2018 Fiscal Year Annual Research Report
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17H02393
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Research Institution | Tokyo Health Care University |
Principal Investigator |
三舟 隆之 東京医療保健大学, 医療保健学部, 教授 (20418586)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西念 幸江 東京医療保健大学, 医療保健学部, 准教授 (90410208)
小城 明子 東京医療保健大学, 医療保健学部, 教授 (30412927)
五百蔵 良 東京医療保健大学, 医療保健学部, 教授 (70299907)
大道 公秀 東京医療保健大学, 医療保健学部, 准教授 (50632444)
馬場 基 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 室長 (70332195)
小田 裕樹 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (70416410)
山崎 健 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 主任研究員 (50510814)
鈴木 礼子 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (20616239)
峰村 貴央 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 助教 (30769451)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 古代食 / 木簡 / 延喜式 / 正倉院文書 / 化学分析 / 調理学 / 栄養学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の古代食の総合的研究では、前年度に行った『延喜式』の「酢」の追加実験を行い、その結果発酵に成功し古代の史料に見える「酢」が完成した。この成果は第22回古代官衙集落研究会でも報告し、造酒司などの組織で製作する理由や、そこから出土する木簡の意義づけを行うことが出来、文献・考古学からも大変意義ある成果となった。また西大寺食堂院跡から出土した木簡や須恵器甕・製塩土器・種子などから判断して、食堂院では瓜などの漬物を作っていたと推測し、その製法を実証した。同様に、「正倉院文書」の写経所関係文書や最勝王経法会などの関係文書から、史料に見える「大豆餅」「小豆餅」の復元実験を試みた。さらに『延喜式』や木簡に見える「生鮭」についても、保存期間や保存方法について実験を行った。 調理部門では、土器片のコゲの蛍光X線分析など化学分析を行い、鈴鹿市の資料について新たな知見が得られたので、今年度報告する予定である。土器の調理と同時に淡水魚などの調理も行った可能性がある。またモデル土器による炊飯実験も行い、改めてうるち米の炊飯の難しさが証明された。しかし土器外面のススの付き方や、内面の状況、炊飯温度など、さまざまなデータを収集することが出来、次の実験への課題が見つかった。 一方、次年度の栄養学からの分析を行うために、奈良時代の食生活のエネルギー産生バランスを数値的に検討し、当時の食生活や疾病状況を推定し、現代の食生活の課題解決のための基礎資料作成を目的とする研究に着手している。 これらの研究成果については、本学紀要を始め分析化学討論会・日本家政学会・日本栄養改善学会等でも口頭発表する予定である。前年度の研究実績である「古代における「クキ」の復元」、「『延喜式』に見える古代の酢の復元」については、『東京医療保健大学紀要』13-1に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
奈良文化財研究所との共同研究体制が軌道に乗り、実験も共同で行ってさまざまな点で意見交換がスムーズになったため、問題解決が速やかに出来るようになった。また化学分析なども資料の蓄積が増えてきて、方法論が確立しつつある。今後さらに試料の分析数を増やす予定である。 また古代食のさまざまの復元についても、『延喜式』などの文献史料に見える製法から復元実験を行い、成分分析や一般細菌・大腸菌などの細菌検査を行い、食品としての栄養成分や安全性などを実証する研究方法が確立した。さらに前年度までに設置したインキュベータなどを活用することが出来、実験が飛躍的にスピーディーに行うことが出来ているのも一因である。 ただ、まだ炊飯方法に問題点があること、写経所で支給されている食料の量が個人が一日で消費する量としては多すぎることが判明しつつあり、その問題点がまだ解決していない。さらに目的としている写経生の基礎代謝量を推測する方法がまだ確立していないので、最終年度はそれも踏まえて算出できるようにし、写経生の栄養状態と「正倉院文書」に残る「請暇解」の病気とを調査して、当初の目的である古代食の総合的復元と疾病との関係について解明を試みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度については、前年度の研究実績を踏まえて再度写経所で支給された食材から給食の復元を行いたい。今年度は調味料の復元実験を行い、まだ実態が判明していない「醤」の復元を行う計画である。さらにモデル土器を再度使用し、米以外の食材についても、「蒸す」・「茹でる」などの調理法について実験を行いたい。「正倉院文書」や『延喜式』には、釜や甑などの調理具だけでなくその他の調理具の記載もあるので、古代における調理方法の全体像の解明についても行いたい。また調理具だけでなく、食器もモデル土器で復元し、その容量から盛りつけ量を推測する。 一方、写経生については、「正倉院文書」に病気や法事などで欠勤する際の「請暇解」が残っており、病気の際は症状から治療法、治療日数まで記載されているところから、それらの分析を行って、写経生の病気を明らかにする予定である。そこから判明した疾病について、写経生の1日の基礎代謝量を算出し、そこで医療栄養の面から栄養分析を行い、写経生の生活習慣病を明らかにしていく計画である。
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Research Products
(19 results)