2018 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the formation and development of the Japan amber beads culture
Project/Area Number |
17H02417
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Research Institution | Hirosaki Gakuin University |
Principal Investigator |
鈴木 克彦 弘前学院大学, 文学部, 研究員 (40569935)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 浩二 富山大学, 人文学部, 教授 (10322108)
齋藤 瑞穂 九州大学, 人文科学研究院, 助教 (60583755)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 琥珀玉 / 古墳時代 / 編年 / 地域差 / 琥珀玉作遺跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
主に東北、関東、山陰、九州地方の古墳時代の琥珀玉の出土遺跡地名表作成、写真撮影を共同研究者と分担して行った。その結果、九州地方では、北部に集中して琥珀玉が出土していることが判明した。その地方は、近畿の古代王権と朝鮮半島との連絡通路にあたるので、そういう歴史的な背景と関連するものと考えられる。また、古墳時代前期に琥珀玉の形態の種類に多様性がみられること、反面古墳時代後期になると棗玉多くみられることが判明した。その棗玉は、関東の類例に較べると定型が多い反面、小型化している。 琥珀産地がある関東では古墳時代前期の類例が少なく判然としないが、後期になると出土量が多くなる。その中でも琥珀産地の千葉県次いで茨城県に琥珀玉が多く出土し、東京都、神奈川県および関東北部に少ない。東北地方では、宮城県栗原市入ノ沢遺跡の古墳時代前期の丁子頭勾玉は、搬入品と思われる。後期では東松島市、仙台市の琥珀玉を調査した。琥珀産地がある福島県南地域に較べると類例が少なく、形態が不整形である。形態、出土量の地域差は、琥珀産地と関連する可能性がある。この点は、関東での千葉県と他県の状況が類似する点が興味深いが、千葉、福島県でも琥珀玉作遺跡が明白でないので、まだはっきりしない。 国内で琥珀産地の琥珀玉作遺跡は岩手県久慈市周辺だけだが、その地域の玉作遺跡は奈良、平安時代であり、琥珀玉作遺跡の問題が本研究のネックになっている。また、琥珀産地の琥珀化学分析でも、従来以上の所見は得られなかった。琥珀玉作技術について復原的実験を行ったが、想定した琥珀玉特有の穿孔法の成果があがらず、琥珀玉作は碧玉管玉などの石玉製作と同じ技法で行われていると考えてよいと思われる。従来知られていない琥珀産地として北海道石狩市石狩浜を想定し周辺の調査した結果、小粒の琥珀が多数付着した石炭塊が漂着していることが分かり琥珀産地とみてよいと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
琥珀玉の写真撮影についての進捗が遅れている。理由は、対象が全国に渡ることと類例が多過ぎるからである。そのため、地域を限定し計画的に調査研究を実施しているが、近畿地方の琥珀玉の調査が残っており、進捗率は60%程度である。関東地方で最も多い千葉県の場合もまだ未調査がある。年代的に古墳時代前期の琥珀玉に種類の多様性がみられるものの、まだ全体としての比較研究に課題を残した。古墳時代後期に多い琥珀棗玉は、大きさ、形態差に地域差があることが判明したが、もっと正確に調査したい。古墳時代前期と後期で種類組成が異なることが判明しつつあり、来年度の調査によって地域差などが明らかになるものと思われる。地名表については、本年度で概ね各県の琥珀玉が出土する古墳等が所在する市町村名は把握したので来年度からは的を絞って調査できると考える。 琥珀産地の岩手県久慈市周辺の琥珀玉、琥珀玉作遺跡については調査成果があったが、その年代が古墳時代以後の遺跡なので古墳時代の琥珀玉の玉作遺跡、玉作技術について比較できないでいる。琥珀産地と産地以外の琥珀、琥珀玉の流通に関し化学分析を行っているものの、分析チャートで明確に分別できないでいる。そのため、琥珀の質、色調の肉眼観察を重視すべきでないかと考えるが、類例は風化、劣化が激しいことと、破壊分析が難しいので、今後の検討課題である。琥珀玉作技術の鉄製穿孔具導入の年代についてまだ結論が得られていないが、木製と鉄製の穿孔具(錐)による穿孔部断面形状を明らかにする復元実験を新たに行って明確にしたい。 琥珀玉の型式学的研究については、古墳時代の琥珀玉は勾玉と棗玉に限定され同時代の石玉の形態に類似することが分かってきた。これまでは、琥珀玉のみを調査の対象にしてきたが、共伴する石玉の形態との比較を行う必要性を痛感している。それらのように課題に対し研究成果は遅れ気味である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの調査で写真撮影などの未調査地域は、東海、近畿、山陽地方である。特に、近畿地方の琥珀玉の調査が言わば本丸になる。その地域には定型の琥珀玉が多いので、できるだけ多くの類例を観察、写真撮影を行う予定である。近畿地方には琥珀産地が見当たらないが、逆に琥珀産地では定型的な琥珀玉が極めて少ない。本年度に調査した古墳時代前期の宮城県入ノ沢遺跡出土の丁子頭勾玉は周辺で作られたと思えない定型、中央の豪族ないし王権から下賜された可能性が高い。その製作地は不明だが、琥珀産地の琥珀玉作遺跡で作られたものでないと思われるので、石玉と共に流通の問題が重要課題になると考えられる。流通の問題として、従来は化学分析の所見に頼り過ぎていたのではないかという反省点もある。 また、琥珀玉を出土する古墳の歴史的な背景、共伴する他の石玉の種類などの組成関係を明らかにする必要がある。これについては、来年度に琥珀玉を出土する古墳が多く所在する地域の研究者に協力を要請し、指導、助言を得る予定である。 本研究は、北海道を含む国内の全時代、全地域を対象に調査してきた。それによって得た成果も重要だが、例えば縄文時代、続縄文時代と古墳時代の琥珀玉では形態や歴史的背景が異なるという中間的な結論を得ている。そういう古墳時代以前の先史時代の琥珀玉文化については、本年度にまとめるつもりである。 日本の琥珀玉文化の形成、発展において、古墳時代特に前期の琥珀玉文化が重要な意味と意義を持つと考える。しかし、弥生時代の琥珀玉が皆無状態にあり、古墳前期の多様な琥珀玉の出現についてまだ多くの課題がある。調査では琥珀玉作遺跡に執着してきたが、現状の資料でそれを明らかにすることは困難ではないかと思われ、来年度は本丸と言える近畿地方の古墳出土の琥珀玉に的を絞り琥珀玉の類型を比較しつつ、琥珀玉の流通という観点から比較研究したい。
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Research Products
(2 results)