2017 Fiscal Year Annual Research Report
教育領域における専門業務のアウトソーシングと教育専門職の変容に関する実証的研究
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17H02661
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 鉱市 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (40260509)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 和昭 名古屋大学, 高等教育研究センター, 准教授 (20582886)
白旗 希実子 東北公益文科大学, 公私立大学の部局等, 講師 (10735658)
荒井 英治郎 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 准教授 (60548006)
石井 美和 東北文教大学短期大学部, その他部局等, 講師 (90713206)
勝野 正章 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (10285512)
井本 佳宏 東北大学, 教育学研究科(研究院), 研究員 (10451501)
村澤 昌崇 広島大学, 高等教育研究開発センター, 准教授 (00284224)
保田 直美 佛教大学, 教育学部, 准教授 (00751794)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 教育政策 / 教育の専門職性 / アウトソーシング / 働き方改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、教育課題の複雑化に対し、限られた予算と人員の下に効率的に対応する手法のひとつとして、教育専門業務のアウトソーシング(OS)が模索されている。本研究は、就学前教育、初等中等教育、高等教育の各段階で進むOSの実態と影響を、総合的かつ実証的に分析し、これからの教育専門職のあり方、外部機関との連携における課題、方策を示すことを目的としている。研究計画としては、①国際比較調査:文献調査及び訪問調査を通じ、教育分野における専門業務のOSを促したマクロレベルの要因を解明する。②質的調査:教育機関、教育専門職、及びアウトソーシングを担う外部組織への聴き取り調査を通じ、OSが教育専門職の業務に与える影響や、必要な方策について明らかにする。③量的調査:質問紙調査及びWeb アンケートを通じ、我が国の教育分野における専門業務のOSの実態と潜在的な需要を把握する。 上記3課題に関する初年度の研究実績としては、以下のとおりである。①英国への訪問調査を実施し、マンチェスター大学の研究者、全英教員組合の専門職員、民間教員研修プロバイダーから、教員研修民営化の現状と課題についての詳細な情報供与を受けるとともに、 それぞれの視点・立場での認識を聴き取った。民間教員研修の質保証という課題のほか、教職の専門職性の変容との関係についても示唆が得られた。②初中等レベルでは、学校における働き方改革に関連する基礎的作業として分業化、協業化の精査を進め、東北地方のA県ならびにB市の教育委員会関係者とラポールを形成した。また高等教育レベルでは、都下5大学の教職員に対する聞き取り調査を行った。③初中等レベルでは、小学校・中学校・高校の教員に対し教育業務のOSに対する意識に関する質問紙調査のたたき台を作成し、調査対象地域の選定を行った。高等教育レベルでは、大学教育のOSの現状を明らかにするための質問紙調査の設計を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初の計画としては、①国際比較調査では、日米英各国の主要専門職種及び教育分野における政策・制度改革の状況について、先行研究及び関連文献の収集と整理を行うことを計画していたが、英国については調査研究が達成できた。米国については対象機関・対象者の絞り込みを進めており、今年度以降の実施が可能である。②質的調査については、各種OS関連文書の精査や、関係者へのラポール形成、実態を探るインタビュー調査を計画していたが、初中等レベルでは政策文書の分析と整理が進み、また東北地域の教育委員会との連携・協力体制が構築できた。また高等教育レベルでは都下5大学について執行部ならびに教職員に、入学前教育から教育達成度試験などの各種OSの実態とそれに対する意識を聞き取ることが出来た。それらはテキストとして文字起こしして今年度の中間報告としてまとめる手はずとなっている。③量的調査としては、初等中等ならびに高等教育レベルいずれについても、今年度の本調査に向けた調査対象の絞り込み、項目作成などが順調に達成できた。また今年度に一般市民に対して実施するWEB調査についても、項目作成・調整を進めることが出来た。以上の進捗状況に鑑みて、計画初年度としては順調な進展であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
計画2年目の今年度も、①国際比較調査、②質的調査、③量的調査の3本を軸に、調査研究を進めていく予定である。具体的には以下の通りである。①国際調査については、すでに完了した英国の事例研究の知見をとりまとめていくと同時に、ドイツならびに米国などの現地調査を実施し、それに基づいた学会報告もしくは論文執筆を進める。②質的調査については、初中等教育レベルでは今年度アンケート調査の対象地域となる教職員へのインタビューを進めつつ、その対象者の範囲を信州地方、東海地方にも広げることを検討する。高等教育レベルでは、前年度の5大学調査を踏まえた上で、新たなOSの取り組みの実態を深掘りするべく、設置者・地域などを勘案して調査対象の大学群を全国レベルに広げると同時に、OSを手がける企業の関係者などにも聞き取り調査を行う。③量的調査は、これまでの質的調査で得られた知見を活かしながら、初等中等教育レベルでは、昨年度に作成したたたき台を元に調査票を完成させ、パイロット調査を行う。その後 、東北地方の地方都市Y市・S市及び甲信越地方のM市の小学校・中学校教員を対象として調査を実施する。また高等教育レベルでは、全国国公私立大学の学部長(部局内のOSを管轄)を対象とする質問紙調査を実施する。さらに、学校・大学以外の一般市民のOSに対する意識を探るために、委託業者を介したWEB調査によって、東海地方のC市在住の登録モニターのうち「大学教職員以外の人」数百名を対象とした意識調査を実施する。またこれらの海外調査、質的調査、量的調査のそれぞれの調査結果については、年度末を目途に「中間報告」を刊行する予定である。
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Research Products
(7 results)