2018 Fiscal Year Annual Research Report
カタストロフィの想像力:ドストエフスキー文学の現代的意味とその世界展開
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17H02329
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Research Institution | Nagoya University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
亀山 郁夫 名古屋外国語大学, その他部局等, 学長 (00122359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 良児 名古屋外国語大学, 外国語学部, 教授 (40123327)
甲斐 清高 名古屋外国語大学, 外国語学部, 教授 (50367835)
野谷 文昭 名古屋外国語大学, 外国語学部, 教授 (60198637)
梅垣 昌子 名古屋外国語大学, 外国語学部, 教授 (60298635)
諫早 勇一 名古屋外国語大学, 外国語学部, 名誉教授 (80011378)
望月 哲男 中央学院大学, 現代教養学部, 教授 (90166330)
番場 俊 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (90303099)
越野 剛 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 共同研究員 (90513242)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ドストエフスキー / カタストロフィ / テロリズム / ロシア正教 / 表象文化 / 『カラマーゾフの兄弟』 / 終末 / 悲劇 |
Outline of Annual Research Achievements |
20 世紀以降の世界においてドストエフスキー文学のもつ真の現代性を、「カタストロフィ」をキー概念(ここに《災厄》《終末》《危機》《悲劇》)のサブ概念が含まれる)としつつ、次の4つの観点から精査・考察するというのが、本科研のテーマである。すなわち、1、「現代史の諸相に見る《災厄》とドストエフスキー文学の受容」(歴史的観点)2、「《終末》論の起源とロシア精神」(宗教的観点)3、「小説の《危機》と文学の可能性」(批評的観点) 4、「《悲劇》の観点から見るドストエフスキー文学と表象文化への展開」(創作的観点)。初年度においては、1の歴史的観点に重点を置いて研究を進め、二年度は、3の批評的観点と、4の創作的観点に重点を置いて研究を進めた。その具体的な成果を公にすべく、国際ワークショップ&講演「表象文化としてのドストエフスキー」を開催した(日時:2019年2月16日(土))。基調報告者として招聘したヴェローナ大学(イタリア)のステファーノ・アローエ氏(国際ドストエフスキー学会副会長)によって「小説の《危機》」の観点から、ドストエフスキーのグラフィックなものへの関心を探り、また、本科研の研究分担者を中心に、4の「表象文化への展開」の観点から、10の研究発表を行った。対象ジャンル、対象地域の拡大という視点を考慮し、他の領域からも、何名かの研究者に臨時での協力を求めたことを併記しておく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年2月16日に、東京大学にて本科研が開催した国際ワークショップ&講演「表象文化としてのドストエフスキー」において、研究分担者のほぼ全員が、研究発表という形で参加できたことを最大の理由の一つとして挙げることができる。なお、研究発表を行わなかった分担者は、基調講演者であるS・アローエ氏の講演の翻訳という形で参加した。研究代表者である亀山郁夫は、他の2名の編集者を加えて、これらの研究発表を中心として一冊にまとめ、研究成果公開促進費による出版申請を行った。残念ながら採択とはならなかったものの、2021年のドストエフスキー生誕200年の記念すべき年に向けて出版を準備している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、主に次の4つの観点、すなわち、1、「現代史の諸相に見る《災厄》とドストエフスキー文学の受容」(歴史的観点)、2、「《終末》論の起源とロシア精神」(宗教的観点)、3、「小説の《危機》と文学の可能性」(批評的観点)、4、「《悲劇》の観点から見るドストエフスキー文学と表象文化への展開」(創作的観点)を軸としており、その進捗状況は概ね良好だが、現実的に短期的な成果を期待できるのは、3と4、とりわけ、4の創作的観点からの研究である。その他、1と3については、いくつか、実績を残すことができたが、2の、宗教的観点からの研究がまだ十分な成果を上げていない。そこで、最終年度にあたる次年度は、ドストエフスキーの最高傑作『カラマーゾフの兄弟』を中心に、2の観点に重点を置きつつ、4つのサブ概念(《災厄》《終末》《危機》《悲劇》)全体に対する目配りを怠ることなく最終的な仕上げをめざしたい考えである。
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Research Products
(8 results)