2018 Fiscal Year Annual Research Report
Unified theory of electromagnetic and optical cross correlation phenomena in solids
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17H02929
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
多々良 源 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, チームリーダー (10271529)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 浩 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (10234709)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スピントロニクス / スピン電荷変換 / スピン流 / 有効ゲージ場 |
Outline of Annual Research Achievements |
反強磁性絶縁体中のスピン流透過現象の線形応答理論を提示した。スピン流透過と従来見なされている現象を電気的に誘起されたスピン蓄積の伝搬と見ることでスピン流に伴う曖昧性なく現象を記述する定式化を行った。スピン流伝導度は強磁性帯磁率で与えられ、これをマグノン表示により計算し、実験事実と整合する結果を得た。従来のスピン流透過描像ではスピン流の定義に伴う原理的不定性が避けられないという致命的欠陥があったが、我々の帯磁率理論ではスピン流透過度は非局所強磁性帯磁率で与えられ曖昧性のない記述が可能である。この考えに基づき反強磁性絶縁体中のスピン流透過率を強磁性帯磁率をマグノン表示に基づき微視的手法により計算した。その結果、スピン流伝搬はマグノンペアによって引き起こされること、透過率は反強磁性転移温度付近でなだらかなピークを持つこと、伝搬の拡散長(減衰長)はマグノンの拡散長より一般的には長いことなどが明らかになった。これはペアの伝搬の長距離性によるものである。その他、磁気スキルミオンや更に高次元のホピオン構造のダイナミクスとダンピング効果を有効ゲージ場観点から数値解析により調べ、ホール効果の制御などの指針を示した。また、伝導電子の拡散領域では有効ゲージ場が空間的に離れた場所をつなぐ形で非局所的に現れることを示し、非局所有効ゲージ場の概念を提示した。非局所有効ゲージ場の考え方に基づけば多層ナノ構造で実験が行われるスピン流の電気的測定の実験を直接理解することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの期間の研究により、スピン輸送現象における有効ゲージ場の記述を様々な状況において適用し現象を説明及び予言することに成功した。今年度の成果はこの考え方をスピン流透過の問題に適用した試みで、有効ゲージ場を同定することで低エネルギー励起を記述する考え方を一見ゲージ理論に見えない現象にも応用した新しい方向性である。ゲージ場に限らずより広い現象の統一的視点からの記述に研究が進んでいることは当初の想定を超えた成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実績に基づき、反強磁性マグノンの拡散のメカニズムの同定とマグノン放射の理論の構築を行う。
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