2020 Fiscal Year Annual Research Report
戦前日本の初等教員養成における初等教員検定の果たした役割に関する歴史的研究
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17H02660
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
丸山 剛史 宇都宮大学, 共同教育学部, 准教授 (40365549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白石 崇人 広島文教大学, 教育学部, 准教授 (00512568)
内田 徹 浦和大学, こども学部, 講師 (00633801)
船寄 俊雄 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (40181432)
笠間 賢二 宮城教育大学, その他部局等, 名誉教授 (50161013)
釜田 史 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (60548387)
山本 朗登 山口芸術短期大学, 保育学科, 准教授 (60611704)
亀澤 朋恵 愛知江南短期大学, その他部局等, 准教授 (60736239)
大谷 奨 筑波大学, 人間系, 教授 (70223857)
井上 惠美子 フェリス女学院大学, 文学部, 教授 (80259316)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 小学校教員検定 / 教員養成 / 小学校 / 教員 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、第二次大戦前日本の小学校・国民学校教員検定制度の府県比較と中央法令の初等教員検定関係法令制定・改正過程に関する総合的研究であり、本年度は主に国民学校令・同施行規則期に関して検討することを計画していた。 1)府県比較に関しては、対象とした府県のうち、北海道、京都府、長野県に関しては対象とする時期まで検討が進んだ。2)北海道に関しては1938年度以降、公私立中学校・高等女学校在学生・卒業生を対象にし、中学校・高等女学校を試験会場とするというように便宜を図りながら実施する臨時試験検定が大規模に実施されていたこと等が明らかになった。これは従来の小学校教員検定研究では前例のないものであった。3)京都府では京都府教育会が臨時試験検定制度を用いた、大規模な教員養成講習に乗り出していたが、それでも教員供給が十分でなかったとみられ、1943年に京都府臨時教員講習所が開設され、ここでは無試験検定制度が利用されていたこと、同年度には国民学校初等科訓導養成講習も行われ、こちらにも無試験検定制度が利用されていたことが明らかになった。4)長野県に関しては、本科正教員供給には長野県知事が関与することが厳格に定められており、他府県でみられた教育会主催本科正教員講習は長野県の場合はみられなかった(少なくともこれまでの調査では見つかっていない)。その他、本年度対象とした時期について、他府県と同様に、長野県においても国民学校初等科訓導養成(講習)が行われたとみられるが、長野県の場合は無試験検定制度が利用されていたことが明らかになった。5)中央法令・改正過程研究に関しては、小学校教員免許状の終身有効・全国通用化について、『枢密院会議議事録』に記録が残されており、普通学務局長が説明を行っており、植民地に渡る小学校教員が増加するなかで府県知事の管理が及ばなくなり、全国通用化が図られたことが明記されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前記のように、本研究は、第二次大戦前日本の小学校・国民学校教員検定制度の府県比較と中央法令の初等教員検定関係法令制定・改正過程に関する総合的研究であり、1)府県比較に関しては、北海道、京都府、長野県の通史的検討をおおよそ終えることができた。北海道では長く女子師範学校が設置されないなか、女教員供給に検定制度が利用され、検定制度が重要な役割を果たしていたことが明らかになった。京都府は明治期に検定制度を利用した京都府教育会の教員養成事業が盛んであったことが先行研究で知られていたが、先行研究で見落とされてきた大正期以降も臨時試験検定制度を利用した有資格者輩出のための講習が行われていたことが明らかになった。長野県の場合は本科正教員講習であっても県知事が指揮するものしか検定適用の対象にならなかったことが明らかになった。これは先行研究にはみられない事例であり、長野県の本科正教員供給に対する厳格な姿勢をうかがわせると同時に長野県の特異性が特徴づけられた。このように、各府県の相違が明らかになってきた。鳥取県の事例研究は新型コロナ感染防止との関係で昭和初期までしか検討できていないが、検討結果がまとめられ、鳥取県の概況を確認することができるようになった。ただし、活字による公表が進んでいない県もある。2)中央法令・改正過程に関しても、小学校教員検定制度発足時、小学校教員免許状終身有効・全国通用化に関する制定・改正過程に関する史資料を新たに見つけ出すことができ、ロジックが明らかになりつつある。以上のような研究の進捗状況より、「おおむね順調に進展している」と自己評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
1)結論を練るとともに、研究成果公開促進費に応募し、研究成果を世に問う。2020年度末に、これまでの研究成果とこれまでに収集した史資料の資料集を収録した研究成果中間報告書を作成した。本年度はこの中間報告書をもとに研究成果公開促進費応募の準備に取り組む。また、その検討を通して結論を洗練させる。 2)山口県に関しては、長州藩がそのまま山口県となった特異な県であり、しかも長く女子師範学校が設置されず、小学校教員検定が重要な役割を果たしていたと考えられるので、活字として研究成果を公表できるよう研究成果のまとめ方を検討する。 3)中央法令制定・改正過程研究に関しては検討は進展してきたが、活字として公表するには至っていないため、年度内に活字として研究成果を公表することをめざす。
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Research Products
(9 results)