2018 Fiscal Year Annual Research Report
フランスにおける研究開発系専門職の職域連携による集合知:知識移転と社会的流動性
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17H02572
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
藤本 昌代 同志社大学, 社会学部, 教授 (60351277)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 秀忠 山梨学院大学, 現代ビジネス学部, 准教授 (50583267)
野原 博淳 山梨学院大学, 現代ビジネス学部, 特任教授 (70781235)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 産業クラスター / 専門職 / 知識の移転 / 流動性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日仏のハイテククラスターを調査し、研究開発に従事する専門職間(研究者、技術者、テクニシャン等)の知識の移転、交換、集団知、組織知の蓄積過程やメカニズムについて分析するものである。その際、彼らを取り巻く社会的環境(産業構造、就業構造、組織における位置づけ、組織外の専門家集団の中の位置づけ、労働市場の発達の有無など)の影響や彼らの専門分野、専門職のアイデンティティ、組織的特徴、業務内容の分配、職域の認知など属性的要素などに着目しながら、彼らの行動、意識を調査するものである。また、本研究はフランスチームによる調査協力が大きいため、日本のクラスターの調査も行い、フランスチームへの調査協力も実施する。これらの相互協力により、研究の国際交流の達成も目指している。 本研究では以下の点を明らかにする。(1)日仏で各職種の分業と協業体制、知識・技能の移転、交換がどのようになされているのか、(2)チームでのノウハウ、知識、技能がどのように蓄積されているのか、属人化する知識・技能と共有、蓄積されやすい集合的知識・技能について構造を明らかにする。それは組織の中で個別に起こるのではなく、研究開発チームを取り巻く、組織内での位置づけ、組織を取り巻く社会での位置づけ、雇用制度、労働市場、教育制度など、関連する専門職らを取り巻く社会的環境との相互作用で起こる現象ととらえ、そのメカニズムを検討するものである。 (3)このマクロ‐ミクロ相互依存性分析により日仏の組織における知識創造の有効性も検証する。 2018年度予算では南仏のソフィア・アンティポリス、ポール・コンペティティブ、その他エクサンプロバンス周辺のクラスターに行き、インキュベーターとして組織を運営者およびエンジニアに聞き取り調査を行った。彼らの知識創造、「場」における集合知の形成、知識の交換、移転について知ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2017年度夏には南仏の共同研究者との関係性を構築し、2017年度冬には南仏調査を実施し、ソフィア・アンティポリス、ポール・コンペティティヴなど、エクサンプロバンス周辺のクラスターに訪問し、クラスター運営者との接触に成功し、運営者の立場からと、そこから紹介を受けた企業の創業者等に聞き取り調査を行なえた。2018年度夏にはソフィア・アンティポリス、ポール・コンペティティヴなど、エクサンプロバンス周辺のクラスターに加えて南仏の研究者からの情報により、トゥールーズの医療・バイオ系クラスター、IT系クラスター、グラースのコスメチッククラスターで運営者や技術者への聞き取り調査を行うことができた。フランスのクラスターと比較可能な日本のクラスターへも調査を行い、医療・バイオ系、光学系、コスメチック系のクラスターでの聞き取り調査も行えた。2018年度冬には2017年度から訪れているポール・コンペティティブのクラスターに再訪し、IT系企業の具体的な事例について、またコスメティック系の企業にも訪問し、地域や製造ラインにおけるしくみに関する聞き取り調査を行った。また日本の工学系の企業とブリッジングを行うべく、南仏の光学系の企業に訪問し、良好な関係を構築し、より深い内容についての聞き取り調査が行えるよう努力した。 これまでの2年間は、研究メンバーである野原氏自身の実績(調査対象との信頼関係の構築)と野原氏と南仏の研究者との信頼関係が非常に大きく、計画当初の予想を上回る調査を行なえている。この調査により、研究代表者、研究分担者、大学院生は国際調査、日仏比較研究の方法論を学習することができ、共に調査を行うことで多くの知見を獲得している。また、経済学、経営学、社会学などの隣接分野による連携は対象を複合的に分析することができ、相乗効果を実感するプロジェクトとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度はこれまでの2年間のクラスター調査によって把握できた内容を踏まえ、各クラスターでの詳細な事例調査を行う予定である。2020年度は2017年度から2019年度まで行った調査を整理し、現象の説明を行うための分析に注力する予定であるため、2019年度は最も精力的に調査を行う年と位置づける。したがって、これまでの訪問地域を重点的に調査する。加えて、そこから新たに重要な関連があると思われる地域(マルセイユおよびシャルトルのコスメティック・クラスター)等も追加調査を行う予定である。日本の調査も昨年度に回っているバイオ系、光学系、コスメティック系に再訪し、詳細情報を得る予定である。
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Research Products
(6 results)