2018 Fiscal Year Annual Research Report
Rethinking health literacy through information prescription for the persons with disabilities
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17H02618
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
八巻 知香子 国立研究開発法人国立がん研究センター, がん対策情報センター, 室長 (60392205)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北山 裕子 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 客員研究員 (00747496)
高山 智子 国立研究開発法人国立がん研究センター, がん対策情報センター, 部長 (20362957)
関 由起子 埼玉大学, 教育学部, 教授 (30342687)
田村 俊作 慶應義塾大学, 文学部(三田), 名誉教授 (70129534)
三輪 眞木子 放送大学, 教養学部, 教授 (90333541)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 情報保障 / 障害 / 医療情報 / ユニバーサルデザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
1.1年次に作成した音声資料について、研究参加者が実際に試聴し分かりやすさについて確認した。その結果、医療情報については、文字情報をそのまま音声読み上げした資料が理解しづらいものになっていることが明らかとなった。より分かりやすい資料の作成のためには、「文章構造上の工夫」、「用語や言い回し」、「情報量」、「図表の読み下し」等に、音声資料独自の工夫が求められることが明らかになった。ただ、これらの工夫は、「わかりやすい日本語」として研究が進められている分野との共通要素が多いことが推察された。 2.視覚障害者向け音声資料については一定の経験の蓄積があるが、聴覚障害者向け手話資料、知的障害者の利用を想定したわかりやすい資料については、定型的な作成手法すら確立されていない。2年次には国内の各専門家、研究者へのネットワークを広げ、新たに手話版資料の作成チーム、わかりやすい版作成チームを構成することができた。 3.1-2年次を通じ、公共図書館の訪問調査を行ってきた。この中で、公共図書館の章ギア者サービス部門、健康医療情報サービス部門の相互連携がほぼ皆無であること、この両部門の協働により対応すべきニーズがあることに無関心であること、障害者サービスも視覚障害に限られていること、点字図書館と公共図書館の障害者サービスの間の連携がないことが明らかになった。 4.世界がん学会(UICC)において、研究成果の報告を行うと共に、がん情報についての障害のある人への情報提供アプローチの動向について情報収集を行ったが、本研究と同様の意図をもった取り組みは聞かれなかった。しかし、UICCにおいて慢性疾患としての取り組みの普遍性が目指されていたことから、障害のある人の情報保障についても、他疾患と連携しながら進めていく本研究の方向性との共通点が見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.手話版(聴覚障害者向け資料)の作成チーム、わかりやすい版(知的障害者向け資料)作成チームを組織し、先行する点字・音声版(視覚障害者向け資料)と共通の墨字資料を翻訳する作業に具体的に着手できた。視覚障害者向け資料については、一定の施策と共に、資料作成のノウハウについても一定程度できているが、手話版、わかりやすい版については、作成方法についても未開拓の分野である。各種障害のある人にもアクセシブルな情報媒体を作成する中で、真の「わかりやすい」資料がもつべき要素が明らかになることが期待でき、本研究の学術的側面である「リテラシー」概念の再検討に大幅に近づくことができた。
2.上記のとおり、他の障害に比べれば、視覚障害者向け資料の作成には一定の方法が確立されているといえるが、この方法において重要視されてきた内容の同一性、等価の情報の原則だけでは、真に伝えられる資料とはなりえないことを具体的に検証できた。小説等の芸術的作品とは異なる、公的情報については、表現等を変えながら情報を伝えることこそが、本当の意味での等価な情報伝達になる可能性を示している。具体的にどのような修正・変更により「わかりやすく」なるかを明らかにしたことで、障害者差別解消法下で対応すべき施策についての示唆を引き出すことが出来た。
3.その他の点については、予定通り実施し、十分な成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.先行する視覚障害者向け音声・点字資料については、上述のとおり、すでに確立された一般的な音声・点字作成では必ずしもわかりやすい資料にはなりえないことが明らかになった。ゆえに、実際に視覚障害の当事者へのヒアリングを行い、わかりやすい音声資料が備えるべき「コア情報」とその提示の仕方のモデルを作成する。 2.日本でほとんど先行事例のない、手話版、わかりやすい版のがん情報資料の作成を行う。手話版については、実際の資料の試作と、医療専門家による正確性の検証を行う。わかりやすい版については、特に情報量の制約のある状況下において必要な「コア情報」の同定を行う。 3、1,2を通じた、医療情報資料における「コア情報」がどのような条件で規定されるのかを検討する。これにより、医療者側が一般向けに発信する情報においても優先すべき事項についての示唆も得られるものと考えられる。また、開発した手法を他疾患(糖尿病、肝炎等)にも応用し、研究成果の普遍化、適応範囲の拡大をめざす。 4.本研究で開発する具体的なコンテンツを、社会への情報普及に実装するための仕組みづくりについて、図書館情報学の知見を取り入れながら開発していく。特に健康医療情報分野、障害者サービス分野の乖離を埋めるための橋渡しができる検討の場を設定し、図書館担当者の相互連携を促す。 5.当初より予定していた、障害者差別禁止法先進国における調査を行う。3年次には、スウェーデン、デンマークでの障害者への情報保障の状況について、主要機関の活動についてヒアリングを行う。
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Research Products
(15 results)