2018 Fiscal Year Annual Research Report
Sociological Study and Research on the formation of new roles and functions of nonprofit organizations in case of disaster
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17H02592
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
安立 清史 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (40192968)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 和良 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (20275431)
小川 全夫 九州大学, 人間環境学研究院, 特任研究者 (40041016)
黒木 邦弘 熊本学園大学, 社会福祉学部, 准教授 (60369832)
益田 仁 中村学園大学, 教育学部, 講師 (20551360)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高齢者介護福祉施設 / 福祉社会学 / 社会福祉法人 / 福祉避難所 / ボランティア / コーディネーター / 非営利組織 / NPO |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、熊本県老人福祉施設協議会加盟の全施設にたいして、熊本地震に関連して外部からどのような支援を受けたのか、その実態と課題について郵送アンケート調査を実施した(2018年7~8月実施)。調査票については熊本県老人福祉施設協議会災害復興部会とともに調査項目を策定した調査票を熊本県老人福祉施設協議会から会員施設へ郵送して回答を依頼した。配布226票に対して回収は147票、有効回収率は65.0%であった。今回の調査で多くの新たな発見があった。災害が発生すると外部からのボランティアも数多く支援にやってくる時代となった。そうした支援者のコーディネートが大きな課題であったことが確かめられた。「ボランティアや支援者の食事や宿泊、オリエンテーション等を担当するコーディネーター」「支援する側の団体や組織が同伴して支援にきてくれるコーディネーター」「福祉避難所等の運営にあたる専門的なコーディネーター」という3つのレベルでのコーディネーターの必要性について調べたが、どのレベルでも高い必要があることが確認された。外部からの支援者は有益だが、そのコーディネートにも少なからぬ労力や神経を使うことになる。こうした外部からの支援と施設とをうまく調整するコーディネーターは、今後ますます重要かつ必要になるだろう。こうしたニーズに答えるコーディネーターを、どこが、どう養成し災害時に派遣したりするのか、今後の政策的な課題だと言えるのではないか。その他、支援する側と受け入れる側とで、様々な情報ギャップやコミュニケーション・ギャップもあることがわかった。これを社会福祉法人や非営利組織がどう解決していくべきか課題である。こうした2018年度の調査研究成果の一部は、九州大学・共生社会学紀要に共著論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、熊本県老人福祉施設協議会および熊本県社会福祉協議会の協力をえて、熊本県老施協加盟の全施設へとアンケート調査を行うことができた。2018年4月時点で、熊本県老人福祉施設協議会の会員数は380施設であり、その中からデイサービス事業所(154)を除くと施設数は226であった。このすべてを調査対象母体としたが、われわれ以前に、熊本県の老人福祉施設協議会の全施設へと被害と対応の実態調査のデータはなかった。熊本県の老人福祉施設の被害と対応の実態調査に関しては、われわれの調査がはじめてのものであった。その調査研究成果については、熊本県老施協の災害復興部会でも報告を行い、高い評価をえた。また、前回に調査協力をいただいた福岡県老人福祉施設協議会へも報告と政策提言を行い、高い評価をえた。こうした2018年度の調査研究成果の一部は、九州大学・共生社会学紀要に共著論文として発表したが、今回の調査結果からは、災害時の社会福祉法人やNPO法人などの支援の課題や、ボランティアとの協働を行ううえでの核となるコーディネーターの3段階での必要性が確認されたことなど、今後の政策的な提言や実現へ向けた多くの成果をあげたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで2年間の調査研究成果をふまえて3年目は総合的なまとめを行い、調査研究成果の出版を行う計画である。その計画は概略以下のとおりである。第1に、初年度に行った福岡県老人福祉施設協議会の施設からの熊本県老人福祉施設協議会の施設へ派遣された職員へのアンケート調査や聞き取り調査の結果をふまえて、災害時に被災地の福祉施設を支援する側の問題や課題を整理する。これを社会福祉法人の社会貢献メニューのひとつとして政策提言していく。第2に、昨年度行った、支援を受けた熊本県老人福祉施設協議会の施設へのアンケート調査から、災害時に支援を受けた側の問題や課題を整理する。災害時には、施設の職員も大きな被害やダメージを受けている。高齢者福祉施設の入居者だけでなく職員への支援も視野に入れながら、受け入れ側のキャパシティを超える支援者がやってきた場合のコーディネートの問題や課題、災害時支援コーディネーター(仮称)の必要性の政策提言などを行っていきたい。さらにわれわれの論文をもとに、現場や専門家との討議やディスカッションなど行って、成果物を作成して出版する計画である。
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Research Products
(17 results)