2018 Fiscal Year Annual Research Report
Mobility in Higher Education and Changes in Cost Sharing: Theory and Evidence
Project/Area Number |
17H02678
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
松塚 ゆかり 一橋大学, 森有礼高等教育国際流動化機構, 教授 (80432061)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水田 健輔 大正大学, 地域創生学部, 教授 (30443097)
佐藤 由利子 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (50323829)
米澤 彰純 東北大学, 国際戦略室, 教授 (70251428)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | モビリティー / 高等教育財政 / 留学 / 高度人材移動 / 教育経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
高度人材の移動と教育費負担構造の変容を明らかにするために、課題中心的観点から理論、定量、定性研究を組み合わせて以下の成果を得た。 1.理論研究: 「人的資本論」「自己選択仮説」「移民論」「頭脳流出/循環説」等を基に定量分析モデルを立て実証へとつなげた。世界全体の分析では高技能者の「循環」が示唆されたが、国家間分析では短中期的不均衡が認められ、理論経済学者マーセル・ジェラルドらが指摘する教育費負担調整の必要を裏付ける結果となった。これを受け平成30年3月にベルギーでジェラルド氏と協議の上、学振の「外国人研究者招へい事業」に応募して平成31年度内に氏を日本に招聘する準備を整えた。共同研究を進め諸理論を精査し、不均衡を是正し得る財政制度の具体的提案を作成する段階に入った。 2.定量研究: 学生の移動規定要因を分析するためにマクロデータを統合・構築したDHEM(Database for Higher Education Mobility)を更新するとともに、「移民論」「留学論」「財政学」を専門とする研究分担者が「重力モデル」「プッシュ・プル理論」等を基に実証分析を進展させた。同時にミクロレベルで高学位取得者の移動を追跡する履歴DBの構築を進め、変数を定義・加工し、分析モデルを作成した。その結果を欧州の留学者を対象に同様のDBを作成・分析した研究協力者と共有して共同研究を進める体制を整えた。 3.定性研究: 欧州ではフランスの大学長会議、OECD本部、ロレーヌ大学等、北米では、国際教育研究所、合衆国総務省教育文化局、全米科学財団、コロンビア大学等を訪問し、留学生及び高度人材獲得政策、学生移動に資する教育・学習体系、移動人材の教育費負担、財政支援について聞き取り調査を行い、研究機関では共同研究協議を行った。
上記研究成果の公開状況は以下の進捗状況と研究発表の欄に記述する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究全体の骨子は、学生や高度人材は「何処へ何故移動するのか、その費用は何処の誰が負担するのか、そしてそれは何故なのか」を検証し、移動とそのコスト負担を繋ぐ論理及び実証的根拠を明らかにした上で、モビリティーに対応する教育費負担制度を考案することである。 「何処へ何故移動するのか」については人的資本論、移民論、自己選択仮説等を援用し上述のDHEMの分析によって、学生の移動実態と年次変化を明らかにした上で、移動規定要因を経済力、労働需要、教育費用・収益率、所得格差、主要言語と距離、カリキュラム体系に求めるなどして研究チームが分析。結果は国際学会や専門誌で公開するとともに、国際学術誌に投稿中である。 「何処の、誰が費用を負担するのか」を検証することは平成30年と31年度の主要課題であり、移動する高学位取得者のミクロ履歴データ分析が軸となる。このDBについては、米国での博士号取得者を対象に(1) 学位修了情報と(2) 学位修了者の経歴及び就学資金源等の情報を収集・統合の上、変数定義の作成、変数の加工、分析モデルの構築に成功している。 「なぜ費用を負担するのか」の解明には移動とそのコスト負担とをつなぐ論理的・実証的検証が伴う。理論の面では上述のジェラルド博士との共同研究体制を整え、本研究の最終課題であるモビリティーに対応する教育費負担制度の検討に入った。理論的検証を支える政府及び教育機関調査は、欧州では予定通り遂行されたが、当初3月に予定していた北米調査については、合わせて参加を予定していた比較国際教育学会(CIES)が4月開催となったため、平成30年度予算の一部を繰り越し4月に行った。定性調査において若干の遅れが生じたものの、この間理論と定量研究を加速させ、また、研究分担・協力者間で研究蓄積を共有することで遅れは取り戻すことができている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題における今後は、理論研究、定量研究、定性研究を包括的に分析し、その結果をベースに国際共同研究を加速させて、高等教育をめぐるモビリティーと教育費負担構造について地域を越えた分析と考察を展開してその成果を共有、発表することで推進していく。具体的には以下となる。 1.理論研究、定量研究、定性研究の包括的分析と考察 機関調査に基づく定性的分析を終わらせ、上記ジェラルド博士との理論研究を具体化し、定量研究面ではミクロ履歴データの試行分析を行う。その上で、全調査・研究結果を包括的に分析し、モビリティーとその規定要因、費用負担構造、財政制度の相互関連性を総合的に考察して結果をまとめるとともに、地域、学術分野、流動パターン、流動の規定要因等の枠組みを設定し、研究者間で分担して詳細分析の上、枠組みに沿った研究成果をあげることを目指す。 2.国際共同研究、成果の共有、発表 上記工程と並行して海外で先行あるいは共通する研究を進めるルーヴァン・カソリック大学、コロンビア大学、復旦大学、北京大学等の研究協力者との共同研究を加速させ、国及び地域単位で教育費負担設計のためのベンチマーキングを行う。その成果を、欧州及び中国での国際学会で発表する計画だが、渡航が困難な場合は、オンライン媒体で研究結果を共有・精錬させつつ学術誌に投稿し、最終的には書籍にまとめて出版する。
|
Research Products
(29 results)