2020 Fiscal Year Annual Research Report
小学校区・中学校区を単位とする地域社会の文化構築過程に関する歴史的研究
Project/Area Number |
17H02671
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
多和田 真理子 國學院大學, 文学部, 准教授 (00646268)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西島 央 青山学院大学, コミュニティ人間科学部, 教授 (00311639)
瀬川 大 日本女子体育大学, 体育学部, 准教授 (20637334)
木村 元 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特任教授 (60225050)
大西 公恵 和光大学, 現代人間学部, 准教授 (70708601)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 教育史 / 地域史 / 学校資料 / 史料保存 / 小学校区 / 中学校区 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、学区を単位とする地域の社会=文化構造のありようを歴史的に解明することであり、小学校区を核とする近代地域社会の文化構造に着目するとともに、中学校区にも視野を広げ、新制中学校の設置による地域文化構造の変容についても通時的な分析を行うことを目指している。 令和2年度は、これまでに引き続き、山間地域における学校と地域との関係を明らかにする史料群として、長野県飯田市の旧木沢小学校所蔵資料の調査を重点におく予定であったが、コロナ禍のもとで移動が制限され、計画通りの調査ができなかった。だが現地調査を1回実施、山間地域の子どもに市街地を体験させる目的で実施された遠足や社会見学に関する史料データなどを収集し、分析の手がかりをつくった。また、飯田東中学校所蔵資料調査を実施し、新制中学校設立期の資料を閲覧した。ほか、飯田市立図書館にて関連文献の閲覧・収集を進めた。 上記のように移動がままならない中、以前の調査で収集した史料データの解読に重点を置くこととした。市街地における学校と地域のありようを検討すべく、旧飯田小学校(現追手町小学校)所蔵資料のうち、大正期の職員会記録を中心にした研究会をグループで定期的に実施した。とくに1915(大正4)年度の職員会記録および関連史料より、大正天皇の即位奉祝記念事業について、学校が地域行事において中心的な役割を果たしたことが明らかとなり、その一端を多和田真理子「大正天皇即位奉祝事業における地域と学校―長野県下伊那郡飯田小学校の事例―」に示した。 学校資料の保存・活用についても、木沢小学校所蔵史料調査および木沢地区で開催した研究会での成果をもとに、報告「学校資料の調査・保存・活用について―研究者としての関わりを考える―」を行った。また、作成済みの現状記録をもとに、資料活用に向けた目録の作成についても検討する機会をもった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究において新たに着手した旧木沢小学校所蔵資料調査については、当初の想定以上に大きな資料群であったため、全体の把握に時間がかかっている。そのうえコロナ禍により移動が制限され、現地調査や関連する文献調査に遅れが生じている。当初の計画では現地での研究報告会を行うほか、公開研究会を複数回開催して議論の深化をはかる予定であったが、上記の理由により実施方法・内容ともに方針を確立できず、計画の大幅な変更を余儀なくされた。 一方、これまでに収集した歴史資料の読解分析作業においては、初年度より取り組んできた5つのテーマ((1)学校日誌の読解・分析、(2)学校教員、(3)運動会、学校行事、(4)学校経営と地域の状況、(5)地域有力者と学校)のうち、とくに学校行事に関連して新たな知見を得ることができた。大正天皇の即位行事に関する地域と学校の動きを史料からつぶさに把握することができたほか、子どもの発達にそくした学校行事が、地域の実情に合わせて計画実施された様子を見ることができた。 また、これまでに調査時の状態にそくして作成してきた現状記録(仮目録)のあり方を再検討し、史料の分類や関連について検討を進めたことで、史料の保存・活用、データベース化に向けての議論を深めることができた。ただし、史料読解を進める中で、史料に記載されている内容の扱い、とくにプライバシー情報への配慮という課題があらためて浮かび上がっており、史料の活用についてはより慎重な議論が必要との認識を持つに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
地域社会と学校とが織りなす地域=文化構造を明らかにするとともに、市街地・郊外・山間部を比較検討するという本研究の主目的に向けて研究を推進するためには、旧木沢小学校所蔵資料調査に重点的に取り組むことが必須である。しかしコロナ禍の収束について見通しが不明瞭であり、現地調査を実施できない可能性も考慮する必要がある。そのため、最終年度となる来年度においては、調査済の現状記録や撮影データを用いて、以下の点からの検討を継続する。 (1)資料の読解:とくに大正初期の職員会記録を研究グループ内で読み込みながら、これまで継続してきた各自の関心テーマにそった検討との関連付けを試みる。 (2)仮目録データの整理:これまでに実施した現状記録のデータを整理するとともに、研究者だけでなく市民が活用しやすい資料目録の作成に向けて議論を継続する。 (3)成果のとりまとめ:これまでに行ってきた資料調査の成果として、調査の全体像を明らかにするとともに、重要史料の活字化および解説をとりまとめ、冊子を作成する。
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