2018 Fiscal Year Annual Research Report
西田幾多郎のノート類史料の研究資料化と哲学形成過程の研究
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17H02264
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Research Institution | Ishikawa Prefectural Nursing University |
Principal Investigator |
浅見 洋 石川県立看護大学, 看護学部, 特任教授 (00132598)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 晋 京都大学, 文学研究科, 教授 (40156443)
森 雅秀 金沢大学, 人間科学系, 教授 (90230078)
上原 麻有子 京都大学, 文学研究科, 教授 (40465373)
秋富 克哉 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 教授 (80263169)
美濃部 仁 明治大学, 国際日本学部, 専任教授 (50328960)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 西田幾多郎 / 未公開ノート類 / 研究資料化 / 水損資料の修復 / 1次翻刻 / 2次翻刻 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度末に現在の技術水準で可能な修復作業(固着した頁の分離、カビの除去等)を完了し、全史料の写真撮影を一旦終えた。それ以降の翻刻過程で浮上してきた最大の問題点は、インク流れによる不鮮明文字への対処である。試行錯誤の結果、写真撮影の方法を工夫することによって、文字がいくらか鮮明になり、判読が容易になるものがあることが明らかになった。そのため、2018年度は専門業者に再撮影を依頼し、インク流れ文字の読み取りがかなりできるようになった。 2018年度の第一翻刻として、金沢大学の森雅秀教授のチームは帝大在学時の受講ノートと推測され、仏教学語が多い5冊、英文読書ノート2冊の計7冊の文字起こしを実施した。京都大学の林晋教授のチームは帝大在学時の受講ないしは研究ノートと推測され、独語で書かれた2冊、主に英語で書かれた1冊、独文の読書ノート2冊、英文の読書ノート1冊、その他2冊の計8冊とドイツ語で書かれたメモ類9部の文字起こしを実施した。第二次翻刻は前年度に第一次翻刻を終えた倫理学講義ノート4冊と宗教学講義ノートの難読文字の解読、注釈・外国語翻訳、分析等を実施した。まだ、遂行途上ではあるが、二次翻刻によってこれまでの西田研究では明らにされていなかった何冊かの引用文献が明らかになり、西田の思索形成の新たな背景を見出すことができた。また、西田がその時代のヨーロッパ哲学や関連文献に一早くアクセスし、それらと対話することによって自己の思索や講義を新たに深化させ、展開しようとしていたことを改めて確認することができた。 今年度の研究経過と翻刻の成果の一部である「倫理学講義ノート第二分冊」、「宗教学講義ノート第一分冊」を『「西田幾多郎未公開ノート類 研究資料化」報告2 2018』前田印刷株式会社出版部(2019年3月30日)において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
難読史料の撮影について石川県西田幾多郎記念館の運営主体であるかほく市予算でカバーしていただき、順調に進めることができた。また、、一次翻刻(読み越し)についてはノートが6割、メモ・レポート類の翻刻は3割ほど完了し、順調に推移している。 二次翻刻(読みお越し)に関してはインク流れ、カビによる破損等があって判読不能、読み取り困難な文字がかなり有り、かつ精度に欠ける部分があって若干苦戦してはいるが、ほぼ研究開始時に予定した通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究期間内(2020年度)にはノート50冊の修復と画像データ化を終え、優先順位を決めて可能な限り一次翻刻を行うことを目標にしている。また、2020年春に西田幾多郎生誕150周年記念事業の一つとしてできるかぎり詳細な注釈、解説等を付けて出版することが本事業の当面の目標である。そのため「倫理学講義ノート」4冊、「宗教学講義ノト」4冊の二次翻刻作業を完了し、今後研究分担者の方々、出版社と協力しながら、より研究資料としての内容の充実、ブラッシュアップを図り、本年11月末までには出版草稿を書き上げ、2019年度末には完成原稿にする予定である。出版社は岩波書店、出版形態は新版西田幾多郎全集の別巻を予定しながら、今後の研究を進めていく。
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