2018 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive study of the Sakhalin Ainu
Project/Area Number |
17H02380
|
Research Institution | Hakodate National College of Technology |
Principal Investigator |
中村 和之 函館工業高等専門学校, 一般系, 特任教授 (80342434)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関根 達人 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (00241505)
酒井 英男 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 名誉教授 (30134993)
麓 慎一 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (30261259)
田村 将人 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 主任研究員 (60414140)
中井 泉 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 教授 (90155648)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | アイヌ / 交易 / ガラス / 遺跡探査 / 文化接触 / 物質文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現在では失われてしまったサハリンアイヌの伝統的な文化を復元することを目的とする。(1)北海道から移住したサハリンアイヌが、いつ独自の文化を築き、その後どのような変貌をとげたか。(2)サハリンアイヌの文化には、南部と北部とで地域的な違いがあるか。(3)サハリンアイヌの文化には、交易の影響が どのように及んでいるか。(4)サハリンアイヌの文化に、大陸と日本からの影響はどのように及んでいるか、を検討する。サハリンアイヌは、文化人類学・言語学からは大陸の文化とのつながりが強いことが指摘されている。しかし時間的な推移という観点から、サハリンアイヌと北海道アイヌの違いがどのように生まれてきたかについては、検討がなされてこなかった。本研究は歴史文献を利用し、時間軸を重視して文化変容の実態の解明をめざす。 具体的な調査方法としては、まず元代の漢文史料である『元史』『国朝文類』などの再検討を通じて、この時期のアイヌがモンゴル帝国(元朝)の支配の外にいたこと、ニヴフ(旧称はギリヤーク)は百戸・千戸などの身分を元朝から与えられていたことを明らかにした。そして13、14世紀のアイヌは大陸文化に接触し始めたが、まだ直接の支配下にあったわけではないことを明らかにした。 つぎに出土遺物や伝世品から大陸系と思われる資料の抽出を継続した。とくに出土遺物ではガラス玉に着目し、サハリン島での現地分析を実施した。平成30年度には、ユジノサハリンスク市とポロナイスク市での成分分析を行った。また第二次世界大戦前の日本統治時代にサハリン島で収集されたガラス玉の成分分析を、函館市北方民族資料館で実施した。その他の伝世品や写真、日本語史料の調査は、平成30年度から本格的に調査が始まる予定であった。また大陸系と思われる遺跡の電磁探査も調査の準備を進めていたが、北海道胆振東部地震によって延期を余儀なくされた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度は、新たにポロナイスク市郷土誌博物館との間に研究協力協定を締結し、それをもとに現地での調査を行う計画を立てた。調査は平成30年9月中旬に予定していたが、出発直前の9月6日に北海道胆振東部地震が起き、新千歳(札幌)空港とユジノサハリンスク空港を結ぶ空路が一時的に運航を停止するという状態となった。やがで空路は復活したが、余震が続いていたため、再度運行を中止する可能性があった。研究分担視野のなかには、予定どおりに帰国できない場合、本務に差し障りが生じる可能性もあったため、参加人数を急遽減らして出発するという状況となった。また調査計画のなかに含まれていたサハリン島南部の遺跡の電磁探査については、サハリン国立大学で同学の装置の性能を確認するなどの予備調査を実施した。さらに現地調査についての交渉を含めて計画の実現を計る予定であったが、延期せざるを得なかった。 以上のような状況のため、サハリン州立郷土誌博物館やポロナイスク市郷土誌博物館では、ガラス玉や青銅製品の調査や成分分析など、着手できるところから研究調査を行うこととした。当初予定していた、考古学資料や日本語史料についての現地調査は、実現できなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
サハリン国立大学、サハリン州立郷土誌博物館とポロナイスク市郷土誌博物館との研究協力協定をもとに、現地調査を進め、計画の遅れを取り戻す予定である。平成29年度に問題が起きた分析装置の通関については、サハリン国立大学から、ユジノサハリンスク空港ではなくウラジオストク空港で通関するという提案を受けた。平成30年度はウラジオストクで通関した後ユジノサハリンスク空港に向かったが、特に問題はなかったため、この方法で調査を継続する予定である。 出土遺物や伝世品の調査については、ポロナイスク市郷土誌博物館の収蔵品の調査を進めるとともに、より北方のティモフスコエ市郷土誌博物館の調査を実施する予定である。文献史については、『国朝文類』の諸版本の比較校訂の作業を進め、確実なテキストの作成めざす。また1402年に朝鮮王朝で作成された「混一疆理歴代国都之図」など、中世のユーラシア大陸の地図の検討によって、アイヌ史の研究に利用できる情報の収集を行う予定である。
|
Research Products
(13 results)