2019 Fiscal Year Annual Research Report
Study of secondary employment in a metropolitan area and its structural transition based on micro-zone cohort analysis
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17H02515
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安藤 朝夫 東北大学, 情報科学研究科, 名誉教授 (80159524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 亮 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (30516000)
宅間 文夫 明海大学, 不動産学部, 准教授 (80337493)
浅田 義久 日本大学, 経済学部, 教授 (70299874)
杉野 誠 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (60535780)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 応用都市経済学 / コホート分析 / 小地域統計 / 都市圏地価分析 / 空間計量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は(1)兼業農家や副次従業を含む応用都市経済モデルの作成と分析,(2)小地域コホートモデルの作成とそれに基づく都市圏内の人口変動の予測,(3)ランダム付け値のマクロ的適用を含む都市圏不動産価格分析,(4)人口の構造変化に応じた都市施設配置に関する実証分析,4つのサブテーマを含むものであり,令和元年度は以下のような研究を実施した。 (1)兼業農家を含む都市では,都心からの距離と共に農家の労働供給が減少し,営農面積が増加するという命題は連続性の下では容易に示せるが,この枠組みでは農地の飽和(1農家による有限区間の占用)が可能である。従って差分近似を用いた離散表現について検討し,本質的な結果が変わらないことを確かめると共に,理論モデルの主要な結論を,農業センサス等の統計データを用いて首都圏について検証し,結果の一部を国際学会(Ando-Takuma, 2019)で発表した。(2)については,引き続き域外地域との接続方法のモデル化について検討し,再計算のための準備を進めると共に,コホート要因を考慮した国内移動と経済成長について検討した(浅田, 2020)。(3)については,上海における2015年の学区制度改革が住宅市場に与えた影響を,ランダム付け値モデルを用いて分析した。改革の影響は,新制度導入直後の人気学区における住宅価格に最も大きく及ぶが,長期的にはその効果が逓減することを,理論・実証の両面で示した。(4)に関しては,コホート要因を加味した共同住宅の資本コストの検討を通じて,共同住宅所有の問題点を指摘し(生田・浅田, 2019),併せて中核都市への移行が,経年的にどのように民生費に影響を与えたかについても実証した(小谷・浅田, 2019)。また地域の住環境が,人々の居住選択に与える影響に関して,学生を被検者とする表明選好(SP)法による予備的検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和元年中は,研究は概ね順調に推移していたが,令和2年に入ってから新感染症の影響を受けて遅れが見られるようになった。具体的には,対面での研究作業が困難になったことや,年度末に出席予定であった国際学会がキャンセルされたことにより,研究内容に関する議論の機会が失われた。小地域コホート分析を含む数値計算は大規模不定方程式体系として記述されるが,域外ゾーンとの接合部分のアルゴリズム調整に時間を要している。また兼業農家を含む応用都市経済学モデルに関しても,数値シミュレーションを追加する方向で準備を進めている。不動産価格分析に関しては,ランダム付け値モデルに基づく分析を行っているが,より行動論的意味付けが明確なランダム効用理論への拡張を図る。ただし後者では,住宅以外の用途の混在が説明困難であるため,研究組織内での議論が必要である。同時に誤差項のHEVモデルや空間自己相関による処理方法に関する検討を行い,地域計量分析に関する書物をまとめる作業を継続している。本課題では都市に限らず,空間を含む均衡分析という括りでの研究も実施しており,物量モデルによる空間価格均衡の表現(Ando, Meng, 2019)や,不完全競争の枠組みへの拡張と線形近似により,交通や生産などへのインフラ投資が空間的な社会厚生の分布に与える影響を評価する分析(Itoh, 2019)等,空間応用一般均衡(SCGE)モデルの枠組みを含む多面的な研究を進めている。研究は進行中であり,国際学会等での成果発表を順次行っている段階であるが,今後とも効率的な研究体制の維持・推進を通じて投稿論文の作成に繋げる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題における研究の推進方針としては,4つのサブテーマごとに以下を考えている。 (1)は単位幅の線形都市モデルに関する理論展開を図るものであり,兼業農家による離散・連続が混在する土地利用の整合的な記述を完成させ,首都圏のデータを用いた実証分析の深化と併せて論文をまとめる。また男女共同参画社会の実現に重要となる世帯の副次従業に関して,離散的な0-1型労働供給の下での勤務先による賃金格差を含む解の定性的性質について検討を継続する。(2)の小地域コホート分析については,従来の2000-10年に関する東京都を対象とした小地域コホートモデルの検討を踏まえて,数値計算と人口遷移行列を用いたファイナルテストを進め,実績値との比較を通じて推定方法の検証・改良について検討し,2020年国勢調査で観測される小地域人口動態の推計を試みる。(3)の不動産価格分析に関しては,不動産価格を小地域の属性別居住人口データと組み合わせて,付け値地代の属性ごとの違いを推定する。その際,従来のランダム付け値モデルに代えて,より明確なミクロ的基礎付けを持つランダム効用モデルへの拡張を試み,上海の住宅市場のデータを用いて検証する。(4)に関連して,世代と住宅市場の関連について実証分析を進める。これには住宅ローン減税が及ぼす影響の世代間差異に関する理論的検討と,それに基づく建て方区分(戸建と共同住宅)を考慮した実証分析や,元年度に実施した若年者の住環境に対する選好に関する予備的検討を踏まえた,放射線量を含む環境と,それに関する情報提供が住居選択に与える影響に関する分析が含まれる。 2年度は本課題最終年度に当たるため,研究分担者間の連携を密にして,各サブテーマの方向性のすり合わせを図り,最終報告書に繋げることを予定する。
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Research Products
(11 results)