2018 Fiscal Year Annual Research Report
Restructuring through Entry, Exit, and Resource Reallocation: Empirical research on Semiconductor Industry
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17H02561
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松本 陽一 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (00510249)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 功一 大阪大学, 経済学研究科, 准教授 (40510409)
渡辺 周 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 助教 (90754408)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 経営戦略 / ダイナミック・ケイパビリティ / シナジー |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに作成した、半導体製品の詳細なカテゴリーにもとづく製品販売動向の独自データベースを活用して、全世界の半導体製造企業によるカテゴリーへの新規算入・撤退行動の分析を行った。分析の結果、自らが半導体製品を製造する統合型製造企業(Integrated Device Manufacturer)と、自らは製品の設計だけを行い、半導体製品の製造は外注しているファブレス企業とでは、算入と退出に関して異なる行動様式が見られることを発見した。具体的には、前者よりも後者において、ダイナミック・シナジーと呼ばれるシナジー効果をより強く意識した行動を観察した。これは、新たな事業を始めたり、既存事業から撤退したりする場合に、当該事業のほかに保有している事業との間で資源を共有することによってえられるシナジー効果よりも、撤退事業と新規参入事業との間で経営資源の移転を行うことによってえられる異時点間のシナジー効果の方を、ファブレス企業がより強く意識している可能性が高いことを示唆している。 企業の競争優位を考える上で、組織がもつ資源は重要な要素である。近年では、変化の激しい環境下において、素早く変わっていく環境に応じて自らも変化していくことを可能にするような組織のダイナミック・ケイパビリティが重要であると言われている。われわれが観察したダイナミック・シナジーは、そのひとつのあり方として注目されているものの、その実証が十分とはいえなかった。ここでダイナミック・シナジーの実態を示したことによって、今後さらなる実証および理論面の深化が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は海外において高く評価されている経営学の2つの学会において研究発表を行った。そのうちのひとつ米国経営学会においては、経営戦略分野における優秀論文賞(Distinguished paper Award)を受賞するなど、研究の質の面では高い成果をあげることができた。その一方で、後半の半年間は分析結果の全面的な内容確認に多くの時間を要してしまい、セミナー等を十分に開催することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、組織の資源に着目したアプローチによって半導体企業の参入と撤退の分析を行ってきた。これについては、2019年度の早い段階で論文を仕上げて投稿する。その後、企業のポジショニングや競合企業の行動を勘案した算入と撤退の分析を行うことによって、過年度までの組織の内部資源中心のアプローチを補完する視座としての外部環境による影響を検討する。
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