2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the formation and development of the Japan amber beads culture
Project/Area Number |
17H02417
|
Research Institution | Hirosaki Gakuin University |
Principal Investigator |
鈴木 克彦 弘前学院大学, 文学部, 研究員 (40569935)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 浩二 富山大学, 人文学部, 准教授 (10322108)
齋藤 瑞穂 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 助教 (60583755)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 琥珀玉 / 琥珀玉文化 / 先史、古代 / 出土地名表作成 / 発掘調査報告書 / 写真撮影 / 科学分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本の先史、古代の琥珀玉文化の形成、発展について明らかにするために、1:琥珀玉の形態、種類組成や玉作技術などを通し型式学的、編年学的な研究を行い、2:特に縄文晩期から続縄文、弥生、古墳時代への琥珀玉文化の形成、発展の歴史的、文化的な背景と意義を同時期の石玉と比較研究し、社会学的な琥珀玉作ソダリティー(玉作技術者集団)についても実証的に考察し、3:科学的な分析を応用し考古学と自然科学分野が提携し琥珀玉の流通などを考察するものである。 琥珀玉の研究は十分に行われておらず、全国の琥珀玉の出土数、出土遺跡の実態が不明瞭な状態にあり、平成29年度(本研究の初年度)は、琥珀玉の出土地名表作成と琥珀玉を出土する遺跡や古墳の発掘調査報告書の文献目録の作成から開始すると共に、琥珀玉の写真撮影を行った。また、調査、研究に先立ち打ち合わせ会議、研究会を2回行い共同研究者の共通認識を図り、地域、年代、分野の役割分担を定め、考古学分野では出土地名表、文献目録の作成を行いつつ主要な琥珀玉のカラー写真撮影および顕微鏡観察、撮影を行った。科学分野は、琥珀産地を確定させるための科学分析を行った。このように、初年度は研究に必要な基礎的作業を行うことに主力を注いだ。 琥珀玉と所謂石玉は、形態において連携しており、比較研究が必要である。製作技法については、琥珀の特有な性状から石玉と違った難しさがあり、特に細長い琥珀管玉の穿孔は難しく、固定・回転装置を復元して実験的に観察、実証したが、今年度は未完に終わった。また、産地が限定される琥珀は、新たな産地情報により現地を踏査したり、従来の化学分析の方法で琥珀産地を特定できかねており、従来と違う分析方法を検討している。それらのように、研究を机上論でなく、復元実験や新たな琥珀産地を求めて分析するなどの実証的な研究が本研究の課題であると認識している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで琥珀玉の全国的な悉皆調査が行われたことがなく、地名表作成に多大な労力が必要である。古墳時代の場合は、過去の研究で琥珀玉数は約1100点、古墳の数は326古墳が把握されていたが、それは必ずしも実態を反映するものでなく、その3倍近い数が見込まれる。また、琥珀玉は北海道や全国の旧石器、縄文、弥生時代、奈良、平安時代の遺跡から出土し、本研究では全国の全時代の琥珀玉の地名表作成を目指しているので、その作業は逐一発掘調査報告書を精読しなければならず並大抵なものでなく、遅延の大きな原因になった。琥珀玉の出土地名表作成と琥珀玉を出土している遺跡、古墳の発掘調査報告書の文献目録については約5割方を把握できたと思われるが、十分と言えない状態である。 琥珀産地における琥珀玉作遺跡と技術については、久慈市に所在する中長内遺跡などの琥珀玉を観察、撮影し、一定の目途をつけることができた。 主要な琥珀玉の写真撮影については、北海道の続縄文文化の琥珀玉を除いて4ヵ年で約千点以上のカラー撮影を目標にしているが、本年度は100点未満に終わった。写真撮影は琥珀玉の観察を兼ねて顕微鏡観察をも行っているので、進捗が遅れていることは止むを得ない事情もある。第2年次以降は、地名表と文献目録の作成が一段落するので遅れを挽回したい。 本研究は初年度でもあり、来年度までに出土地名表作成と文献目録については目途を付けたいと思っている。琥珀玉の写真撮影および顕微鏡観察は琥珀玉の実態や製作技法を可視して観察する基本作業なので本研究の重要課題と位置付けており、できるだけ多くのカラー撮影を行う予定である。しかし、琥珀玉には文化財指定が多く、撮影が容易でないことも事実なので発掘調査機関から写真を借用することも検討したいと思っている。また、保管されている琥珀玉は劣化が激しく触るだけで崩れる場合もあり、それも支障要因になっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
琥珀玉の出土地名表と発掘報告書の文献目録の作成は第2年次で終了し、随時追加する。そのために地域の協力員を増員する予定である。その基礎作業に基づき、琥珀玉の実物観察、カラー写真撮影、顕微鏡撮影を実施する。従来の発掘報告書に掲載されている琥珀玉は琥珀玉モノクロ写真が多く、琥珀玉に対する注目度も低く文章記述も大雑把である。また、現状では古墳から出土する琥珀玉の9割以上が棗玉であるが、形態、大きさに地域差と年代差があるほか、分類も曖昧なので、型式学的、編年学的研究を進める予定である。 本年度の琥珀玉の調査では勾玉、管玉が少なく、撮影は約10点未満であった。その二つの琥珀玉は全国でも約50点と予測しているので、次年度には的を絞って観察、撮影する予定であるが、その出自の問題は本研究の重要課題に位置付けており早めに考察を行う予定である。 琥珀玉は、弥生時代から古墳時代に掛けて形態、種類組成が大きく変わる。古墳時代の琥珀玉の形態は、基本的に石玉と比較できる。古墳時代前半期の琥珀玉作遺跡が皆無である。古墳時代後期には琥珀産地のない奈良県の曽我遺跡で琥珀玉作が行われているが、肝心な琥珀産地では久慈市に奈良、平安時代の琥珀玉作遺跡が知られているだけで、琥珀産地における琥珀玉作遺跡の研究が今後の重要な課題と位置付けている。 琥珀玉および琥珀玉文化の出自形成の問題として、縄文晩期から弥生早期の石製九州玉が続縄文文化の琥珀玉と同形である。また、続縄文文化と古墳時代前期の琥珀玉の年代が重畳し、両者は王化と化外の地の文化とみなされ無関係とする意見があるが、続縄文文化に出土する琥珀管玉は弥生、古墳時代の管玉と同形で、しかも前者の年代が古い。そのため、それらとの連携を問題提起し仮説化しているので、形態の類似性だけでなく琥珀玉作上の社会学的なソダリティー(玉作技術者集団)の観点から汎日本的に検討する。
|
Research Products
(2 results)