2018 Fiscal Year Annual Research Report
文化的多様性を前提とし活かした教科教材の開発:移民受入れ先進国との比較を通して
Project/Area Number |
17H02699
|
Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
杉江 淑子 滋賀大学, 教育学部, 教授 (30172828)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 晶子 東海大学, 教養学部, 准教授 (00645179)
児玉 奈々 滋賀大学, 国際センター, 教授 (10389603)
南浦 涼介 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (60598754)
岸本 実 滋賀大学, 教職大学院, 教授 (80249705)
川口 広美 (前田) 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (80710839)
神 直人 滋賀大学, 教育学部, 教授 (90206368)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 教科教育学 / 文化的多様性 / 外国人児童生徒 / 移民受入れ国 / 教科教材開発 / 音楽教育 / 算数教育 / 難民への教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の学校で学ぶ外国人児童生徒の教科学習においては、日本人・外国人双方の子どもの自尊感情と他尊感情を育み、相互理解を醸成しつつ学力の向上を図ることが重要である。本研究は、対象教科として「音楽」「社会科」「算数/数学」の3教科をとりあげ、教科内容を多文化的な視点から捉え直すとともに、子どもの文化的背景を生かした教材と実践プランの開発を行うことを目的としている。具体的には、(1)移民受入れ先進国の教育政策や実践事例の収集・分析、(2)日本の教材および実践事例の分析と諸外国との比較、(3)教材及び実践プランの開発、を行うこととしている。 研究2年目の平成30年度は、(1)に関しては、カナダ・ブリティッシュコロンビア州への現地調査により、文化的多様性を前提とし活かした教科学習を実現させるための制度のあり方の調査を進めた。また、アメリカ・サンフランシスコ市立小学校勤務の日本人教員から、児童文学教材を通しての移民理解教育の取組についての報告を得た。さらに、ドイツにおける難民の子どもを対象とした音楽教育の試みやそのための教材等の開発についての情報を収集した。(2)に関しては、日本の小学校・中学校音楽科教科書と指導書の分析(教材の出自、具体的な解説の内容、使用言語等)、小学校の算数/数学教材や実践事例における使用言語と概念の関係などの分析・考察が継続して行われた。(3)に関しては、文化的・言語的多様性を前提とした学級・教室における教科教材・実践プランの開発に際して、教員が言葉の難易度への感性と教科の本質への感性の両方を磨く必要があること、また複数の言語をもつという力への理解を深めることの重要性が指摘された。 これらをふまえ、平成31年度は、(1)及び(2)についての調査研究を継続するとともに、(3)の教材・実践プランの開発に向けて具体的に研究を進める予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書に記載した平成30年度の研究実施計画を以下のとおり遂行した。 1.移民受入れ先進国の教育政策の比較整理と教科学習に関する資料の収集分析に関しては、7月に、アメリカ・サンフランシスコ市立小学校勤務の日本人教員から、「児童文学教材を通しての移民理解教育の取組」についての報告を得た。また、平成29年度末のアメリカ・フロリダの現地調査にもとづき、「サウス・フロリダ大学でのELL生徒に対する教科指導」及び現地中学校訪問の報告が行なわれた。平成30年度末には、カナダ・ブリティッシュコロンビア州への訪問調査により、文化的多様性を前提とし活かした教科学習を実現させるための制度・環境のあり方について事例調査が進められた。独・仏・英については現地調査が実施できなかったが、ドイツにおける難民の子どもを対象とした音楽教育の試みや教材等の開発、フランスとイギリスの移民への教育政策の展開について資料を収集することにより調査研究が進められた。 2.日本の義務教育段階における教科書・副教材及び授業実践事例の分析・考察については、算数/数学、音楽の教科書等の分析・考察を継続した。また、社会科とのつながりの大きい道徳の指導における実践事例が報告された。 3.計3回の合同研究会(第1回:7月オンライン会議、第2回:2019年3月9日、第3回:2019年3月17日)を開催し、それぞれの進捗状況と調査内容についての報告及び意見交換を行った。 4.平成30年度の計画の中では、「音楽」「社会科」「算数/数学」の教科学習に関して教科書や指導事例についての分析・考察に時間を要し、外国人児童生徒を直接の調査対象とした教科学習に関する調査に着手できなかった。それにより、これら教科の教材及び実践プランの開発に向けての進度が遅れているので、令和元年度の計画の中で着実に進めていきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.移民受入れ先進国の教育政策の比較整理と教科学習に関する資料の分析については、①平成29・30年度に実施した現地調査(アメリカ、カナダ)の整理と分析を行う。②移民受入れ先進国の教育政策および多文化教育に関わる資料・文献の収集・整理・比較検討作業を継続する。③移民受入れ先進国への現地訪問調査を継続する。平成29・30年度の現地調査の成果を踏まえ、外国人の子どもに対する教育政策の理念・方針、具体的な施策、及び「音楽」「社会科」「算数/数学」の教科の学習指導に関わって、移民第1世代の子どもと第2世代以上の子どもへの対応の共通点と相違点、言語学習と教科学習との関係づけの方法、子どもの学力と意欲づけ、問題が生じた時の対応等について、具体的に資料収集と聞き取り調査等を実施する。 2.日本の義務教育段階における教科書・副教材及び授業実践事例の分析と考察については、①小・中学校における副教材及び授業実践事例の収集・整理・考察を継続する。②小・中学校における授業観察及び教師への聞き取り調査・分析を継続する。③外国人児童生徒を対象に、「音楽」「社会科」「算数/数学」の教科学習に関して、各単元、題材についての興味・関心と理解の程度、使用教材、指導方法に対する親しみやすさの程度等を中心に調査を実施する。 3.文化的多様性を活かした教科学習教材及び実践プランとして、小・中学校「音楽」「社会科」「算数/数学」の教材開発と授業実践プランを開発し、試行・評価する。 4.進捗状況の確認、報告と意見交換のための研究会を年間4回程度開催する他、カンファレンスを開催し、研究成果を広く公表して意見を得る機会を設ける。また、国内外の関連学会での成果発表及び学術誌への投稿により成果を公表するとともに、研究成果を報告書としてまとめる。
|
Research Products
(5 results)