2019 Fiscal Year Annual Research Report
Corporate governance: exits and profitability
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17H02528
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
胥 鵬 法政大学, 経済学部, 教授 (60247111)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 亘 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (00282533)
松井 建二 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (20345474)
森田 果 東北大学, 法学研究科, 教授 (40292817)
蟻川 靖浩 早稲田大学, 商学学術院(経営管理研究科), 准教授 (90308156)
高橋 秀朋 法政大学, 経済学部, 教授 (90583659)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 経済政策 / 企業統治 / コーポレートガバナンスコード / 株主総会 / 政策保有株と社外役員 / 事業再編 / スチュワードシップコード / 情報開示 |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者胥は、分担者高橋と分担者田中と共同で、株式持合や政策保有と関連して、社外監査役や社外取締役のうち政策保有先や取引先出身者が半数以上を占める政策保有社外役員工作の要因を以下のように解明した。まず、企業価値が低いほど、外国人機関投資家の圧力が弱いほど、政策保有割合が高いほど、社外役員のうち政策保有先等の出身者が半数以上占める傾向にあり、仮に政策保有役員工作を行わなかった場合と比較した企業価値に対する政策保有社外役員工作の処置効果は統計的に有意であり、株価にして政策保有社外役員工作企業の方が7%ー13%低いことが分かる。分担者田中は、親子会社の組織再編等、利益相反のあるM&Aの公正性を担保するための株式価値算定やフェアネスオピニオンに関する法的問題を検討し、事業再編をより容易にする株式交付制度の新設を含む、会社法制の改正提案に関する法律問題を検討した。分担者高橋は、代表者胥と共同で、日経225インデックスに加えられた銘柄の株価の動きから、空売りが市場流動性を提供し株式市場効率性を高めると分析した。分担者森田は、株主総会白書アンケートに基づくパネルデータを利用することで,株主総会を通じたコーポレート・ガバナンスのあり方とその変容について解明した。分担者蟻川は、スチュワードシップコードの導入が企業価値の向上につながっているかどうかを、クロスカントリーデータを用いて分析した。そして、機関投資家の持ち株比率が高い企業ほど、スチュワードシップの導入が企業価値に与えるプラスの効果が大きいことを明らかにした。分担者松井は、サプライチェーンを構成する企業同士の情報開示のあり方などを分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代表者と分担者の数多くの論文が公表されており、国際学会発表も行われている。
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Strategy for Future Research Activity |
代表者・分担者が協同して日本経済のもう一つの失われた10年の原因究明と新しい企業統治改革の政策効果を検証するために昨年度までに行った分析に続いて、われわれは赤字事業に焦点を当てて日本企業の稼ぐ力の低下と企業統治の問題点を突き止める。 赤字事業への投資を未然に防ぐことに焦点を当て、代表者胥は雇用維持が赤字事業からの早期撤退を妨げるかどうかを分析する。分担者・森田は、新型コロナウイルス危機への対応から見た株主総会を通じた企業統治のあり方を念頭に置いた上で,引き続き,株主総会データを通じた企業統治の分析を行っていく。分担者・田中は引き続き経済学の手法を用いた法制度分析を行う。特に、スプリット・オフを容易にする会社法および税法上の制度改正について検討する他、経営者にリストラクチャリングのための適切な誘因を与えるような会社法制の設計について考察を行う。赤字事業からの撤退を躊躇する企業の株式を売却して反対の意思を表わす(foot voting)と株主総会などで反対票を投じる意思表示(voice)という二の視点から、分担者・高橋は、代表者・胥と協同して、海外機関投資家持株比率などの所有構造と株価が取締役構成に対する効果を探る。これと関連して、分担者・蟻川は引き続き企業統治や市場競争を通じた企業の淘汰メカニズムが、企業パフォーマンスや長期株式収益にどのように影響するのかを日米比較を通じて検証する。赤字セグメントの情報開示との関連で、分担者・松井は引き続き不完備情報ゲームの理論を用い、企業が採用することが望ましいディスクロージャー戦略に関するモデルを構築する。 分析結果を基にして、より学術的な研究を進めて学術論文として成果を得、日本の企業統治改革に関する政策インプリケーションを引き出す。完成した分析については、得られた成果を取りまとめ国内外の学会で発表すると同時に専門雑誌に投稿する。
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