2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H02475
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
佐久間 毅 同志社大学, 司法研究科, 教授 (80215673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 雅史 京都大学, 法学研究科, 教授 (90204916)
横山 美夏 京都大学, 法学研究科, 教授 (80200921)
木村 仁 関西学院大学, 法学部, 教授 (40298980)
宮本 誠子 金沢大学, 法学系, 准教授 (00540155)
木村 敦子 京都大学, 法学研究科, 准教授 (50437183)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 民事法学 / 信託 / 相続 / 財産承継 / 法人格 / 所有 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、3年間の研究期間の初年度であり、研究目的を着実に進めるための前提を確認することに力点を置いた。 第1に、わが国における信託実務の現況把握、とりわけ、民事信託の現況の把握に努めた。民事信託を含む信託の実務に詳しい弁護士2名を研究会に招き、ヒアリングをした結果などから、一方で、私法上の基本原則とされるものがある場合には、後に紛争となることを避けるために、その原則の厳密な内容や当否に踏み込むことなく、原則に抵触しないと考えられる内容で信託が設定される傾向が強いことが確かめられた。しかし他方で、一部の専門家(と称する者)が、信託の設定を希望する非専門家から依頼を受けて信託の条項を作成する際に、私法上の基本原則に抵触するおそれがあるにもかかわらず依頼者にその旨を告げず、結果的に将来紛争の生ずるおそれが相当ある内容で信託が設定される例が少なからずみられることがわかった。後者の状況に鑑みると、信託の効力に影響を及ぼす可能性のある私法の基本原則を明確化するための検討とともに、不適切な助言により私法上の基本原則に照らして問題がある内容の信託の設定を助言した専門家に対する責任の在り方を、将来紛争が顕在化する場合に備えて検討しておく必要があると考えられる。 第2に、レミィ・リブシャベール教授(パリ第1大学)を招き、「恵与目的信託の禁止」および「信託と所有」の関係を中心に、フランスにおいて幾つかの私法上の基本原則(所有概念、一法人格一責任主体の原則、法人理論など)が信託の有効性の承認に対する堅固な制約原理となっていることを確認した。 第3に、ドイツのマックス=プランク外国法・国際私法研究所にて、ドイツにおける信託制度や信託類似の制度、相続法および財産承継に関する議論状況につきインタビュー調査および資料収集を行った。年度末に実施したため、その分析は来年度行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、3年間の研究期間を、基礎研究期(1年目)、各論研究期(2年目から3年目前期)、研究統合期(3年目後期)に分けて進めることとしている。 平成29年度は、研究初年度として、本研究全体の基礎固めとして、私法上の基本原理が信託の有効な設定または信託の活用に対してどのような影響を与えているか、とりわけ信託の設定または活用に対してどの程度制約原理として働いたいるかを確認することを計画していた。「研究実績の概要」に述べたとおり、わが国の実務のほか、フランス及びドイツとの比較調査により、所期の目的をほぼ達したということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究を踏まえ、平成30年度は、まず、実務家を招へいすることなどを通じた信託実務の動向の把握を継続する。とりわけ、平成29年度に十分行うことができなかった、商事信託および目的信託(公益信託を含む。)の実情の把握に努める。 また、同じく平成29年度に行うことができなかったこととして、英米法との比較調査を実施する。その際、とくに目的信託の許容性に重点を置くことを考えている。ドイツ法との比較調査は前年度実施したが、年度末のことであったため、その分析は平成30年度に行う。 さらに、平成29年度に確認した私法の基本原則と信託法理の関係にかかる様々な問題点を基礎に、私法の基本原則から認められるべき信託に対する適切な規制のあり方、および、信託または信託法理の展開が私法の基本原則に及ぼす影響について検討を進める。「遺留分制度の意義」、「特別受益の考え方」、「人の意思により相続法原則を変更する信託以外の制度」、「わが国における財産死蔵の回避の考え方」、「株式の経済的持分と議決権との分離の禁止」といったテーマが検討の候補になるが、平成30年度開始後早期に全体研究会を開いて具体的な検討テーマと検討の方針を定め、それに従って研究を進める。
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Research Products
(30 results)