2018 Fiscal Year Annual Research Report
三次元デジタル・アーカイブを活用した青銅器製作技術解明の総合的研究
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17H02423
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
水野 敏典 奈良県立橿原考古学研究所, 企画部資料課, 係長 (20301004)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
わけびき 真澄 中部大学, 現代教育学部, 准教授 (00534398)
菅谷 文則 奈良県立橿原考古学研究所, その他部局等, 所長 (10275175)
山田 隆文 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 指導研究員 (30301005)
古谷 毅 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部考古室, 主任研究員 (40238697)
持田 大輔 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 主任研究員 (70409605)
北井 利幸 奈良県立橿原考古学研究所, 附属博物館学芸課, 主任学芸員 (70470284)
奥山 誠義 奈良県立橿原考古学研究所, 企画部資料課, 指導研究員 (90421916)
岡林 孝作 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部, 部長 (80250380)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 三次元計測 / 同型鏡 / 三角縁神獣鏡 / 鋳掛け |
Outline of Annual Research Achievements |
学会発表を2件行った。明治大学における日本考古学協会総会研究発表では「挽型からみた倭鏡とホウ製三角縁神獣鏡」と題して口頭発表を行った。ホウ製三角縁神獣鏡が倭国で製作されたものならば倭鏡との間に技術的な共通性が見出せないか、鏡背の断面形から検討を行った。近似した文様をもつ古墳時代前期後半の倭鏡では、鈕断面形および鏡背面の反りが個別に合致する例を確認し、鈕形を造り出す挽型と鏡背面形をつくる挽型の存在を考えた。それに対して、ホウ製三角縁神獣鏡では、異なる文様の鏡間に三角縁から外区形状と鈕断面形がほぼ一体化して合致する現象を確認しており、断面形からみて両者の間に技術的な共通性は確認できなかった。また、日本文化財科学会では「弥生時代青銅器鋳造技術の一事例-和歌山県田辺市後ロ谷銅鐸にみる鋳掛け-」において、複数回に分けて行う鋳掛けと内型の加工例の確認について、ポスターセッションを行った。 論文として、水野敏典「同一文様鏡の断面形と収縮」『磨斧作針』、北井利幸「弥生時代青銅器鋳造技術の一事例-和歌山県田辺市後ロ谷銅鐸にみる鋳掛け-」『泉森 皎先生喜寿記念論集』などを発表した。さらに、三次元計測を応用した研究成果を盛り込んだ『黒塚古墳の研究』(橿原考古学研究所編八木書店刊行)を刊行した。 実物資料の検討と並行して、青銅器製作技術の検証として「同型技法」を使用した鏡径収縮現象の再現実験を行った。原鏡、原鏡を踏み返して作成した鋳型、および鋳造実験鏡に対して三次元計測を行い、各段階での変形、収縮について検証を行った。踏み返し時の収縮条件を探るとともに、鋳造時の「ス」の入り方等について検討した。これを予備実験として、より検証しやすい形での再現実験を次年度以降に行う予定である。 三次元形状計測調査としては、福岡県久留米市高良大社所蔵鏡等の計測を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は、大きく研究成果の公開、計測調査、技法の再現実験の3つに分かれる。 研究成果の公開として、日本考古学協会と日本文化財科学会において学会発表を2回行うことができた。また、論文として水野敏典「同一文様鏡の断面形と収縮」『磨斧作針』、北井利幸「弥生時代青銅器鋳造技術の一事例-和歌山県田辺市後ロ谷銅鐸にみる鋳掛け-」『泉森 皎先生喜寿記念論集』などを発表できた。さらに、長期にわたる三次元計測を応用した研究成果を盛り込んだ『黒塚古墳の研究』(橿原考古学研究所編八木書店刊行)をまとめることができ、三次元計測で作成した画像も『八尾市史考古編1』(八尾市編集委員会)、『鳥居前古墳』(大山崎町教育委員会)などで活用された。銅鏡などの青銅器研究において三次元計測の応用が普及し、定着方向にあり、これは約20年間にわたり、同研究を継続した成果といえる。計測調査は、三角縁神獣鏡を含む高良大社所蔵鏡などの調査を行うことができた。 青銅器製作技法の再現実験では、同型技法による原鏡に対しての鏡径収縮現象の検証を進めることができた。検証しやすい形での再現事件の要件が明確になり、条件を変えた次年度の再現実験の検討課題を明確にした。 以上をもって、大枠として研究計画に従うかたちで研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に研究計画に従い、研究成果の発表と計測調査と製作技法の再現実験を進める。 研究成果については、平成31年度の日本考古学協会で「「同型鏡」の鏡径収縮についての基礎的研究」と題して、同一文様鏡における鏡径収縮現象の収縮率、収縮量について報告する予定である。これは鋳造を伴う再現実験と連動した研究であり、実物資料の検討の一環として行うもので、学会発表とは別に、既に計測調査を行っている他の『同型鏡』群についても引き続き検討を行う。 あわせて『八尾市史 考古編2』(八尾市編集委員会)などでの三次元計測を応用した研究成果の公開する予定であり、可能な限りの発表の機会を得るように努める。社会への研究成果の還元として、一般の方への講演会などの機会を増やしていきたい。 青銅器製作技法の再現実験としては、昨年度行った実験について検証を進める。つまり、原鏡と踏み返しにより製作した鋳型、鋳造した実験鏡の3点の三次元データの比較を行い、どのような変化が起きたか検討する。その上で鏡径の収縮の発生条件の、より検証しやすい形を検討し、引き続き、再現実験を試みる。この実験では付帯した課題として湯口のついた状態での鋳造時の「ス」の発生状況等の検証を進める。
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