2018 Fiscal Year Annual Research Report
言語的マイノリティー児童の母語を基盤とした幼児期からの評価と特別支援の試み
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17H02718
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Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
権藤 桂子 共立女子大学, 家政学部, 教授 (90299967)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塘 利枝子 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (00300335)
松井 智子 東京学芸大学, 国際教育センター, 教授 (20296792)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 言語的マイノリティー児童 / ダイナミック・アセスメント / 母語 / 在日ブラジル人児童 / 発達支援 / 多言語多文化環境 / バイリンガル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度からの継続として在日ブラジル人児童の集住地区の保育所において、①保育所での言語環境についてのフィールド調査および家庭の言語についての保育者から聞き取り調査、②標準テストの実施(日本語語い理解テストとポルトガル語図版を用いた日本語語い表出テスト、ポルトガル語版語い理解、表出テスト、非言語的知能テスト)を実施した。その結果、母語であるポルトガル語の言語環境が優位であり、その影響が語い習得にも影響しポルトガル語優位の状況が見られた。しかし、知能レベルに比べて、両言語とも語い習得が遅れていることが明らかになった。今後は、保育所や家庭での言語入力の質を詳細に調査する必要性について示唆された。 本年度、新たに、③発達の遅れが見られた2名の幼児に対してのダイナミック・アセスメントの試行、④絵本の読み聞かせ後の2言語による再話課題を実施した。語い獲得についてのダイナミック・アセスメントでは、test-teach-retestによって対象児らの潜在的な語い獲得能力を確認することができたが、一般的な評価方法として適用できる手がかりが見出せたとは言えない。絵本の再話課題については、日本語のみの読み聞かせと母語と日本語の2言語での読み聞かせの比較を試みた。再話については、母語による読み聞かせが日本語の再話に肯定的な影響を及ぼしている傾向が見られたが、対象児が少なく、明確な結果は出ていない。再話課題の提示方法などについて今後の改良点を見出すことができたため、次年度もデータ収集を継続し、言語テスト等の結果と再話課題の結果との関連性について解析ができるようデータの蓄積のための努力を行う。 また、内外の学会に参加し情報収集するとともに、日本発達心理学会においてラウンドテーブル「多文化・多言語環境と発達障害」を開催し研究成果の一部を公表するとともに、研究者や教育者のネットワーク形成を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由 本年度予定していた対象児数は確保できたが、昨年度の遅れの補完までには至らなかった。 絵本の再話のデータの解析は日本語については順調にすすんでいるが、ポルトガル語の再話と母子の遊び場面のポルトガル語のデータ書き起こしなどを行う人材確保が難しく、予定よりデータ解析が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進のため、以下の方策を行う。 ①ポルトガル語話者である分担研究者を研究組織に招き、ポルトガル語のデータ収集および解析の推進を行う。②絵本の再話の解析を質的に進めるとともに、量的解析ができるよう次年度も、新たな対象児を募りデータの蓄積に努める。③5歳時点で研究協力をした対象児について、1年後の6歳時点での言語評価や絵本の再話を試み、1年間での発達のデータを蓄積し、発達に与えた影響について環境要因や認知テストの結果から考察する。 ④保育の中で母語を基盤とした日本語習得プログラムの開発を試みる。特に、絵本の有効活用の方法について、2言語併用の教材開発やナラティブの能力を促進するための絵本教材作成などの構想に繋がる研究成果を目指す。④内外の学会等での情報収集や論文による成果公表を行う。
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Research Products
(5 results)