2017 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロとマクロからみた新たなサードエイジ発達モデルの構築
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17H02626
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
片桐 恵子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (80591742)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 育子 東京大学, 高齢社会総合研究機構, 特任講師 (10509821)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | サードエイジ / サクセスフル・エイジング |
Outline of Annual Research Achievements |
サードエイジを目前に控えたプレサードエイジの人たちが何を考えているのか、引退後の人生をどのように生きたいと考えているのか、などについては殆ど明らかになっていない。それは、老年学においては、この世代の人たちは安定してあまり問題のない時期であると考えられてきたためである。しかし近年、人生を100年を前提をして戦略を立てる必要性や、団塊世代の高齢者に社会的格差が広がっている事実、自立しない子どもと老親の介護というダブルケアを抱える人たちの増加等、様々な問題が存することが明らかになってきた。そのため、平成29年度は、主としてプレサードエイジの実態を既存のデータを活用しながら明らかにする研究を行った。 一つには東京大学高齢社会研究機構が実施したインターネット調査のデータ(全国、50歳~69歳を対象)、2つには大阪ガスCEL研究所が首都圏と関西圏の住民に対して実施したインターネット調査を用いて、60歳以降の望む生き方の検討と60~75歳までのサードエイジの人たちのライフスタイルの実態の検討を行った。 その結果、引退後の生活をどう過ごしたいか具体的に考えている人は50歳代でも50%に達せず少ないことが明らかになった。またどのような人が引退後の生活を具体的に考えているのかどうかを検討したところ、学歴や職位などは関係がなく、仕事以外の社会参加をしているかどうかが、定年後のプランを持っていることに関連していた。つまり、現役時代に仕事と会社を中心に過ごすのではなく、多面的な活動の場を持っていることが、あらかじめのプランを立て、積極的に定年後の人生を過ごすことに必要なのである。しかし、現実に目を向けると長い通勤時間と労働時間を過ごしていると社会参加をすることは、本人が相当努力しないと可能ではないと思われる。次年度は、そのような複線的な人生を可能にするにはどうしたらいいかを質的調査を用いて検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、サードエイジのサクセスフル・エイジングを考えるためには、その前段階のプレサードエイジの人たちの実態と定年後のセカンドライフに対する考え方や準備状態を明らかにする必要があると考え、既存の2つのインターネット調査データを活用して、分析を行った。これはサードエイジの前段階の生き方で、サードエイジになってからの生き方がかなり左右されると考えたためである。研究当初に想定しなかったデータも入手できたため、プレサードエイジの様子はかなり明らかにすることができた。また、現在は働きス続けている60歳以降の人が多いため、60歳代になっても引退後の生活を考えている人は半数に過ぎず、引退後の人生をかなり先の将来と考えている様子も明らかになった。 さらに、質的分析を完了するには至っていないが、2つの質的調査(神戸大学から女性研究者研究活動支援事業研究助成金を得て、神戸市を中心とした関西エリアと三鷹市を中心とした首都圏で実施している50歳代から60歳代を対象にしたインタビュー調査結果と、東京大学高齢社会研究機構が千葉県柏市、神奈川県茅ケ崎市で実施している「生涯地域に参加し続けるためのプラットフォームづくり」事業での調査データ)のインタビューデータを検討して、どのような人たちがサードエイジに活躍しているのかについて、考察を進めた。 プレサードエイジのインターネット調査の結果と合わせて考察すると、サードエイジ前段階から、具体的なセカンドライフの過ごし方についての戦略をもつ、それには、サードエイジになってからの社会参加では遅く、現役時代から、社会参加により仕事以外の自分をもつという複線型の人生を過ごすことの重要性が示唆されるに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は以下の3つを予定している。 第一に平成29年度に実施した、2つのインターネット調査のデータの分析結果をまとめて、整理し、学会(日本心理学会を予定)で発表し、論文にまとめて投稿する。 第2に、2つの質的調査データの分析をさらに進め、データが不足であれば、関西エリアと首都圏にて追加のインタビューを行い、サードエイジに活躍している人たちの、活躍の理由を明らかにする。本人と社会関係、制度などマクロの視点から複層的に活躍の要因を探る。 第3に、上記の結果から、仮のサードエイジのサクセスフルエイジングモデルを構築する。そのモデルを検証すべく、調査を秋から冬にかけて、関西エリアと首都圏エリアで実施する予定である。具体的な調査エリアの検討と決定、調査会社と交渉し、限られた予算の中で、無作為抽出によるサンプリングを行い、回収率50%を目指す工夫などを検討する。モデルから質問紙調査を作成し、調査を実施する。 平成31年度には、平成30年度に実施した質問紙調査の結果を分析し、モデルの有効性を検討する。実施した研究の結果を統合してサードエイジのサクセスフルエイジングモデルを提案する。
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