2017 Fiscal Year Annual Research Report
旅行キャリア発達のための熟達化過程の解明とキャリア対応型観光支援システムの開発
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17H02254
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Research Institution | Osaka International University |
Principal Investigator |
林 幸史 大阪国際大学, 人間科学部, 准教授 (10567621)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 卓也 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (30441174)
小杉 考司 山口大学, 教育学部, 准教授 (60452629)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 観光行動 / 旅行キャリア / 旅行熟達 / 過去の旅行経験 / 観光支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は次の2点を目的としている。第1の目的は、熟達した旅行者となるために必要な経験やスキル、熟達に伴う認知・感情変容について明らかにし、旅行キャリアの発達過程を明らかにすることである。第2の目的は、旅行キャリア発達のための観光支援システムを開発することである。平成29年度は、旅行キャリアの中でも旅行経験の累積に伴う熟達(経験を積むことによって知識やスキルが向上し発達的に変化を遂げること)に焦点を当て、旅行熟達尺度を開発することを目的とした。 尺度を作成するにあたっては、既往研究で指摘された熟達者の3つの特徴を踏まえ、 (1)下位技能の熟達(情報収集、旅行計画、円滑な移動、荷物の最少化)、(2)適切な問題解決のための知識の獲得(トラブル対処、現地順応)、(3)適切な評価基準の獲得(地域固有性への気づき、評価基準の確立、肯定的解釈)に加えて、(4)回顧的意味づけ(記憶の集積)の4領域10の下位概念を想定して尺度を作成した。そして、web調査を実施することで、旅行熟達の因子構造を確認するとともに、尺度の信頼性について検証した。因子分析の結果、6因子構造が見出された。第1因子から順に、「評価基準の確立」、「肯定的解釈」、「円滑な移動」、「記憶の集積」、「トラブル対処」、「荷物の最少化」と命名した。各下位尺度のα係数は、.72~.87の範囲であり、十分な信頼性があると判断できた。また、旅行熟達の6尺度得点は、旅行経験量との関連が認められた。数多くの都道府県への旅行を経験することは、日常生活圏とは異なる社会的環境との相互作用経験を蓄積することになる。これは、初めて訪れた土地であっても過去の旅行経験を通して構築した事象スキーマを活用することができるからだと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの達成度を上記のように評価した理由は、次の通りである。当初計画では、平成29年度に個人の旅行史に関する聴き取り調査を実施し、平成30年度に旅行熟達尺度開発のためのweb調査を実施することを予定していた。しかし、聴き取り調査への協力が十分に得られなかったため、翌年度の計画と入れ替えて研究を推進したからである。
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Strategy for Future Research Activity |
個人の旅行史に関する聴き取り調査を実施していくとともに、旅行熟達と過去の経験内容との関連を明らかにするためのweb調査を実施する。質的研究、量的研究という異なるアプローチから旅行者の熟達過程を捉えることで、旅行キャリア発達に関する理論構築を目指す。
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