2019 Fiscal Year Annual Research Report
教育領域における専門業務のアウトソーシングと教育専門職の変容に関する実証的研究
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17H02661
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 鉱市 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (40260509)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村澤 昌崇 広島大学, 高等教育研究開発センター, 准教授 (00284224)
保田 直美 佛教大学, 教育学部, 准教授 (00751794)
井本 佳宏 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (10451501)
白旗 希実子 東北公益文科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10735658)
丸山 和昭 名古屋大学, 高等教育研究センター, 准教授 (20582886)
日下田 岳史 大正大学, その他部局等, 専任講師 (30734454)
谷村 英洋 帝京大学, 教育学部, 助教 (50614632)
荒井 英治郎 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 准教授 (60548006)
石井 美和 東北文教大学短期大学部, その他部局等, 講師 (90713206)
高橋 望 群馬大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (10646920)
高橋 哲 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10511884)
小島 佐恵子 玉川大学, 教育学部, 准教授 (40434196)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アウトソーシング / 教育政策 / 教育の専門職性 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、教育課題の複雑化に対し、限られた予算と人員の下に効率的に対応する手法のひとつとして、教育専門業務のアウトソーシング(OS)が模索されている。本研究は、初等中等教育から高等教育の各段階で進むOSの実態と影響を、総合的かつ実証的に分析し、これからの教育専門職のあり方、外部機関との連携における課題、方策を示すことを目的としている。本研究の計画は、①国際比較調査、②定量的調査、③定性的調査の3本を柱としているが、4カ年プロジェクトの3年目に当たる2019年度の研究成果としては、以下のとおりである。 まず、①国際比較調査については、すでに完了した英国、ドイツの事例研究の知見をとりまとめると同時に、新たにオセアニア諸国について現地調査をおこない、それに基づいた学会報告・論文執筆を進めた。②定量的調査については、まず初等・中等教育レベルでは、東北及び甲信越地方における小学校・中学校教員を対象としたアンケート調査から、1日の平均勤務時間の実態、最重要と考える業務、教員以外の専門職や民間企業などにOSできる業務などについての認識を分析した結果、教材研究、集団指導、個別指導の時間を確保できているかどうかがOSへの委託感に影響を与えていることなどを析出し、その分析結果を学会で報告した。また高等教育レベルでも、全国国公私立大学の学部長を対象としたアンケート調査から、大学教育を構成する業務のうちOS されている割合が高い業務は、入学前学習の教材開発や学習指導、学習成果の測定テストの開発や分析であることなどの分析結果を学会で報告した。③定性的調査については、都下5大学についてのインタビューに基づいて、大学教員にとって不慣れで新規性の高い業務のOS が大学教育の改革を求める外部の要請を背景に行われている可能性などの分析結果について、学会報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画は、上記のように3つの柱から成るが、それぞれの達成度は以下のとおりである。①国際比較調査では、年度当初の計画としては、オセアニア諸国と米国に対する現地調査を予定していた。オセアニア諸国については調査研究が達成できたが、米国については新型コロナウィルスの影響で入国が禁止されたため、現地調査がかなわなかった。②定量的調査としては、初等中等レベルでは東北地方・甲信越地方の各市の教育委員会ならびに学校関係者へのアンケート調査、高等教育レベルでは全国大学の全学部長へのアンケート調査それぞれについて、上記のように多変量分析を進めた。初等中等教育では、OSの可能性や意識の背後にある潜在因子などを抽出するなどの分析結果を、また高等教育ではOS 実施状況と大学属性ならびにOSに対する「好ましさ」などとの関連の決定木分析などを試み、それぞれ教育学会ならびに高等教育学会で報告できた。③定性的調査については、都下5大学についてのインタビュー調査について、高等教育学会でその分析結果を報告した。 以上のように、国際比較研究では想定外の事態のため予定していた米国調査が実施できず一部遅延が生じているが、コロナウィルス収束を待ちながら、今年度以降の実施を探りたい。国内の量的・質的調査に関しては、アンケート調査の詳細な分析を進め、学術論文への投稿などが準備できた。これらに鑑みて、計画3年目としてほぼ順調な進展であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は4年の研究計画期間の最終年度に当たる。これまでの計画の総まとめとして、①国際比較調査、②量的調査、③質的調査の3本それぞれについて、調査研究の成果を整理・総括する予定である。具体的には以下の通りである。①国際調査については、すでに完了した英国、ドイツ、オセアニアの事例研究をとりまとめていくと同時に、昨年度計画していたものの実現しなかった米国について、コロナウィルスの収束をにらみながら現地調査を行う。また、これらの知見に基づいた各国の比較分析を行い、学会報告、論文執筆を通じて、最終報告書へのとりまとめを進める。②量的調査は、初等・中等教育レベルでは、小学校・中学校教員を対象としたアンケート調査の分析を進め、学会報告、論文投稿を進める。また高等教育レベルでも、全国国公私立大学の学部長を対象としたアンケート調査の分析をさらに進め、教育社会学会、高等教育学会などの専門学会での報告・発表、ならびにそれら学会への論文投稿を図る。さらに、東海地方の学校・大学以外の一般市民を対象としてすでに実施したWEB調査についても、分析結果を論文化する。③質的調査については、初等・中等教育レベルでの教職員へのインタビューをとりまとめる。高等教育レベルでは、これまでの実地調査を踏まえた上で、新たなOSの取り組みの実態を深掘りするべく、企業関係者、政府関係者などにも聞き取り調査も試みながら、最終報告書へのとりまとめを進める。 これらの海外調査、量的調査、質的調査それぞれの調査結果については、一昨年度末に刊行した「中間報告」とそれぞれの学会報告・論文などをもとに、年度末に発行予定の「最終報告書」にとりまとめる予定である。
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Research Products
(11 results)