2019 Fiscal Year Annual Research Report
Paradox of Anti-Corruption Drives in Asian Countries
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17H02234
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
玉田 芳史 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (90197567)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 知亮 東洋大学, 法学部, 准教授 (20402943)
日下 渉 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (80536590)
梶原 克彦 愛媛大学, 法文学部, 教授 (10378515)
相沢 伸広 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (10432080)
河原 祐馬 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (50234109)
鈴木 絢女 同志社大学, 法学部, 教授 (60610227)
横山 豪志 筑紫女学園大学, 文学部, 准教授 (80320381)
滝田 豪 京都産業大学, 法学部, 教授 (80368406)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 汚職 / 民主化 / アジア / 軍事クーデタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、反汚職キャンペーンが民主化に与える影響を検討することであった。1990年代以後には国際社会において反汚職の機運が一段と高まり、汚職撲滅が「良い統治」の一環として市場経済の成長のみならず政治の民主化にも寄与すると喧伝された。それが追い風となって、各国で汚職の阻止・取締が重視された。その効果は政治体制に応じて異なる。政敵を堂々と潰せるようになったため、習近平体制下の中国や、プーチン政権下のロシアでは、権威主義体制の温存に寄与した。 民主主義体制の場合には、反汚職キャンペーンの影響は多様である。オーストリアでは2009年に、インドでは2019年に汚職取締機関が設置されて、民主政治の改善に寄与した。マレーシアの政治エリートは、汚職責任の追及を懸念して汚職の定義を見直すことで、民主政治体制がそれまで汚職と見なされていた行為の一部と共存することを可能にした。支配エリートによる権益の略奪・温存と対抗エリートによる反汚職キャンペーンを通じた挑戦が繰り返されてきたフィリピンでは、国家資源へのアクセスをめぐるそうした闘争がドゥテルテ政権下で激化した。これらの事例では反汚職キャンペーンは民主主義体制の枠内での権力闘争の手段にとどまっている。 タイでは、2006年と2014年に汚職撲滅を大義名分とする「世直しクーデタ」が発生し、今日まで軍事政権が続いている。汚職の抑止・取締が喧伝され、政治家への過度な責任追及が進むにつれて、汚職批判は代議制民主主義を弱体化させるため、すなわち君主主権を国民主権から守るための口実にすぎないことが明らかになった。撲滅の対象が汚職ではなく民主政治であり、その目的が君主制の護持にあったことに、大学生を中心とする若者は強く反発し、2020年に入ってから全国で活発に反政府運動を展開するようになった。
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Research Progress Status |
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(28 results)