2019 Fiscal Year Annual Research Report
A History of Representations of the Bodhisattva Miroku from the Perspective of This Life and Life in the Afterworld
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17H02290
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
泉 武夫 東北大学, 文学研究科, 名誉教授 (40168274)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長岡 龍作 東北大学, 文学研究科, 教授 (70189108)
岩佐 光晴 成城大学, 文芸学部, 教授 (10151713)
大島 幸代 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (60585694)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 弥勒 / 上生信仰 / 兜率天 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、国内の作品調査については、本科研テーマに関連する福井・西福寺蔵の「観経曼荼羅図」、根津美術館蔵の「釈迦如来・阿難像」、大阪・個人蔵の「白衣観音像」などの実地調査を行った。海外調査は本年度3月に中国・甘粛省を予定していたが、新コロナ問題が発生したため、断念した。 西福寺本「観経曼荼羅」は広い一枚絹を用いた鎌倉時代後期の制作であることを確認した。根津美術館蔵「釈迦如来・阿難像」については承元3年(1209)の年紀銘を確認するとともに、他界から現世への影向表現がどのような意図をもとになされているかを検討した。個人蔵の「白衣観音像」は南宋初期の制作とされる作例だが、今回の調査で画絹ではなく平織の料絹を用いていることを初めて指摘することができた。 資料方面の研究においては、弥勒上生経変の造像史において、すでに現地調査した山西省の諸遺跡(平順県大雲寺・開化寺・雲岡石窟)の画像を整理・分析し、中国中原における兜率天宮の表現について考察を行った。その結果、暫定的結論であるが、山西省・開化寺の主殿北壁は北宋期の弥勒上生経変と認められ、その図様の分析から、地理的にはるか離れた甘粛省・文殊山石窟万仏洞壁画の西夏期の弥勒上生経変、さらにはトルファン北方のジムサル所在西ウイグル王国期の弥勒上生経変と同系統であることが認識された。これは新しい知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は、本来ならば敦煌莫高窟、およびその周辺の石窟壁画に残る弥勒信仰関連の仏教美術を調査する予定であったが、海外調査が行えない状況になった。そのため、国内で可能な調査、ならびにそれまでに取得できた資料にもとづいた研究を中心に行わざるをえなくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、中国・甘粛省の敦煌石窟およびその周辺のいくつかの石窟の現地調査が欠かせない。しかし、新コロナ問題のために海外渡航ができなくなっており、足止めを余儀なくされている。新コロナの状況を見ながら、できればいずれかの機会に現地を訪れたいと考える。
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