定している中国とロシアを研究対象とする。欧州における反汚職運動は、担い手が誰なのか、民主主義否定には向かわないのかを調べたい。次に、政敵の追い落としに汚職取締が利用されることが多いロシアや中国では、汚職撲滅キャンペーンが権威主義体制の温存にどのように寄与しているのかについて実証的に検討してみたい。
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Research Products
(20 results)