2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Disruption of Mutual Aid in Village Society and the Support and Transmission of Folk Customs:The Meaning of Regional Differences in the Light of Changes in Funeral Rites
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17H02439
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
関沢 まゆみ 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (00311134)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武井 基晃 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (00566359)
宮内 貴久 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (10327231)
新谷 尚紀 國學院大學, 人文学部, 教授 (80259986)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 民俗 / 相互扶助の動揺 / 葬儀変化 / 伝統行事 / 伝承力 / 門中 / 宮座 / 花田植え |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度、村落生活における旧来の相互扶助の関係の動揺を表すものとして葬儀変化(X軸)と、地域の民俗行事の動向(Y軸)とを併せ調査分析する視点に立って作業を進めたが、実態として多様な事例群の把握としてはそれだけでは単純化しすぎるとの反省もあり、さらに検討していくことが課題となっていた。そこで今年度は調査事例を増やして12月1日・2日の研究会で中間発表と討論を行った(研究会記録は簡易製本74頁)。 たとえば、奈良市大柳生の宮座と葬儀の1990年代の追跡調査によれば、宮座行事のうち、2006年に太鼓踊りが中止され、2013年から中学校の総合学習での踊りの継承という形が模索されているところであった。葬儀も2008年頃から土葬から公営火葬場の利用へ、自宅葬からホール葬へと変化していた。ただし宮座と葬儀との変化の要因についての単純な関連づけはできないということがわかった(関沢「20年後の大柳生-伝承と変化-」歴博映像祭Ⅱ 2018年8月発表)。 糸満市の洗骨の事例では、風葬から火葬に遺体処理の方法が変化しても変わらずに洗骨が行われている。門中の結束はこの地域に伝承されているハーリー船の競争においても強く、遺体処理の技術の変化による洗骨の簡便化はそれとして、門中の結束力の弛緩にはつながらないことが確認された。 広島県北広島町の1976年国指定重要無形民俗文化財の壬生の花田植の壬生と川東でもJA虹のホールの2008年の開業から急速に講中の協力と自宅葬がくずれてきたが、それとは別に自治活動のもとに壬生の花田植を維持継承していく体制がある。 このように宮座を維持してきた近畿地方の農村や門中組織を維持してきている沖縄の糸満の門中、そして国指定重要無形民俗文化財を維持している壬生などは地域の結集力が強い村落で、葬儀の変化が必ずしも地域の結集力を弛緩させることにはなっていないという現状が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
葬儀変化と民俗行事の維持継承との関係性について、葬儀は地域の相互扶助から業者委託へと変化しても、それはそれとして村落社会にとって伝統行事の維持継承は地域ごとに工夫を重ねながら行われている事例が複数報告され、最終年度に必要な追加調査の方向性が明確になった。伝承をめぐる力学関係の分析に向けての素材情報が整いつつあり、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も葬儀の変化(X軸)と村落の伝統的な民俗行事の変化(Y軸)との関連を具体的に把握するための調査を研究分担者と研究協力者各位で継続する。これまでの調査から、葬儀は変化したものの伝統的な民俗行事を維持する力が強い事例が複数注目されてきているが、それらについてはさらに詳細な調査を行い、その背景について分析を行う。一方、相互扶助の動揺を背景に民俗行事が消滅した事例の情報収集も行う。今年度は、最終年度であるため、個別事例の総合化と分析方法のさらなる研磨が課題であると考えている。
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