2019 Fiscal Year Annual Research Report
日本中世貨幣史の再構築―学際的な中世貨幣学の確立に向けて
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17H02389
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中島 圭一 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (50251476)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本多 博之 広島大学, 文学研究科, 教授 (30268669)
伊藤 啓介 総合地球環境学研究所, 研究部, 外来研究員 (10733933)
高木 久史 安田女子大学, 文学部, 准教授 (50510252)
川戸 貴史 千葉経済大学, 経済学部, 准教授 (20456289)
石神 裕之 京都造形芸術大学, 芸術学部, 准教授 (10458929)
橋本 雄 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (50416559)
中島 楽章 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (10332850)
三宅 俊彦 淑徳大学, 人文学部, 教授 (90424324)
千枝 大志 同朋大学, 仏教文化研究所, 非常勤職員 (00609969)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 貨幣 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は「貨幣流通に関する東アジアと日本との相互影響関係の分析」を重点課題と位置付け、共同作業としては7月の第7回研究会・現地調査(鹿児島)、11~12月の日仏共同国内調査(福岡・島根・広島)、1月の第8回研究会・現地調査(沖縄)を実施した。 各回の研究会における報告は次の通りである。第7回(加治木福祉センター):「15~16世紀の撰銭令と明の揀銭禁令」(呉良晨=ゲストスピーカー・慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程修了)/「中世後期日本と東アジアの貨幣流通」(大田由紀夫=新規研究協力者・鹿児島大学)/コメント 中島楽章(九州大学)、第8回(沖縄県立図書館):「琉球列島の出土銭貨~グスク時代・古琉球期を中心に~」(宮城弘樹=新規研究協力者・沖縄国際大学)/「ウィリアム・アダムズ「琉球諸島航海日誌」における琉球の貨幣の状況について」(上里隆史=ゲストスピーカー・浦添市立図書館)/「東ユーラシアにおけるベトナムおよび沖縄の出土銭貨の位置づけ」(三宅俊彦)/コメント 高良倉吉(ゲストスピーカー・琉球大学) また、第7回研究会に際しては加治木郷土館で加治木鋳銭所出土資料を、喜界島埋蔵文化財センターで手久津久遺跡群出土の大銭等を調査した上でそれぞれ現地を歩き、第8回研究会に際しては那覇市文化財課資料整理室で渡地村跡出土資料を、沖縄県立埋蔵文化財センターで首里城正殿・首里城西のアザナ・渡地村跡などの出土資料を、沖縄県立図書館で東恩納寛淳資料の鳩目銭などを、今帰仁村歴史文化センターで今帰仁城跡出土資料を調査するとともに、各遺跡の現地踏査を実施した。 日仏共同の比較調査は、西日本の港町遺跡ならびに鉱山遺跡の踏査と出土遺物の検討を行った。なお、予算の前倒し執行によって計画していた3月のフランス・ブルターニュ地方の調査は、新型コロナウィルスの感染拡大により中止した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の重点課題とした「貨幣流通に関する東アジアと日本との相互影響関係の分析」については、2回の研究会で中国(主に明)と日本との関係、琉球やベトナムの銭貨流通と日本との比較についてそれぞれ議論を深め、研究の到達点を大きく前進させることができた。加えて前年度に未解決の問題を残していた「中世貨幣の解体と近世貨幣の成立過程」のテーマについても、3月に札幌で北大史学会と共催した小研究会で議論を行い(報告者・司会者以外はZoomでオンライン参加)、次年度に重点課題の「中世貨幣の流通実態の再検討」と結び付けながら発展させる基盤を固めた。 日欧比較に関しては、西日本の港町遺跡・鉱山遺跡の日仏共同調査によって、前年度までにフランスで調査した鉱山遺跡やフランス・ベルギーで調査した港町遺跡との対比を突っ込んで行うことができたのは大きな成果であった。3月に予定していたフランスでの調査を新型コロナウィルス流行で中止せざるを得なかったのは残念だが、これは当初プランに含まれていなかったものを研究進展に伴って本年度のスケジュールに組み込んだ計画であり、本来の予定に立ち戻っただけとも言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度にあたる次年度は、残された重点課題である「中世貨幣の流通実態の再検討」に沿って議論を深めつつ、本研究全体の成果の取りまとめを行う。日欧比較に関しては、本年度の第8回研究会・現地調査の成果を生かした沖縄での共同調査を優先し、本年度の実施を見送ったフランスでの共同調査も可能であれば実現を目指す。 問題は新型コロナウィルスの蔓延である。科研の共同作業のうち、研究会の本体はZoom等を利用したオンライン会議による実施が可能だが、その前後の現地調査や個別に交わす自由で多角的な意見交換が十分に行えないと、所期の成果を挙げるのが難しい。科研メンバーが十数名と小さな所帯なので、換気の良い会場で互いに間隔を取って全員マスクをするなど、最大限の感染対策を施した上での研究会開催を目指すが、公的資金による研究であるだけに、非常事態宣言下で全国から研究者を集めるのは躊躇われるところで、様々なリスクを勘案しながら最善の方策を探るという以上の対応策が見当たらない。 年度末に予定している公開シンポジウムについては、パンデミックの第2波、第3波が襲ってきた場合は中止(もしくは科研メンバーだけの研究会に縮小)し、研究成果の公表は本研究の期間終了後に一書に取りまとめて出版する形で果たしたい。
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Research Products
(13 results)