2017 Fiscal Year Annual Research Report
The study on the transport mechanism of light-driven inward proton pump and its application to optogenetics
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17H03007
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
井上 圭一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90467001)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ロドプシン / プロトンポンプ / オプトジェネティクス / レーザー分光 / レチナール |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は本研究の主な研究対象である、光駆動内向きH+ポンプ(PoXeR)を中心とした各種ロドプシン分子について、機能解析や分光測定などを行い、その成果を8報の論文と2報の総説、8件の招待講演などで発表した。特にPoXeRの輸送メカニズムについて、低温光誘起フーリエ変換赤外分光を行い、PoXeRのタンパク質分子内でアミノ酸と内部結合水が形成する水素結合ネットワークについての知見を得、Photochem. Photobiol.誌にその成果を報告した。さらにPoXeRに近縁な外向きH+ポンプや外向きNa+ポンプについても主に分光測定によってその輸送メカニズムについて数多くの知見が得られ、それらの結果をJ. Phys. Chem. B誌など注目度の高い雑誌へと報告した。これらの結果について、今後さらにPoXeRの知見と比較することで、微生物型ロドプシンが輸送するイオン種とその方向性が決定づけられるメカニズムについて、より深い理解が達成されると期待される。また全体を俯瞰した総説をBiophy. J.誌やChem. Rev.誌において発表したが、特に後者はインパクトファクターが40以上の最も注目度の高い化学系総説誌であり、本研究で得られた成果を幅広く社会に発信するために極めて重要なものである。 また本年度研究代表者の井上は、PoXeRを含む微生物型ロドプシンのメカニズム研究について日本光生物学協会より第4回奨励賞を受賞した。このことは本研究で行った内向きH+ポンプ型ロドプシンに代表される微生物型ロドプシンのメカニズム研究が、極めて高い注目度と評価を得ていることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は本研究の主な研究対象である、光駆動型内向きH+ポンプ(PoXeR)について機能解析および分光研究を行い、特に低温光誘起フーリエ変換赤外分光計測によって、これまで構造的知見がほとんどなかったPoXeRのタンパク質分子内の水素結合ネットワークについて大きな理解が深まった。またさらにPoXeRの光化学反応ダイナミクスを理解するため、本研究で新たにナノ秒パルスNd3+:YAGレーザーを導入し、大腸菌を用いて精製したPoXeRについてpH指示薬や重水を用いたレーザー過渡吸収分光測定を行ったところ、分子内H+移動について非常に詳細な知見を得ることに成功した。特にpH指示薬存在下の測定では、初めてPoXeR分子からH+が放出および取り込まれる過程をリアルタイムで観測することに成功した。また重水中での測定の結果によって、発色団レチナールから細胞質側へのH+放出過程において、その反応速度に非常に大きな同位体効果があるのに対し、その後に起こるH+取り込み過程にはほとんど同位体効果が見られないことが明らかとなった。この結果は二つのH+移動過程において、その輸送過程に大きなメカニズムの違いがあることを示唆しており、その理由としてPoXeRにおいて特徴的に見られる光反応後半での発色団の熱的な二段階目の異性化がH+取り込み過程の律速過程となっているためであると考えられる。またこれらの成果については現在論文を投稿中である。 この様に研究初年度において、主に分光測定を通じてPoXeRの構造および反応ダイナミクスについて数多くの知見を得ることがすでに達成されており、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらにPoXeR分子についてより詳細な機能解析および分光測定を実施する。特に保存性が高いアミノ酸残基について変異体を作製し、輸送能やフォトサイクルについてどの様に野生型との違いが見られるかを調べることで、各アミノ酸のH+移動に果たす役割を明らかにしていく。また現在PoXeRの近縁には、同じく内向きH+ポンプ型ロドプシンと思われる分子が数多くデータベースに登録されているが、その機能や物性、吸収波長についてはほとんど報告が成されていない。これらについても新たに遺伝子合成を行い、研究を行うことで、各分子におけるPoXeRとの違いや多様性についての知見が得られると期待される一方で、内向きH+ポンプ全体に共通するメカニズムについても明らかにすることを目指す。
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Research Products
(50 results)