2019 Fiscal Year Annual Research Report
極域中間圏冬期エコーの生成解明を通して探る大気素過程の研究
Project/Area Number |
17H02969
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
堤 雅基 国立極地研究所, 研究教育系, 教授 (80280535)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 耕司 国立極地研究所, 研究教育系, 特任准教授 (60455475)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 超高層大気物理学 / 極域中間圏 / 南極 / 大気レーダー / 大気波動 / 大気乱流 |
Outline of Annual Research Achievements |
大気レーダーのエコーは、時空間4次元に分布する散乱体全体からの寄与として受信される。その数式化は長らく困難であったが、分担者が中心となって数理的手法を開発してレーダーエコーの観測方程式の解の導出に世界で初めて成功した。その成果は国際学術誌に掲載され、国際的に高い評価を受けている。さらに、本技術を南極のPANSYレーダーで観測された対流圏・成層圏エコーに応用して乱流強度推定を行い、その結果は国際学術誌にされた。 夜間に大気電離度低下のために困難となるPANSYレーダー中間圏乱流観測を補強するため、昼夜関係なく観測可能な流星エコー観測を併用して行う全5系統からなる付加受信装置を立ち上げ、実運用に向けた長期試験を実施した。初期解析からは、時間高度分解能で30分・2km程度の良好な風速観測を行えることが示された。今後、流星データから得られる両極性拡散係数を利用して、大気温度の推定も期待できる。 MFレーダーの全面的な整備を、研究代表者が昭和基地越冬中に実施した。万が一の故障時にも対応できるよう、制御PCや各送受信系統の予備装置を更新および試験し、またアンテナ系の老朽部品の交換を行い、不具合箇所のない状態とした。整備されたレーダーにより、2つの偏波の電波を用いた連続観測を実施し、中間圏から下部熱圏域の風速推定と電子密度推定の元となるデータを取得した。また、電波法の更新に対応した送信最終段の改修に向け、送信出力の計測など実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レーダー大気エコーの観測方程式の解の導出や、それを実データに応用した研究は、国外の研究者からも手法についての問い合わせがあるなど、目覚しい成果である。また、PANSYレーダーの中間圏乱流散乱観測の副産物としての流星エコー観測の開発は、レーダーによる風速観測の時間高度領域の拡大に大きく寄与し、また乱流散乱観測からは得られない大気温度に関する情報取得も期待され、その初期成果は2020年度中に論文化を見込んでいる。さらに、MFレーダーの再整備により、2019年度はMFレーダー稼働率99%以上の連続観測が実現し、データ品質が向上した。 一方で、研究代表者自らが南極昭和基地での越冬隊長を拝命したため、外国の研究者を訪問しての研究推進などは制限を受けた。年度の途中で研究中断の期間を設けて南極地域観測隊の運営に注力し、2020年度に研究期間を延長することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画は、4つの項目(1. 大気乱流強度の推定、2. 乱流生成源候補の大気重力波活動の推定、3. 下部中間圏の電子密度推定、4. 1-3の結果の普遍性検討のための国外研究者との研究推進)により成る。 1の大型大気レーダーによる乱流観測手法は、新たな論文化の作業も進んでおり、また外国のレーダーにも応用が見込まれ、更なる発展が期待できる。2から4についても継続して推定手法の開発と解析を行う。ただし、COVID19の影響は懸念される。2から4のうち、MFレーダーの送信最終段の調整・更新と国外研究者との研究推進は、豪や独の関係者先に赴いて検討を進めることを想定している。訪問予定先の状況にも影響されるため、不透明な部分は残る。また年度内は国際学会開催の見通しも暗い。当面は電子メールやTV会議などを使った相談・議論で、できるだけの研究推進を図る。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Direct comparison between magnetospheric plasma waves and polar mesosphere winter echoes in both hemispheres2019
Author(s)
Tanaka, Y.-M, T. Nishiyama, A. Kadokura, M. Ozaki, K. Shiokawa, S. Oyama, M. Nose, T. Nagatsuma, M. Tsutsumi, K. Nishimura, K. Sato, Y. Miyoshi, Y. Kasahara, A. Kumamoto, F. Tsuchiya, M. Hikishima, S. Matsuda, A. Matsuoka, M. Shinohara, A. Fujimoto, M. Teramoto, R. Nomura, R. Kataoka, A. Sessai Yukimatu
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Journal Title
J. Geophys. Res.
Volume: 124
Pages: 9626 - 9639
DOI
Peer Reviewed
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