2019 Fiscal Year Annual Research Report
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17H02419
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Research Institution | Otemae University |
Principal Investigator |
森下 章司 大手前大学, 総合文化学部, 教授 (00210162)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黄 暁芬 東亜大学, 人間科学部, 教授 (20330722)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 漢代 / 図像資料 / 神仙思想 / 画像石 / 銅鏡 / 画像磚 / 四川 / 山東 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに収集、デジタルデータとして保存・整理した漢代画像資料に加え、新たに出版された図書、また雑誌報告についても資料の追加を行った。現時点での公表されている図、また現地調査による画像石、石闕、銅鏡などの写真とを合わせて、大量のデータの集成をさらに充実させることができた。 それらを基に、地域・年代を整理してゆく中で、漢代の神仙思想の具体像をみるための、二つの視点を得ることができた。一つは、地域の中での神仙に対する信仰の実態を検討するための研究視角と分析法である。従来の研究では漢代の広い地域全体に共通する信仰形態として神仙思想の内容を解釈する場合が多かった。しかし本研究において、四川、山東など一つの地域の、さまざまな器物や墓葬装飾に表された図像資料を収集・検討することにより、地域の中での神仙思想の役割の違いが見えてきた。四川に関しては従来指摘されてきた以上に地域性の強い、独特の信仰形態を復元できそうである。また具体的にどのような形態で信仰行為が行われたかを推測する視点も得られつつある。この点に関しては現在、論文へのまとめを行っている。 もう一つの視点は、神仙図像の変遷とその背景に関するものである。初期の西王母像として注目されてきた、前漢末~後漢初めの方格規矩四神鏡や画像磚に表された神仙表現から、後漢後半に爆発的に増加する西王母・東王父像への推移は、上の地域性の発現と関連した変容が認められる。この点に関しては、図像の年代を再検証した上で総合的な議論を進めたい。 なお2017年度の山東調査で実地見学することができた武氏墓群の知見を活用した墓群としての諸施設の復元に関する論文、神獣鏡に表された伯牙像の意義を検討した論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3月予定していた2度目の山東調査はコロナウィルスの影響により、断念せざるをえなかった。前回の調査と合わせて山東省の主要な漢代画像資料を実地見学できる計画であった。単に図像だけでなく、墓葬装飾についてはその墓の中での位置など、現地でしか確認できない情報が研究上で重要な視点となってきており、不足が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
地域を区切った神仙思想の実態について検討した論文を執筆し、発表する予定である。それと合わせて、神仙図像の中核地となる山東資料の検討結果を合わせて、地域間の関係を考慮した研究のまとめを進めていきたい。 全体の方針としては、地域性と表された器物や墓葬装飾の性格を考慮した神仙図像の変遷をの把握をもっとも重要な目標としている。 可能であれば本年度に山東省の調査を実施したいが、現状では困難と考えており、一部課題を残した上で、可能な範囲での研究のまとめを行う。
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