2018 Fiscal Year Annual Research Report
Paradox of Anti-Corruption Drives in Asian Countries
Project/Area Number |
17H02234
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
玉田 芳史 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (90197567)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶原 克彦 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (10378515)
相沢 伸広 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (10432080)
上田 知亮 東洋大学, 法学部, 准教授 (20402943)
河原 祐馬 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (50234109)
鈴木 絢女 同志社大学, 法学部, 准教授 (60610227)
横山 豪志 筑紫女学園大学, 文学部, 准教授 (80320381)
滝田 豪 京都産業大学, 法学部, 教授 (80368406)
日下 渉 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (80536590)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 民主化 / 汚職撲滅 / アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
汚職撲滅のためであれば、民主政治を軽視してもよいと考えたり、主張したりする人びとが登場してきたのはなぜなのか。平成30年度には、民主化途上の国については、中間層と反汚職キャンペーンの関係に光を当てた。民主化途上国として取り上げたのは、タイ、フィリピン、インドネシア、マレーシアであった。マレーシアについては、建国以来政権を担当してきたUMNOを中核とする連立与党が、汚職への不満を大きな理由のひとつとして、総選挙で敗北したことが大いに注目された。そこでは、汚職撲滅は民主化の阻害要因ではなく、促進要因であった。汚職と民主化の関係を考える場合には、汚職の深刻さよりも、民主化への熱意のほうが重要ではないかと考えられる。 本年度には、平成30年6月9日に愛媛大学で、12月15日に東洋大学の施設で、研究会を開いた。各自の研究進捗状況を確認し、すりあわせを行った。研究会に加えて、6月23、24日に東北大学で開催された日本比較政治学会研究大会でパネルを組んで研究成果の中間発表を行った。比較政治学会では、研究分担者の滝田豪が「中国の反腐敗運動」、鈴木絢女が「制度化された汚職:マレーシアにおける与党の凝集性と政治の安定化」、また研究協力者の岡本正明が「インドネシアにおける汚職撲滅の政治性と非政治性:汚職撲滅委員会(KPK)を事例として」というタイトルで報告を行った。そこで取り上げた3国では汚職取締に特化した機関が設置されている。そのことが、汚職を可視化し、政治争点化するのを助けていた。 また、次に記すように、10月2日には研究代表者の玉田が、本研究課題による共同研究の成果を踏まえた比較の観点から、タイにおける汚職撲滅と脱民主化の関係について発表し、聴衆のタイの大学教員や大学院生から意見をもらい、今後の研究への刺激や教示を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代表者の玉田は平成30年10月2日にタイのチュラーロンコーン大学政治学部で、研究成果を発表した。汚職よりも汚職取締の方が民主政治にとって深刻な弊害になりうるという趣旨の報告は好評であり、タイを代表する高級紙マティチョンの10月6日版が第13頁全面を用いて紹介した。 反響が大きく、多くの批評や紹介が報じられた。いくつかのURLを記すと次の通りである。(1)https://www.voicetv.co.th/read/rJvWbhx57;(2)https://thaienews.blogspot.com/2018/10/blog-post_76.html;(3)https://www.khaosod.co.th/politics/news_1634598;(4)https://www.khaosod.co.th/hot-topics/news_1641830;(5)https://www.khaosod.co.th/newspaper-column/blunt-opinion/news_1636813;(6)https://www.matichon.co.th/article/news_1160550;(7)https://www.matichon.co.th/prachachuen/news_1343333;(8)https://www.matichon.co.th/article/thinkstation-12/news_1162410;(9)https://www.matichon.co.th/politics/news_1158457;(10)https://www.matichonweekly.com/cartoon/article_140104;(11)https://www.matichonweekly.com/column/article_139174
|
Strategy for Future Research Activity |
民主主義体制が権威主義化する傾向が、近年ではますます目立つようになってきている。こうした脱民主化では、秩序回復や経済成長とならんで、汚職取締も理由の一つに掲げられてきた。 汚職を民主政治否定の理由にあげ、汚職取締をクーデタの正当化理由とする典型的な事例は、パキスタン、バングラデシュ、エジプトである。本研究が対象とする国々の中では、タイがそうした汚職撲滅を大義名分とする軍事クーデタを経験してきた。 汚職はどんな政治体制でも生じる。もし民主主義体制のみが汚職を批判されるとしたら、否定されているのは汚職ではなく、民主主義ということになる。つまり、民主政治否定のために、口実として汚職を利用しているにすぎない。その場合には、汚職撲滅が必要なのか、望ましいのかという是非論に代えて、民主政治が嫌われる理由を解明する必要がある。また、民主政治を否定する口実はいろいろと想定しうるものの、そうした中から汚職が選び取られるのはなぜなのか。 令和元年には、研究の焦点を従来よりも一段とタイに絞り込み、なぜ多数決民主主義を嫌う勢力が強いのか、民主政治否定のためにことさらに汚職を強調するのはなぜなのかを解明する。フィリピン、インドネシア、マレーシア、中国、インド、ロシア、オーストリアといった国々と比較しながら、タイにおける汚職を口実とした脱民主化について考察する。そのために、代表者と分担者が、汚職と民主化について、個別に研究を進めつつ、研究会で成果をつきあわせて、総合的な理解を深める。
|
Research Products
(26 results)