2019 Fiscal Year Annual Research Report
国際経済協定に基づく貿易と投資の紛争解決基準と国家の公共政策空間の横断的研究
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17H02456
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
川崎 恭治 成城大学, 法学部, 教授 (70204708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
萩原 一樹 福岡大学, 法学部, 講師 (10781784)
森川 俊孝 成城大学, 法学部, 名誉教授 (50017597)
石川 義道 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (90749061)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 国際経済法 / 紛争解決基準 / 持続可能な発展 / 投資仲裁 / 世界貿易機関 / 国際司法裁判所 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は当初の「研究実施計画」に従って,投資条約仲裁,世界貿易機関(WTO)の紛争解決制度,国際司法裁判所(ICJ)において、国家の公共政策空間をめぐる諸問題についてどのように議論・判断されてきたかを,横断的に分析する研究が行われた。その一例として,「持続可能な開発」という概念はICJおよびWTOで問題とされてきたところ,それぞれの分野での議論を検討した上で,それを横断的に俯瞰・対比する研究などが行われた。そして各自の研究の進捗状況について報告,研究内容についてメンバー間で議論するべく,令和元年度は3回の研究会(打ち合わせ)を開催した(2019年6月29日,同年11月30日,2020年3月28日)。具体的な研究・作業実績として,以下のものが含まれる。
(1)本研究全体の方向性を示すものとして,「公共政策空間」という概念の整理に焦点を絞った研究を継続している。また総論的な研究として,国際経済法における強行規範の役割について分析・検討が行われ、研究成果として公表された。 (2)ICSID条約仲裁廷の管轄権を規律する法として、従来のBITやICSID条約とは別に「国内法」に着目し、それが仲裁廷において実際にどのように適用されてきたか、そしてその法的意味について分析・検討が行われた。研究内容は研究成果として公表された。 (3)国際通商法については,日本と韓国の間でのWTO紛争―日本産水産物に対する韓国の輸入制限措置とWTO協定整合性が争われたーについて検討・分析が行われ,その成果が外国のジャーナルで公表された。 (4)「持続可能な開発」に関する国際会議の成果として採択される文書は、それ自体は法的拘束力を持たないものの、それが現実の条約解釈の場面においてどのように考慮・参照されてきたかという点について検討・分析が行われた。研究成果が英語書籍の1章として公表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したように(「研究実績の概要」を参照),当初の研究実施計画に従って,投資条約仲裁,WTO紛争解決制度,ICJにおいて、国家の公共政策空間をめぐる諸問題がどのように議論されてきたかを、横断的に分析・研究しているところである。また各自の進捗状況は定期的に開催される研究会において確認し合っている。そのため現時点ではおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,引き続き各分野での検討について横断的分析を行いつつ(※当初より横断的分析は2年間を予定している),同時にこれまでの研究成果の「とりまとめ」を念頭においた活動にも従事していく予定である。具体的には本プロジェクトの下での研究成果を最終的に書籍として出版を考えており,すでに準備作業に入っている。昨年度末にZoomを用いて本プロジェクトの研究会を開催したところ,思いの外スムーズに意見交換が進んだことから,本年度はZoomを用いてこれまで以上に積極的に研究会を開催し,メンバー間の情報共有・意思疎通を図っていく予定である。 なお最後に,本年度力を入れていきたい論点について説明をする。本研究の目的は「国際経済協定において,公共政策(人の健康保護,環境保護など)の実施を巡って各国政府に認められる政策裁量の範囲・性質を明らかにする」ことにある。現在,新型コロナウイルスの世界規模での感染拡大にともない,これまで国際経済協定の下で各国政府に認められてきた政策裁量の範囲・性質が変容し始めている。たとえば通商分野でいえば,これまで輸出規制が行われるのは,もっぱら国内の環境保護,鉱物資源の確保,食糧確保などが主な理由とされ,国際経済協定もそれを念頭に制定・解釈されてきた。これに対して現在,感染症対策としてたとえば医療品(マスク等)の国内供給を確保するべく複数の国が輸出規制を実施しているところ,「国際経済協定における公共政策空間」という観点からの検討・分析が必要となる(どのような根拠・条件に基づいて,どのような範囲まで政策裁量が認められ得るのか,または認められるべきなのか)。図らずも,このような「感染症対策をめぐる政策空間」の問題は本プロジェクト射程内であるところ(公衆衛生は公共政策の中心を占めるイシューである),この点についても1つの論点として検討の対象としていく予定である。
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Research Products
(9 results)