2017 Fiscal Year Annual Research Report
A Research on Regulating the Quality of a Financial Statement Audit
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17H02582
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鳥羽 至英 早稲田大学, 総合研究機構, その他(招聘研究員) (90106089)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小宮山 賢 早稲田大学, 商学学術院(経営管理研究科), 教授 (00623117)
秋月 信二 埼玉大学, 経済学部, 教授 (20134330)
永見 尊 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (60275774)
福川 裕徳 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (80315217)
亀岡 恵理子 文教大学, 経営学部, 講師 (30806295)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | audit quality / audit professionalism / governmental regulation / self regulation / regulatory agency / 大蔵省(証券局) / 金融庁(公認会計士・監査審査会) / 日本公認会計士協会 |
Outline of Annual Research Achievements |
財務諸表監査の質は、会計基準の質と監査基準の質によっても影響を受ける。われわれの研究の中に、監査基準による規制という視点も盛り込み,平成30年度中に、部分的であれ、成果を得たいと考えている。 監査の質に対する規制を論するには。①監査の質とは何か、②どの主体が、③どのような視点から監査の質を規制するのか、③その場合における規制の長短と規制の境界は何か等について議論できる枠組みを有することが必要である。幸い、今回の課題研究に関連して、研究代表者、研究分担者そして研究協力者の3人が、日本公認会計士会が設定した「監査の品質を巡る規制の在り方」なる共同研究プロジェクトに参画し、2018年2月と4月に、その報告書を公開した。監査の品質に関する定義と、現時点における我が国における監査の品質に対する規制の現状についての分析とそこでの結果は一応把握したことになる。 また、各国の規制の状況についての概観的な発表は2017年度において得られたが、監査の質の規制に重要な影響を与えている米国証券取引委員会と我が国の金融庁(公認会計士・監査審査会)の立て付けが異なり、単なる比較で議論することができないことが指摘された。前者は、大統領直属の独立の監視機関としての官庁組織であるが、後者は内閣総理大臣が行う行政の一翼を担う「政策官庁」である。このの違いは、当然ながら、監査の質に対する規制の在り方に影響を与えているはずである。監査プロフェッションと監督官庁との関係は、英国、ドイツ、カナダについても同様に分析する必要がある。 監査の質に対する規制を扱った学術論文等の文献調査については、随時、紹介を受けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度における研究は、各国で実施されている財務諸表監査の質に対する規制の状況を、自己規制と外部規制の観点から、調査するという形で計画された。その担当者別の割り当てと研究上の狙いどころは、最初の会合を通じて決定したが、各研究者がそれぞれの分担研究において依拠すべき、①規制の定義、②規制の捉え方を含む規制の枠組みについての研究成果は、研究代表者のアメリカでの研究出張が現地到着が直ちに取りやめ、帰国しなければならないという状況が起こり、先延ばしになった。また、そのことの影響もあり、現時点で、報告できる形には至っていない。上記の「研究実績の報告」で言及したように、2018年2月と4月に、日本公認会計士協会が立ち上げた学者と監査実務家から成る研究会の最終報告書が公表されたので、関連する一部の作業と成果は得られたことになる。 その一方において、各国の規制に状況については、少しずつ研究成果の発表が個別的になされた。また、監査の質の規制を巡る学術文献調査の結果も、一部であるが、分担者から発表があった。しかし、いずれも、レジュメ形式であり、研究成果の紹介に域にとどまっている。研究代表者による「規制の枠組み」に関する発表がなされなかったことが、全体としての研究の進捗度に影響を与えていると判断している。 平成29年度の状況は上記のように要約できるが、研究の過程で、ドイツにおける監査の質に対する規制の状況も考察の対象に入れるべきとの考えから、この分野の第一人者である内藤文雄教授(甲南大学)に「研究協力者」として参加をいただき、同教授の知見の一部の発表を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の研究は、まず、①財務諸表監査の質とは何か、②財務諸表監査の質を規制するということは、どういうことであるのか、③そもそも「規制」とは何か、④財務諸表監査の質の規制を学術的に考える場合の枠組みは何かを明らかにすることを研究計画の基礎に据えたいと考えている。そして、監査の質の規制を考えるための枠組みについて、研究者の間で共有することが必要と考えている。このための作業をまず研究代表者の側で開始し、その結果を早い時期に紹介し、研究課題を考察する分析の枠組みを決定することを予定している。 各研究分担者と研究協力者(本年度に追加)がそれぞれの課題について調査・研究結果を随時発表し、知識と情報の共有を図ることを予定し、そのための大雑把な発表時期は決定されている。可能であれば、レジュメ方式ではなく、粗原稿の形での提示をお願いしたいと考えている。主要会計先進諸国における監査の質に対する規制の状況を示せるような「ベンチマーク」について議論し、とりわけ、わが国における監査の質に対する規制が、海外諸国との比較においてどのような状況にあるかを具体的に明らかにすることが必要と考えている。 いずれにしても、監査の質に対する規制は、基本的には、その国の"国内問題"であり、その国の法制度、行政システム、会計プロフェッション、そして広く文化に影響される部分が大きい。各国の規制の状況を考慮しつつ、最終的には、わが国における財務諸表監査の規制の在り方に引き付けた研究成果になるように心していきたい。 これまで会計プロフェッションが行ってきた監査の質に対する規制が、その根底から見直されつつある。わが国のこれまでの状況は、欧米のそれとは、歴史的に違う歩み方をしてきた。このことを踏まえて検討する必要がある。
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