2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of high-precision geobarometry for spinel lherzolite xenoliths: Applications to resolving mechanism of the lithosphere thinning
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17H02982
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小澤 一仁 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (90160853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯塚 毅 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (70614569)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リソスフェア / アセノスフェア / マントル捕獲岩 / 地質温度圧力計 / スピネルカンラン岩 / モロッコ / 一ノ目潟 / コロラド高原 |
Outline of Annual Research Achievements |
マントルリソスフェアを構成する物質の断片であるカンラン岩ゼノリス(以下,ゼノリス)は,地球の熱史に大きな影響を及ぼす大陸リソスフェアの厚さと熱流量の変動を知る上で貴重な物質情報を提供する.本研究の目的は,マントルの高精度圧力推定が困難であった 60km 以浅で安定なスピネルかんらん岩ゼノリスの由来深度を±数 km 以下の精度で決定する方法を開発し,ゼノリスが記録している温度履歴とあわせて,大陸リソスフェアの温度の時間・空間変化を推定し大陸リソスフェアの薄化機構を解明することである.初年度に引き続き,30年度には世界の大陸・島弧地域から選択した三地域の研究を進めた.モロッコについては,29年度に集中的に野外調査・サンプル採集を行ったBou-Ibalrhateneマール(BI)とTafraouteマール(TF)試料の分析解析を進めた.Middle Atlas山脈の中央部と縁辺部に位置しているこれら二つのマールのゼノリスの由来温度圧力を推定し比較した結果,TFに比べてBIのゼノリスが噴火直前により高温で急な地温勾配にあったマントルに由来したことがわかった.この結果によって,山脈の縁辺部よりも中央部直下により浅所まで高温のアセノスフェアが上昇し,BIの最深部のサンプルが地球物理学的に観測されているリソスフェア-アセノスフェア境界(LAB)直上に位置していることがわかった.一ノ目潟については,昨年度の段階で推定できた由来深度の推定および温度構造の時間変化に加えて岩石変形組織の変動も推定し,レオロジー境界としてのLABが含水マントルの融点によって支配されていることを明らかにした.コロラド高原については,最深部由来のゼノリスのかんらん石にCrとAlに富む微少包有物を含むことを見出し,このゼノリスがアセノスフェア由来であり,LABはその直上に位置する可能性を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象としたモロッコ,一ノ目潟,コロラド高原のマントルカンラン岩ゼノリスに関するデータの蓄積とその解析を順調に進め,初年度の段階で推定できているゼノリスの由来深度に基づいて,研究目的であるリソスフェアの薄化機構の解明にむけて理解が深まっている.
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Strategy for Future Research Activity |
この研究で最も重要なゼノリス由来深度の高精度決定については,これまでも精度を高める努力を続けてきたが,精度だけでなく確度の向上が極めて重要である.確度向上のためには,鉱物の化学組成に基づく地質温度圧力計の適用だけでは不十分であるために,ゼノリス試料やそれぞれの地域から得られる他の情報を用いて温度圧力の推定絶対値を検証する必要がある.ゼノリス試料そのものから得られるものとしては,マグマによるゼノリスの輸送時間スケールの推定と化学組成にあまり依存せず温度・圧力に敏感である相関係がある.前者は速い反応の進行度を記録している化学組成不均質を用いる.例えば,温度変化によって形成される,かんらん石中のMg-Fe-Ca拡散プロファイルである.後者では,ゼノリス中に記録された反応過程を示す組織から温度圧力とその変化を読み取る.例えば,ガラスの存在が示唆する溶融相転移,水や二酸化炭素に富む流体の存在を示唆する流体包有物や粒間の微細組織,細粒鉱物集合体が示唆する固体反応組織,鉱物中の包有物や離溶組織が示唆する鉱物の安定関係である.これらは多くの場合,温度・圧力変化を情報として含むため,推定した由来温度圧力が最終条件であることを考慮して適用する必要がある.対象地域から得られる情報としては,当該地域の地球物理観測によって推定される地殻とマントルの構造である.第一は,地殻とマントルの境界(モホ面)深度,第二は地球物理学観測から推定されているリソスフェアの厚さ,第三は,震源深度分布の下限である.ゼノリスから推定した温度圧力とこれらの情報の整合性を確認することで推定深度の確度を高めることができる.これを今後の研究推進方策として重点を置く.
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Research Products
(12 results)