2017 Fiscal Year Annual Research Report
Mathematical models of large-amplitude and nonlinear ocean waves
Project/Area Number |
17H02856
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
村重 淳 茨城大学, 理学部, 教授 (40302749)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 武 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (20273758)
井口 達雄 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (20294879)
柿沼 太郎 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (70371755)
丸野 健一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80380674)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非線形波動 / 応用数学 / 流体力学 / 数理モデル / 数値解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,海洋における大振幅波動の本質(非線形性と分散性)をとらえた数学モデルを導出し,その数理解析を行うことである.初年度は以下の三つの研究テーマについて実施計画を立て,3月末に鹿児島大学で行った報告会で進捗状況を確認した.研究成果は,発表論文11件(査読有9件,国際共著6件),学会発表26件(招待講演6件,国際講演16件)で公表されている.研究内容を以下に簡単にまとめる. 1. 表面波(主に浅水波):(1)浅水波に対する Isobe-Kakinuma モデルの数学的正当性を検討し,既存のモデルに対する優位性を理論的・数値的に示した(井口,柿沼).(2)浅水波近似と等角写像を組み合わせた新しいモデルを提案し,大振幅水波のダイナミックな波形をモデル化できることを示した(村重).(3)時間的・空間的に局在する大振幅波動(rogue wave)の解をもつ方程式のクラスについて,可積分系理論の枠組みで考察した(太田).(3)孤立波の近似解であるソリトン解の安定性について,関数解析に基づいたアプローチを用いて数学的に厳密な考察を展開した(水町). 2. 内部波:海中の密度成層を模擬した一様成層流体中を伝播する内部波について研究を行った.特に,傾斜した円柱の振動により励起される内部重力波について理論的・実験的・数値的研究を行った.研究成果をまとめた論文は流体力学のトップジャーナルに掲載された(片岡). 3. 大振幅・非線形波動の数値計算:(1)急激な波形の大変形に対応できる数値計算法として自己適合移動格子法を開発し,計算結果の精度を理論的・数値的に検証した(丸野).(2)シアー流上の大振幅進行波を,ホドグラフ法を用いた新しい定式化のもとで数値的に解析する方法を考案した(村重).(3) Navier-Stokes方程式の直接数値計算による砕波のシミュレーション法を開発した(日野).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3月末に鹿児島大学で行った報告会では,研究代表者・研究分担者・連携研究者(7名,欠席者1名)と非線形波動の専門家(2名)が集まり,現在までの進捗状況を確認し,今後の課題を整理した.初年度の研究実施計画は,以下の3点について研究を進めることと,今年度の開催する国際研究集会の準備であった.国際研究集会については,平成30年5月末に京都大学数理解析研究所で海外から8名の専門家を招いて開催することが決定している.研究については以下に示すように予定通り進んでいて,その成果は論文や学会発表により公開されている(発表論文11件(査読有9件,国際共著6件),学会発表26件(招待講演6件,国際講演16件))ので「おおむね順調に進展している」と判断した. 1. 浅水波:(1)大振幅浅水波に対する Isobe-Kakinuma モデルの数学的正当性と数値計算により,従来のモデルより優れていることを明らかにした.(2)複素解析の手法(等角写像など)を用いて大振幅・非線形運動をモデル化する方法を示した. 2. 内部波:一様成層流体中の内部波の3次元運動で観察される非線形挙動について,理論的・実験的・数値的に明らかにした. 3. 大振幅・非線形波動の数値計算:(1)急激に時間変化する表面波を数値的に追跡するために最適な波形の離散化手法として自己適合移動格子法を開発し,その適用範囲と精度を詳しく調べた.(2)2層流の界面で発生する内部波と,渦度一定のシアー流上の表面波で観察される大振幅・非線形運動に対する数値計算法として,ホドグラフ法が有効であることを示した.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終的な目標は,「振幅の大きな表面波(特に浅水波)と内部波の解析に適した新しい近似法の提案」である.初年度は数理モデルの導出と数値計算法の開発を行い,予定通りの成果が得られた.2年目以降は,それらを用いた現象の体系的な解析,特に海洋波で観察される砕波のような大振幅・非線形現象の解析を行う.そのために必要なことは,以下の通りである. 1. 表面波(主に浅水波):初年度の検討した数理モデル(Isobe-Kakinuma モデル,複素解析の手法を用いた大振幅浅水波モデルなど)の有効性を,理論的・数値的に調べる.特に,波形・速度・エネルギーなどを求めるだけではなく,現象の安定性解析も行う.また,これらのモデルの解を得るためには数値計算が必要なので,計算コストの評価も行う. 2. 内部波:初年度は一様成層流体中で励起される内部波を考えたが,2年目以降は2層流の界面で発生する内部波についても検討する. 3. 数値計算法:初年度は振幅の大きな非線形波動のダイナミックな時間変化を追跡するための空間的離散化手法,変数変換を開発した.2年目以降は,これら手法の誤差解析,時間的離散化手法,数値的安定性解析を行う. また,研究計画では,2年目と4年目の国際研究集会を行うことを予定している.2年目の研究集会は平成30年5月末に京都大学数理解析研究所で行うことがすでに決定している.4年目の研究集会については,2年目から準備を行う.
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Research Products
(41 results)